就活言語化シリーズ「インターン」
こんにちは、羽田です。元マイナビで今は独立し、学生の声を企業の採用改善に繋げるサービスや社名を出さない合説や学生向けビジコンの企画運営をやっています。立命館大学の客員教授もやっています。なんだかんだ、学生や採用や就活やキャリア周りの仕事を20年やっています。
正体不明な「就活」を言語化していくことに挑戦する就活言語化シリーズ、今回はインターンについて。正式名称はインターンシップ、ですが本記事では「インターン」と記載します。
日本でインターンが流行った残念な理由
そもそもの話をすると、インターンとは欧米で古くから普及してるもので、要は正社員として勤める前の試験雇用みたいな行事です。欧米は日本みたいに新卒学生がよーいどんで就活するわけではないので、学生は色々なインターンに行って企業のオフィスで実際に働いてみて自分の専門性やキャリアの方向性とのマッチングを行い、良いご縁があればそこで正社員として働くわけです。期間は様々ですが、社員と机を並べて実務を行うので数日間なんて事はありません。文字通り、お試し入社という意味合いが強いのです。
日本のインターンは”口実”にすぎない
このインターンという行事が日本に一気に普及したのは2005年前後だったと記憶しています。経団連による就活スケジュールの倫理憲章(要は採用活動の早期化自粛しようぜ!という宣言)が出て、古き良き日本の大企業を中心に学生への採用広報活動が制限される中、「採用広報がダメならインターンの名前借りて学生接点持とうぜ」という言葉遊びみたいな施策が一気に広がり、就職メディア会社もインターンの合説を始めて「インターン」が市民権を得ました。
要はインターンは、企業にとって採用広報活動の隠れ蓑だったわけです。
結果何が起こったかというと、説明会に毛が生えたような名ばかりインターンが横行しました。企業にとってインターンは、採用広報活動でしかなかったからです。
厄介なのは、インターンがキャリア教育の文脈で語り始められた事です。「学生のキャリア支援の一助として開催する」「職業観涵養の為の職場体験」とか言っときながら、実際やってる事は説明会ですからね。「仕事体験ができる」と思って参加した学生は混乱するわけです。
2022年から文科省厚労省経産省がインターンに関するガイドラインを公表し、2026年卒からいよいよ効力を発揮しそうなのでこの辺は少し是正されるかもしれないのでこの辺の動向は少し注視したいところです(この記事は2024年の2月に書いてます)。
一応補足。長期インターンとは
さて、日本のインターンには採用広報の隠れ蓑としての”インターン”と、ベンチャー企業が学生を戦力としてアルバイト雇用する”長期インターン”の2種類に分かれます。今回の記事の主題は前者なので後者については触れません。ただ、後者の長期インターンは企業は採用活動のつもりはないし、学生もその会社に入社しようと思ってないという点で、本記事の「採用用インターン」とは全く異なるものだということだけお伝えいたします。長期インターンについてはまたどこかで。
インターン+早期選考という組み合わせが就活をおかしくした
インターンがただの広報活動だった頃はまだ良かったのですが、そこに早期選考という悪魔の果実が組み合わさりました。
インターンが流行り始めた頃から、大手広告代理店ではインターンからの特別選考ルートが存在し、広告業界志望の学生には「インターン参加が就活における一つの登竜門らしい」という噂がまことしやかに囁かれていたわけです。
しかし、この「インターンからの特別ルート」が大手広告代理店以外にも広がり、「早期選考」として一般化してしまいました。つまり、「インターンやってそのまま早期選考」が、新卒採用の一つのメソッドになってしまったのです。これが学生を混乱させる事になります(後述)。
さて、インターンと早期選考がセットになってしまったのには理由が二つあります。
①旨みがないと集客できない
採用広報としてのインターンが一般化してしまうと、どこもかしこも”インターン”をやり始めます。結果、インターンになかなか集客できないという状態になる企業が増えました。そりゃそうですよね。そこで、インターン参加のメリットを提示する必要が出てきたのです。結果、学生の間で「早期選考で早期内定」という一つの就活攻略方程式ができたのです。
②間が持たない
これもなんだかなぁ、という理由ですが、インターンを3年の夏とかにやっても、来年3月からの選考時期まで間が持たないのです。半年近く空いてしまいますからね。企業からすると、折角インターンに参加してくれたのに、結局選考に繋がらないということになる。それならなんのためにインターンやったんだよ、、という事になり、「せや!早期選考してインターン参加学生を早めに囲い込んだろ!」となったわけです。
「企業や社会は建前と嘘ばっか」の温床に
というわけで、「インターン&早期選考」が日本の就活のスタンダードになった経緯と理由を説明してきましたが、前述の通り、この悪魔の組み合わせが就活生を混乱させています。結果、「就活」が正体不明の得体の知れない行事となり、学生は「社会や企業は嘘や建前で成り立っているのだ」という感情になってしまいます。これは良くない。何が起きているのかを言語化していきましょう。
嘘と本当の採用スケジュールで混乱
インターン&早期選考がスタンダードになっても、いづれとして「就活解禁は3年3月」というスケジュールは高らかに宣言されていました。オフィシャルでは「3年3月」と言われていて、企業の採用サイトにも「早期選考」なんて一言も書かれていません。ところが実際には早期選考が水面下で行われ、3年11月頃には内定をもらう学生が登場してきます。
学生からすると何が本当で何が嘘なのか、自分が知らない隠された事実があるのではないか、と疑心暗鬼になってしまうのです。SNSでたまに登場する陰謀論者みたいな思考になってしまうのもわからないでもないです。
行きたいわけじゃないのに早期内定のためにインターン
早期選考早期内定という現象は、「早めに内定が欲しい」と学生に渇望させることになりました。まあ、そりゃそうですよね。得体が知れない不気味な就活というものからとっとと足を洗ってスッキリしたい、と思うようになるのもわからんでもないです。
で、結果として「内定」の持つニュアンスが学生の間で変わってきているように思います。「内定」とはその会社で働くことを認めてもらう証みたいなもんだと思うのですが、学生にとって内定とは「早くもらって安心するためのチケット」みたいになってるのではないかなと。
個人的には信じられないしどうなんだと思うんですが、「早期内定!」「内定直結!」みたいな売り文句で集客する逆求人イベントを開催する就活会社もあります。学生は、内定欲しさにそのイベントに参加するのです。その会社で働きたいから、ではなく早く内定が欲しい、というモチベーション。確かに学生のインサイトを捉えているのだとは思いますが、そもそもの就活やキャリアという考え方をもうちょっと大切にした企画設計にしてほしいと僕は思います(主催企業に対して)。
自分を内省する期間がほとんどない
25卒から、大手就活メディアのインターンサイトが3年4月1日にオープンするようになりました。
インターンの期間が早まること自体は僕はいいと思っているのですが、問題は"早期選考とセットになったインターン"が早まっていることです。つまり学生は大学3年になった瞬間からインターンと早期選考が始まり、これまで触れてきたような「内定獲得ゲーム」に走り始めるのです。
就活関係なく、日常生活の中で自分を内省化したり、企業やビジネスに触れている学生なんてほとんどいません。本来はある程度時間をかけて熟成させないと自分と企業のマッチングなんてできないはずなのですが、その期間がほとんどないわけです。
というわけで、インターンにまつわるあれこれを書いていきました。
繰り返しますが、インターン自体は悪いことではないのですが、建前としての就活スケジュールと早期選考が組み合わさったことで、悲劇的な状況になってしまっています。
26卒から実行性を帯びてくると言われているインターンの改正がちゃんと実行されればいいのですが・・・。
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