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那須川天心と武尊の試合の何が凄いかをサラリーマンと企業の関係に当てはめて解説しますので全会社員は読んでください

格闘技ファンが熱望していた那須川天心と武尊の試合が遂に実現します。格闘メディアだけでなく、一般的なメディアでも取り上げられていたので「あーなんかそんなニュース見たねぇ」という方もいると思います。

2022年6月についに実現する、2人の戦い

今回は、そんなぼんやり格闘層に向けて、この試合にどんな意味があるのかを解説したいと思います。とはいえ、格闘技だけの話をしても誰も読んでくれないと思うので、多くの人にとって関係のある企業と個人の関係性になぞらえて解説します。会社が嫌いな全会社員は10万回位読んでください。

<追記>続編です!


超あっさり説明する基礎知識

あんま詳しく説明しませんが、最低限の基礎知識だけ解説します。
武尊はK-1、那須川天心はRISE、というキックボクシング団体に所属しています。キックボクシングという競技は少々ややこしく、いろんな団体があり、その団体の中にたくさんの選手がいてチャンピオンがいます。

で、武尊がいるK-1はこのキックボクシング団体の一つです。K-1は徹底した自社ブランディング戦略を敷いてる団体でして、K-1に所属する選手はK-1以外での団体の試合を契約で原則禁じています。

Apple、ディズニー同様、自社だけの世界観を作り上げることでブランディングしていく、という戦略ですね。実際、その戦略の成果でキックボクシング団体としてはK-1は国内で最も人気を誇る団体になりました。そして武尊は、そんなK-1でチャンピオンとなり、絶大な人気を誇っています。

国内で最も大きいキックボクシング団体で最も人気のある選手、それが武尊。

例えるならばK-1は国内屈指の大企業で、武尊はその大企業のエリートサラリーマンなのです。

K-1のカリスマ、武尊

一方の那須川天心はK-1ではなくRISEというキックボクシング団体所属のキックボクサーです。RISEという団体は歴史のある団体なのですが、正直K-1に比べるとパッとしませんでした。K-1が大きな会場で大会をやっているのに比べ、RISEは小さなホールで毎回大会をやっているような感じです。

那須川天心はRISEでプロデビューし、あっさりとチャンピオンになるのですが、マイナーであるRISEでチャンピオンになっても世間には届きません。
そこで、キックボクシングというジャンルを超えた挑戦を仕掛けていきます。総合格闘技イベントのRIZINに出場し投げや絞技もある総合格闘技に挑戦したり、世界最高峰のボクサー、フロイドメイウェザーとボクシングで闘ったり。

正直、団体のブランドという意味ではRISEはK-1には勝てない。そのRISEの中で那須川天心はあえて"越境"していくことで名を上げていったわけです。幸い、RISEはK-1とは違い、他のリングで戦うこともある程度自由に挑戦することができたのです。

副業禁止の大企業のエリートサラリーマンが武尊だとしたら、那須川天心はベンチャー企業の最前線でいろんな会社を巻き込みながらゴリゴリ仕事してる、みたいな感じでしょうか。

キャラクターと強さを併せ持つ那須川天心

以上が、ざっとした基礎知識です。ここから、2人の奇妙なすれ違いが始まっていくのです。

大企業の武尊を、ベンチャーの那須川天心が上回ってしまった

実は、那須川天心はまだ無名の時に1観客としてK-1会場に足を運び、試合に勝った武尊の退場時に声をかけて対戦要求したことがあります。その時、武尊は天心のことをよく知らず「ただのファンに声をかけられたと思った」といいます。

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まだ無名だった天心と、当時からスターだった武尊の奇跡的な出会い

この時は武尊はカリスマとしてキックボクサー随一の人気を誇り、那須川天心は注目され始めた頃とはいえ、知名度はまだまだでした。しかし、その後那須川天心の知名度は上がっていき、2人の立場は逆転していきます。

那須川天心は「強い奴と戦う」というキャラクター、そして「神童」と呼ばれるほどの実力を持ち、ド派手な大技で相手をバッタバッタと薙ぎ倒していきます。それはまるでドラゴンボールの孫悟空のようでした。格闘技界に現れたヒーローとしてその名を上げていくのです。地上波のバラエティ番組にも度々登場しているので、格闘技にそこまで詳しくない人も「那須川天心」という名前は聞いたことがあるのではないでしょうか。

組織の方針で自由にできない武尊

那須川天心は本当に漫画の主人公のようでした。国内では苦戦すらせず、競合外国人に対しても次々と倒していく。結局一度も負けることなく、キックボクシング、RISEというジャンルをこえ、「那須川天心」という一つのジャンルにまでなっていきました。

こうなると格闘技ファンとしては「那須川天心と武尊はどちらが強いんだ?」という声が上がっていきます。幸か不幸か、2人は当時はほぼ同じ階級。団体が違うとはいえ、国内で超人気の2人のキックボクサーがいるのです。どっちが強いんだ、となるのは当たり前ですね。

ところがこれを面白いと思わなかったのがK-1。彼らはK-1以外の選手やリングについて一切発言しようとしませんでした。他の格闘技団体は、団体の垣根を超えて交流をしあったりしているのに、K-1だけは「自分たちこそが最高なのだ」という傲慢な姿勢で完璧に鎖国を決め込みました。選手のこともガチガチに契約で固め、K-1を辞めるためには莫大な違約金を払うか、1年間一切試合をしてはいけない、という条項もあったと言われています(ファイトマネーで生計を立てている選手にとって1年間戦うな、はあまりに厳しい条件です)。

一方、天心は孫悟空のように竹を割った性格で明るく楽しく、そして強くあらゆる団体の選手を倒していきます。天心が輝けば輝くほど、K-1の鎖国体制が異常に見えてきたものです。

二人が戦ったら盛り上がるのにK-1は天心の名前すら出さない。

こうして、「武尊は逃げてるのではないか?」とファンの間で噂されていきました。

こうなると可哀想なのが武尊。彼自身はれっきとしたファイターであり、天心と同じく強い選手と戦いたいと思っていました。しかし所属のK-1の方針で那須川天心の名前を口に出すことすらできませんでした。ベンチャーマインドを持った血気盛んな若者が大企業に所属したことで歯がゆい思いをしている、みたいな感じです。

一時、K-1の公式Youtubeチャンネルではコメント欄に「那須川天心」と書かれると削除されたり、K-1の中継のゲスト解説のキャスターが「那須川天心との試合も見たいですね」とうっかり発言したシーンだけが削除されていたり、とK-1は那須川天心のことをマジで目の敵にしている様子が伺えました。

実際、那須川天心が試合で勝ったリング上のマイクパフォーマンスで「あの選手との試合、ファンの皆さんも見たくないですか??」と観客を煽ったことがK-1の耳に入り、訴訟問題にまで発展したと言われています。

とにかく、国内最高を謳うK-1にとって、那須川天心は目の上のたんこぶ。その存在を無視し続け、「K-1こそ最高」とひたすら言い続ける。そしてそんな団体の看板選手である武尊もその方針に倣うしかありませんでした。

組織への忠誠を貫きながら自分の道を作った武尊

いち格闘家としては那須川天心と戦いたい。でも所属する団体の都合でそれが叶わない。それどころか発言すら許されない。ならK-1を辞めるか?ここまで自分を育ててくれたK-1を辞める事はできない。しかし日に日に、ファンから「武尊は逃げてる」という声が大きくなる。強さを追い求めていたはずなのにそれを証明する機会が作れず、更に自分が逃げてるとまで言われるー。もともと精神的に不安定だった武尊は、SNSの誹謗中傷に精神を病んでいったといいます。

こうして、武尊の葛藤はどんどん強くなりました。そしてある時から、はっきり名前は出さずとも「あの試合実現に向けて動きたい」と口に出すようになりました。

交渉の裏側に何があったのかは分かりません。武尊は色々な企業のトップに自ら掛け合い、交渉を続けてきたと言われています。そして結果的に、この試合は実現しました。二人の対戦が熱望され始めてから、実に5年。何度も何度も「やはり実現しないのでは」と言われながらも勝ち取った、奇跡の大勝負がこの一戦なのです。

昨年の大晦日、那須川天心が出場したRIZINの会場に武尊が来場し、大騒ぎになったことがありました。この時から、2人の戦いに向けた具体的な交渉が始まっていったと言われています。

数年前とは立場が逆転した2人

彼が偉いのは、K-1を辞めなかった事です。実は、ここ数年でK-1の人気選手何名かがK-1を離れています。違約金を払ったり、規定通りに試合を1年間行わなかったりそれなりの犠牲を払ってまでK-1を辞めたい選手が何人かいました。

「他の選手はちゃんとK-1離脱してるのに武尊はいつまでもK-1辞めない。やはり武尊は逃げてる」そんな声も出ていましたが、結果的には彼は最後までK-1は離脱せずに辛抱強く上層部に交渉し、自分のやりたい試合を実現させたのです。

ちょっとだけ僕の話をします。僕も会社の中にいると自由にできない、という理由で40歳の時に会社を辞めて独立しました。でも一方で、そんな短期的な私利私欲の為に会社を辞めるより、会社に残って夢を実現する方が難しいしロマンがあるのでは、と思ったりもします(たまにですが)。

最近、独立することがちょっとしたブームというか、自由を求め、会社のためにではなく自分の人生のために独立することが美談のように語られています。でもちょっと考えてみてほしいのが、独立した先に何を見るのか、です。手段としての独立なら全然いいと思うのですが、短期的なストレスの為に会社を辞めるより、不満を抱えながらも意志を曲げずに戦う方がかっこいいかもしれない。

そんな武尊という一人の男の本当の戦いが、2022年6月に実現します。きっとTV地上波でも放映されるはずなので、皆さんぜひ見届けてください。

ちなみに、生き様としては武尊に共感しますが、僕は圧倒的に那須川天心派です笑。

*続編です!


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