つま先立ちで血流アップして健康に
若い年齢だからといって、自身を緩めてはいけません。生活習慣病のリスク、例えば動脈硬化や高血圧などは、若い人にも存在します。こうした病気を予防するための重要な要素は、「血流」です。特に下半身の血流は滞りがちであるため、改善するための一つの方法として「つま先立ち」がおすすめです。この方法を実践することによって、どのような健康効果が期待できるのでしょうか?
【ふくらはぎは重要】
ふくらはぎは、「第2の心臓」と称されている部位ですが、その理由を詳しくご存知ですか。私たちの体内では、血液が次のようなメカニズムで循環しています。
1.心臓から血液が勢いよく送り出される
2.血液は動脈を通り、心臓から体の末端へと向かって流れる
3. 体の末端に到達した血液は、静脈を通って心臓に戻る
まず、心臓から血液が勢いよく送り出されます。そして、血液は動脈を通り、心臓から体の末端へと向かって流れます。この時点で、「1」という段階になります。その後、体の末端に到達した血液は、静脈を通って心臓に戻ります。「3」という段階です。
ここで大切なのは、血液が心臓に戻る際に必要となる力です。なぜなら、足先まで流れてきた血液を逆に心臓に戻すには、重力に逆らって押し上げる力が必要だからです。その役割を果たしているのが、ふくらはぎの筋肉です。
ふくらはぎの筋肉は、収縮と弛緩を繰り返すことで、ポンプのような働きをします。この働きによって、血液をスムーズに心臓に戻すことが可能となります。
しかし、ふくらはぎの筋肉の力が低下すると、血液が心臓に戻る途中で重力に負けて逆流する可能性もあるのです。そこで、静脈には「静脈弁」と呼ばれる扉のような仕組みが存在します。
静脈弁は、静脈内に多数配置されており、血液の逆流を防ぐ役割を果たします。静脈の内側にある開いた状態では、血液が正常に流れますが、ふくらはぎの筋肉の収縮によって静脈が圧迫されると、静脈弁が閉じ、逆流を防ぐのです。
これによって、血液の循環はスムーズに保たれます。ふくらはぎのポンプの力と静脈弁の働きがうまく連携することで、心臓に血液を効果的に戻すことができるのです。
血液が心臓に戻る際、弁は開いて血液の流れを許し、血液が足先に逆流しようとすると弁は閉じます。この弁は本来、薄くて壊れやすい構造をしていますが、加齢や出産、長い間立ち仕事をしていることなどの要因で壊れてしまうと、逆流した血液が静脈内にたまることになります。この状態が長く続くと、静脈がデコボコな状態になったり、曲がりくねったりする「下肢静脈瘤」という病気の原因になります。このような病気を予防するためにも、ふくらはぎの筋肉のポンプ機能を保つことが重要です。
【つま先立ちでふくらはぎの筋肉強化】
ふくらはぎの筋肉を鍛えるには、ジョギングやウォーキング、筋力トレーニングなどさまざまな方法があります。しかし、忙しい日々を送っていると、運動のために時間を割くことやジムに通うことは難しいですよね。また、屋外でのスポーツは天候に左右されることもあります。
筋力を高めるためには毎日コンスタントに続けることが重要です。そのためには、いつでもどこでも簡単にできて、続けやすい方法を探す必要があります。
そこで、おすすめしたいのが「つま先立ち」です。たったつま先だけで立つだけでも、ふくらはぎの筋肉を刺激し、筋力アップにつながります。
●つま先立ちトレーニング
壁などに両手のひらを当てて、まっすぐ立つ
両足のかかとを上げて10秒間キープ。その後ゆっくりかかとを下ろす
2を1セットとして5回くり返す
上記の時間や回数は目安として参考にしてくださいが、実際には個人の体力や柔軟性に合わせて調節する必要があります。かかとを上げて20~30秒間キープすることや、1日に何回も繰り返すことも可能ですが、無理をせずに疲れない範囲で行うようにしましょう。例えば、通勤時に電車のつり革につかまってつま先立ちをするという方法も考えられます。こうした隙間時間を利用した取り組みは、効率的な運動習慣を作るのに役立つでしょう
●座って行うつま先立ちトレーニング
椅子に浅く座り、背筋を伸ばす
手で椅子の端をつかんだ状態で両足のかかとを上げて10秒間静止し、ゆっくりとかかとを下ろす
2を1セットとして5回くり返す
【期待できる効果】
つま先立ちをすることでふくらはぎの筋肉が鍛えられることにより、全身の血液循環が改善されます。特に下半身の血流が円滑になる効果があります。ふくらはぎの筋肉は収縮と弛緩を繰り返すことで、静脈内の血液をポンプのように心臓に戻す働きをします。血液循環が良くなることで、代謝も活発になります。その結果、むくみの緩和効果が期待できます。加えて、足の冷えを改善する効果もあります。
さらに注目すべきは、つま先立ちによる動脈硬化や高血圧の予防効果です。動脈硬化は、動脈が硬くなり、柔軟性や弾力性が失われる状態のことを指します。動脈の中に血栓ができたり、血管に老廃物のかたまりであるプラークが付着することで、血管が詰まりやすくなります。この状態が進行すると、心筋梗塞や脳梗塞などのリスクが高まります。
血圧が高くなる原因の一つは動脈硬化です。動脈硬化は血管の柔軟性と弾力性が低下することを意味します。この状態では血管が拡張しにくくなり、血圧が上昇しやすくなります。もし高血圧が長期間続くと、血管はダメージを受け、さらに動脈硬化が進行する可能性もあります。
動脈硬化と高血圧は密接に関連しており、この症状を予防するためには血管のしなやかさと柔軟性を維持することが重要です。
そこで血管の内皮細胞が重要な役割を果たします。これらの細胞はNO(一酸化窒素)を生成し分泌します。NOの主な機能としては、NOは血管を拡張させる作用があります。これによって血管の弾力性が保たれます。
さらに、NOは硬くなった血管を修復する効果もあります。つまり、ダメージを受けた血管を回復させることができます。
したがって、血管の健康を維持し予防するためには、NOの生成と分泌を促すことが重要です。血管のしなやかさと軟らかさを保つために、適切な生活習慣や食事、運動を取り入れる必要があります。それによって動脈硬化や高血圧を予防することができます。
NOの分泌は、血流が速まることで促進され、血管内壁が刺激を受けることも関与しています。つま先立ちを習慣にすることで血流が改善され、血液中のNOが増えるので、血管がしなやかで柔らかい状態に近づくと考えられます。その結果、動脈硬化や高血圧の予防につながる可能性が高まります。
血管への効果だけでなく、筋肉自体への影響も見逃せません。足のひざから下の筋力が強化されると、足を持ち上げることが容易になります。これにより、ちょっとした段差でつまずいたり、思わず転倒したりするような事故やケガの予防にも役立つのです。
また、つま先立ちをすることでふくらはぎの筋肉が引き締まるため、美脚に繋がる可能性もあります。
もし、つま先立ちをする時に足にしびれなどの異常を感じた場合は、血管や他の問題が存在する可能性が考えられます。早めに医療機関を受診することをおすすめします。
また、次のような血管の障害に伴う症状や疾患がある場合は、つま先立ちを無理に行うことで血管に負荷がかかり、血流が悪くなる要因となるので避けましょう。
1. 間欠性跛行: これは少し歩くと足にしびれや痛みが生じ、休憩すると再び歩けるようになる状態です。
2. 閉塞性動脈硬化症: 手足の血管が動脈硬化を起こし、冷えやしびれ、歩行時の痛みなどの症状が現れます。
3. 労作性狭心症): 階段の登り下りや重い物を持つなど、体への負荷がかかる動作を行うと、胸部の圧迫感や痛み、締め付け感が生じます。
これらの状態では、つま先立ちを強制的に行うことにより、血管にさらなる負荷がかかり、血流が悪くなる可能性があるため、行わない方が賢明です。
【動脈硬化や高血圧対策】
若いからと言って心配することはないと思いがちですが、実はストレスや喫煙、高脂肪食の摂取量の増加などの要因によって、30代や40代でも動脈硬化や高血圧を発症する人は珍しくありません。
将来的に大きな病気を患わないようにするためには、「まだ大丈夫」と思える段階からしっかりと予防策を講じていくことが重要です。その中でも、つま先立ちのエクササイズを無理なく継続することは、予防法の一つとして有効です。
また、血圧を測定するのは年に1回の健康診断や人間ドックの時だけ、と考えている人も多いかもしれませんが、40代以降ではできれば自宅で血圧計を用意し、毎日測ることが理想的です。血圧は時間帯やその時の状況によって常に変動しているため、起床時、食事後、就寝前など、1日に数回測定することで自分の血圧の傾向を把握することができます。明らかに高い数値が続く場合は、早めに医師の診察を受けることが大切です。