便秘、下痢、おならは腸疲労かも
食べ過ぎたわけではないが、おなかの調子が不調であるという事態が発生しているとき。この状況は、おそらく「腸の疲労」によるものかもしれない。現代の生活には、腸を疲労させる要素が数多く存在しています。
【機能が低下する腸疲労】
腸の機能は、食べ物の消化、栄養素や水分の吸収、不要な物質の排出という3つの役割があります。腸が疲れると、これらの機能が低下し、便秘や下痢、臭いおならなどの症状が現れます。また、腸は免疫細胞の60~70%を含んでおり、腸の弱りがアレルギーの原因になることもあります。
では、「腸が疲れる」とはどのような状態なのでしょうか。それは、腸内細菌のうち善玉菌(有用菌)が減少し、そのバランスが崩れ、腸の粘膜が適切に修復されずに荒れた状態です。
現代の生活には、腸が疲れる原因がたくさん存在しています。まず、食事です。善玉菌のエサとなる食物繊維の摂取量が減少し、腸内細菌の働きを妨げる添加物の摂取量が増えています。また、肉類の摂り過ぎも腸にとっては好ましくありません。たんぱく質は悪玉菌のエサとなり、悪玉菌の産生物が臭いおならの原因となります。
さらに、刺激の多い不規則な生活も腸が疲れる原因となります。腸内細菌は食物繊維を摂取し、体に必要な成分(短鎖脂肪酸やビタミンB群、ビタミンKなど)を生成します。この働きは夜中に行われ、睡眠中に副交感神経が優位になるときに行われます。しかし、現代の生活では夜でもテレビやネットなどの刺激に囲まれ、交感神経優位の時間が長くなっています。
【腸疲労度チェック】
野菜やキノコ、海藻をあまり食べない
肉をよく食べる
インスタントやレトルト食品、出来合いの食品をよく食べる
甘いものが大好き
食事の時間が不規則だ
夜更かしすることが多い
睡眠時間が短い(6時間以下)
ほとんど運動しない
まじめで、完璧主義である
コロナ禍の前から、除菌・抗菌グッズを愛用している
当てはまるものが1~3個の人は、「腸疲労予備軍」
4~6個の人は「やや腸疲労」
7個以上の人は「超腸疲労」です。
腸の状態を整えるには、チェックをつけた項目を一つでも改善するよう、心掛けましょう。
【腸疲労を回復するポイント】
腸を休めて機能を回復するために重要なこと、腸疲労を防ぐために心掛けたいことをご紹介いたします。
〈1〉善玉菌のエサである食物繊維を摂取することが大切です。腸内には善玉菌、悪玉菌、そして日和見菌が存在しますが、腸疲労を防ぐためには、善玉菌が活発に働くことが必要です。
食物繊維には「水溶性」と「不溶性」の2種類がありますが、善玉菌がエサにするのは主に水溶性食物繊維です。善玉菌は水溶性食物繊維を摂取し、短鎖脂肪酸という成分(代謝産物)を生成します。短鎖脂肪酸には、酢酸(お酢の成分)、酪酸(バターなどに含まれる成分)、プロピオン酸などが含まれています。これらの成分は、腸の粘膜のエネルギー源となり、腸の蠕動運動を促進し、免疫機能を向上させるなどの働きをします。
食事が腸の健康に与える影響を示す報告もあります。例えば、食物繊維が豊富で低脂肪の食事が主のアフリカ人(アフリカ農村部の住民)と、動物性たんぱく質や動物性脂肪を多く摂取するアフリカ系アメリカ人を比較すると、前者のアフリカ人では酪酸産生細菌が多く、後者のアメリカ人では胆汁酸代謝細菌の数が多いことが分かりました。また、胆汁酸代謝産物の一部には発がん性がある可能性も示唆されています。このような知見を踏まえ、2つのグループの食事を2週間入れ替える実験が行われました。その結果、腸内細菌叢とその代謝産物に変化が現れ、がんのリスクを示すバイオマーカーがアフリカ人では増加し、アメリカ人では減少したことが明らかになりました。
水溶性食物繊維が多く含まれる食品には、大麦などの穀物、こんにゃく、大豆、らっきょう、ゴボウなどがあります。
また、ヨーグルトなどに含まれる乳酸菌やビフィズス菌も腸に良い食品です。ただし、ヨーグルトに使用されている菌はさまざまであり、個人によって合う菌は異なります。腸内細菌の構成は個人によって異なるため、自分に合った菌と合わない菌が存在します。
〈2〉適切な睡眠を確保する
腸内細菌は、主に夜間に副交感神経が優位になる時に活動します。睡眠不足の場合、腸内細菌の活動が十分に行われず、腸内の状態が乱れる可能性があります。
腸内では、セロトニンやドーパミンなどの神経伝達物質も生成されます。セロトニンは精神の安定に関与し、しばしば「幸せホルモン」とも呼ばれます。一方、ドーパミンは「やる気ホルモン」とも言われています。腸が健康でないと、これらのホルモンの生成が減少し、気分の落ち込みやイライラのリスクが高まります。また、セロトニンは「睡眠ホルモン」の原料となり、不足すると睡眠の乱れを引き起こす悪循環に陥る可能性もあります。
〈3〉運動による腸の刺激
さらに、ストレスを蓄積しないように心掛けることも重要です(ストレスが増大すると交感神経が優位になり、腸内細菌の活動が低下します)。また、おなかを温めることも意識して行いましょう。これらの取り組みによって、健康な腸を維持し、充実した生活を送ることができます。
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