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ごめんね、ホイミン。

ドラゴンクエストⅣをはじめてやった時のこと。

第一章は「王宮の戦士たち」。
戦士ライアンが村から子供が消える事件の調査をすすめる物語。

ドラクエを初めてプレイする人への優しい配慮で出来ている。登場人物はライアン一人だけ。全体ストーリーの一部分でありながら、チュートリアル的な作りで、操作の仕方、ゲームのシステムも自然に理解できるようになっている。すばらしい。

魔法が使えない戦士ライアンを補うために、ストーリー途中のダンジョンで仲間になるホイミスライムのホイミン。戦闘で回復を担当してくれる。

出会うシーンで話しかけると、こんな事を言う。
「ぼくホイミン、今はホイミスライムなの。だけど人間になるのが夢なんだ。人間の仲間になったら、人間になれるかなぁ?そうだ、僕を仲間にしてよ!」

そして僕は思ってしまった。
「こいつ、絶対に怪しい!」

「はい」「いいえ」のコマンドが出て一応、断ることは可能。
でも興味本位で「はい」を選択。

「わーい!ありがとう!」と喜ぶホイミン。
だけど僕の頭の中は、不信感でいっぱいだ。

それまでのドラクエシリーズで魔物が仲間になることはなかった。
まさか魔物が協力するなんてあり得ない。
それにこんなダンジョンの中で都合が良すぎる。
多分、この後待ち受けているボスキャラの手下に違いない。
よめた!つまりこういうことだ。
「このスライムは、今後どこかのタイミングで僕を裏切る!」

その後のリメイク作品では仲間と会話するシステムがあるが、当初のファミコン版ではホイミンが話す場面はほとんどない。粗いドット絵のホイミンをかわいいと捉えられるかはちょっと微妙だ。

仲間になるとライアンの後ろをついて歩くホイミン。その様子も僕にとっては気が気じゃない。
背後を常に取られている。背中からいつ襲われてもおかしくない状態じゃないか。

物語はボス戦へ進行していく、この道中もこのホイミスライムが何かの罠を仕掛けてくるのではないか、と注意深くすすめていく。

ボス戦手前、何かあるとすればここだろう!
が、何もなくボス戦。
そして、第一章は完結する。

なんて事だ、、。ホイミンは本当にやさしい魔物だった!
ホイミンの全ての言葉は、全て本当だった。あんなに信頼を寄せてくれていたのに、僕は全く信じていなかった。
続けて第2章が始まるが、僕の頭は呆然としたままだ。気持ちが着いてこない。

物語が進むと人間になりたいというホイミンの願いは成就された様子も描かれる。
・・・僕はまた胸が痛む。
また、「僕は悪いスライムじゃないよ。」なんて言うスライムと出会うが当然このスライムもただ友好的なだけだ。
・・・ホイミンの影が頭をよぎる。
さらに、かつて友人に裏切られたと思い込んだ人物を助けるため「信じる心」なるアイテムを探し出すクエストもある。
・・・そのアイテムが必要なのは自分自身なのでは、、、。
そして、メインシナリオのラスボスは人間に恋人を殺され、絶望の果てに怪物に成り代わるという悲しいストーリーだ。
・・・その人間の価値観だけの排他的な愚かさも自分だ!!(号泣)

ドラゴンクエストⅣには人間と魔物とか、善悪だけで割り切れないシリアスなテーマがいくつもある。ホイミンショックのあとは、その一つ一つが胸に刺さる。ゲームの物語にかぶさる、もう一個のやるせない気持ち、、、。

あぁ、ごめんね、ホイミン。
人になった君は吟遊詩人だった。
やさしい歌を好み、平和を願ったに違いない。
君の幸せを祈ります。



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