リモートワークの大事なところ(と、noteの中の試み)
新型コロナウィルスが猛威を奮っている現状を踏まえ、弊社もご多分に漏れず、2/17より全社的にリモートワークが推奨されており、コーポレートIT担当としては少しオロオロドキドキしています。
そんなオロオロドキドキを尻目に、noteチームはアクセルを踏み込み、こんなお題をバーンと募集し始めました。正直ギョッとしましたが、おかげで有益なナレッジがnoteにどんどん集まっていて勉強になることこの上ありません。
弊社ピースオブケイクでは、普段から必要な人が必要に応じてリモートで仕事することが認められているので、みんなある程度リモート慣れはしています。青森からエンジニアリングを取り仕切るマネージャーがいたり、福岡からカイゼンをぶん回すデザイナーがいたり、また、そうしたひとたちを外苑前のオフィスで普通に対応する社員がいたり。そんな感じなので、バックオフィスが少しオロオロドキドキしている他は、意外なほど普通に会社が回っています。
この記事ではピースオブケイクのシステム構成がどうとかそういう話はしません。ピ社の基本的な構成と考え方は吉田さんというイケてるコーポレートITエンジニアが書かれたこちらに概ね沿っています。
ここではリモートワークを上手くやるために考えるべきポイントの話をしたいと思います。
僕自身のリモートワークに対する考え方
話の方向性をはっきりさせるために、一旦僕のポジションを明確にしておきます。
僕は「ゆるやかなリモートワーク推進派」です。リモート原理主義者ではありません。僕個人としては満員電車での通勤も、時間で場所に縛られるのも嫌いなので、家でできることは極力家でやってしまいたいと常々思っています。
しかし、リモートワークはかなり人を選ぶ働き方であるとも考えています。執務環境を自分で整える必要があるため、ワーカー側にある程度のDIY的な姿勢は必須ですし、コミュニケーションがバーチャルであるがゆえに配慮しなければいけないことも沢山あります。運動する習慣がない場合、本当に動かなくなり健康に悪影響すら及ぼします。つまり誰にでもできる働き方ではない。
それでも、可能な何割かの人が例えば週に2,3回程度家から仕事するだけでも、(特に東京で)50年以上慢性的に混雑している各種交通状況は大幅に改善し、社会全体の生産性は総じて向上するんじゃないかなと思っています。家から離れがたい状況の人へのメリットは言わずもがなです。
そういうわけで僕は「リモートワークできる人はやった方がいいと思う」レベルのゆるやかな推進派です。それを踏まえて話を進めます。
リモートワークで考えなければいけないポイント
コーポレートIT担当としてはセキュリティをガチガチに固めていきたいところですが、いくらセキュリティを固めてもそれだけではリモートワークは破綻します。
リモートワークについては生産性・セキュリティ・コミュニケーション・労務管理の4つのポイントから捉えるべきと考えています。
①:生産性
まずはなんと言っても生産性です。みんな忘れがちですが、リモートワークは福利厚生ではありません。あくまでも生産性向上の施策の一つに過ぎません。企業の生命線である生産性が上がらなければリモートワークを推進する意味はありません。現に米Yahoo!やIBMなど、リモートワークを基本的に禁止する企業だってあります。したがって、まずはリモートワークが生産性に繋がるかを考える必要があります。(そしてその過程で「生産性とは何か」という問いも発生することでしょう...)
②:(設備や仕組み上の)セキュリティ
セキュリティがガバガバな状況でのリモートワークは、会社を破滅に導く一本道です。丸腰のPC(今時あまりありませんが、、)でカフェに飛んでるなんかタダで使えるwifi使って会社のコードいじってたらそれは明らかにダメだろう、みたいな。所定の端末の状態を常に管理・把握するとともに、その端末経由で適切な認証を経て認可を与え、リソースにアクセスさせなければなりません。(それを色々な意味でラディカルに実践するのが、ゼロトラスト・ネットワークです)
それをどう(そしてどこまで)構築していくかを考える必要があります。
③:コミュニケーション
リモートワークはほぼ100%のバーバル・コミュニケーション(言語のみによるコミュニケーション)を強いられるため、コミュニケーションの負荷はグッとあがります。なあなあでコミュニケーションが完結しない難しさがあります。また、リモートワーカーは口を揃えて「孤独」「さみしい」と訴えるので、チームとしてまとまるための働きかけも重要になってきます。それらをどうやったら上手く出来るかがポイントになってきます。
④:労務管理
リモートワークに関連して企業が社会から刺されるのはこれとセキュリティではないでしょうか?また、リモートワークに及び腰の会社が気にするのもここかと思います。とにかく場所で区切れない以上、物理的に管理することは不可能。では、どう適切に管理するかというのが考えるべきポイントです。(え、カメラで監視?脳波をモニタリング??なんで??)
そして、ポイントはそれだけじゃない
上の図をもう一度見てみましょう。
4つのポイントはそれぞれ別個に独立しているものではなく、互いに重なるエリアがあります。エリアに一つずつ番号を振ると以下のようになります。
つまり、リモートワークを考える切り口は4つではなく15パターンあるということです。うげーと思うかもしれませんが、諸々の問題はほぼこの15パターンに収斂していくと思われます。まずは、すでに起こっているor起こりそうな問題をここに当てはめてみるのはどうでしょうか。一見厄介そうな問題も、ラベルという首輪を付ければ意外と飼い慣らしやすいかもしれませんよ。(さすがに15に該当する問題は強大だと思いますが。。)
そして、リモートワークのために本当に大事なこと
上のように問題を切り分けたのち、そこにITを使って対処していくのがコーポレートITエンジニアの仕事です。リモートワークに限らないことですが、2020年代になってようやく、ITを振り回して現実の問題にきめ細やかに対応できる地場が整ってきた感じがあります。これは紛れもなく、小回りの効くSaaSをメインに据えたシステム構成の恩恵です。
しかし、だからこそ強調したいのは「ITはどこまでも道具である」ということ。ITが会社をドライブすることはあれど、会社を先行して引っ張ることはありません。会社を引っ張るのはいつだって、ビジョンです。
リモートワークを成功させるために大事なのは普段からビジョンが組織できちんと共有され、それに基づいて行動する文化があることだと思います。
リモートワークはスタイルであり、文化なんです。自律した大人が明確なビジョンを共有しつつ様々な障害を乗り越えて初めて普通に回るようなものです。誰かに丸投げされた誰かがいきなり旗を振って上手くいくようなものではありません。その成否に至る道は採用段階から始まっています。
リモートワーカーその人に悪意があったら全て意味が無くなるんです。どれだけ制度や仕組みを整えても、機密情報が表示されている画面をスマホでパシャっとやれば一巻の終わりです。セキュリティだけ固めても破綻すると書いた真意はここにあります。結局は人です。自律した大人が集まっているのが大前提です。ここが担保されていない状態で進めるリモートワーク制度は、百害あって一利なしです。
noteの中の試み
さて、かなり主語が大きい話をしてきました。そんなこと言うけどお前んとこちゃんとできてんのかよーという声が聞こえてきそうですが、それについては頑張ってるとしか言えません。労務管理やセキュリティは突っ込んでやろうと思えば無限に手間とお金がかかりますし、そもそも「生産性」だって実はその定義だけで無限に時間がかかるものでしょう。持てるリソースの範囲で、必死に回しているという感じです。
ただ、単に必死に走り回るだけではなく、よりよいリモートワークのために色々模索をしています。
弊社のSlackに「リモート雑談部屋」というのがあるんですが、そこでは主にリモートで働いている人を中心にリモートワークの方法論やtipsを持ち寄ってあーだこーだ言ったり、困っていることをみんなで考察したり、ということをやっています。貯まった知見を元に何かやってみて、観察して、また改善するというユルいながらもそこそこ科学的なアプローチでリモートワークを研究しています。
そこでは本当に色々な話が展開されているのですが、意外と盛り上がるのがコミュニケーション手法や組織論だったりするのが面白いです。やはり、リモートワークも結局は人の営みである以上、組織やコミュニケーションのあり方という、アナログな領域も深く理解しないと成功には至らない、ということなのでしょう。
最後に
上で書いた通り、ピースオブケイクではリモートワークがそれなりに普通に回っています。ここまで読んでくれた方にはこっそり教えるのですが、正直言って解決していない問題もままあります。
そんな状況でも普通に回せているのは、強いビジョンを共有していることはもちろん、自律的で、かつ、環境の改善を自分ごととして考えられる人が多いからだと考えています。みんな好き勝手やっているように見えて、絶対に動物園にはならない。要するに「大人」が多いんですよね。そして組織にも新しく入ってきた人を当然そういう人であると信用する文化がある。さらにそういう人を惹きつける...というように、採用に関していい循環が回っているのを感じます。
長くなりましたが、リモートワークについて思うところ、そしてピ社の取り組みをまとめてみました。参考になる点があれば幸いです。
より長く走るための原資か、娘のおやつ代として使わせていただきます。