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トークン発行体が売上を自社トークンで計上しない理由

トークン発行体は自前のトークンで売上を建てない方が良い理由について書きます。

Axie, STEPNといった著名なweb3サービスも、NFT売買にはethやsolが決済通貨として採用されており、運営手数料は上記通貨が同じく発生します。

マイナー所で私が2年前ほど前に触っていたBSCチェーンのDNAxCATというAxieのパクリゲーでは少し面白いことが起きていました。

懐かしい…

このゲームはBSCチェーンで運営されておりSFCを稼ぐ所謂よくあるP2Eゲームでした。
元々は、BSCチェーンのネイティブトークンであるBNBがNFTマーケットプレイスの決済がされていたのですが、途中でゲームトークンのSFCというユーティリティトークン建に変換されました。これは、SFCというユーティリティトークンに用途がほとんどなく、AxieのSLPように時間とともに価値が下落するユーザーの懸念に答えた形となります。

しかし、この対処法は期待していたより上手くいきませんでした。

BNB建での取引の場合、手数料の一部がSFCの買い支えに充てられていました。つまり、手数料5%で100万円のBNB決済が発生していた場合に、5万円のBNBの一部がSFCのペア通貨(確かUSDT)にスワップされた上で、そのUSDTを使ってSFCを更にスワップするという処理をしていました。

一方で、ダイレクトなSFC決済の場合は、買い戻しという手法を取ることができません。ユーザーが市場から購入して買い支えを行ってもらう選択肢しかなくなってしまいます。一方でユーザーはNFTを持っていればゲームプレイによりSFCを獲得できるため、買い手側はわざわざ必要以上のSFCを常に手元に確保しておきたいとは思わないでしょう。また売り手側は価値の下がりそうなユーティリティトークンという性質上、そのトークンで売上を上げてもすぐに換金しておく方が合理的です。

この改悪?により、このゲームは徐々に暴落を重ねて量産型P2Eの一角として静かに名を消していくことになりました。

発行体目線でも、自前のトークンで収益を立てることにはリスクがあります。先程の売り手と同様にどこかでトークンを安定通貨に換金し、売却タイミングを逐一検討しないといけないからです。大体の場合ユーザーが価格が一番上がると思ってくれている買板の一番多いタイミングで運営が売りつけるのが一番最適だと判断します。

全ての収支がトークン建なら何も問題ないですが、一部の大きな費用が現金で支払いが必要、もしくは再投資には現金もしくは他通貨のみでしか決済できない、と言った場合にはどこかで掛けた現金建てに変換したい需要が生まれます。そして、気づくのです。結局のところ、誰も「そのトークンを持ち続けたい」と思っていないことに。(どちらかというと「自分のために誰かがそのトークンを欲しがっていてほしい」でしょうか)

一方でethやsolなどの第三者が発行したトークンであれば、流動性が一定あれば、何も問題ありません。どのタイミングでいくら売ろうが、多少の誤差はあれど大抵は全て捌ける程度の流動性を持っているからです。だからこそ、それを費用通貨として請求することも可能なのです。経済学で言う貨幣需要の「価値の交換」需要を満たしています。

なので、私はユーティリティトークンは不要派です。第三者が価値を担保している通貨を媒介にすることが売り手・買い手もハッピーになるのではないかと常々考えています。

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