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『苦しみながらも』2021年 J2 第4節 愛媛FC×ヴァンフォーレ甲府

 前半は押し込まれ、後半は決定機を外しまくりの中でセットプレー1本を決めて勝ってしまった感が強い試合を振り返ります。

前節の感想文


▶スタメン

【HOME】愛媛:4-4-2
 前節長崎と引き分けたメンバーからボランチの森谷に代えて、今季大分から加入した前田が初先発しました。ベンチの内田は古巣対決。

【AWAY】甲府:3-4-2-1
 連勝中の甲府は前節の三平、山田に代えて野澤英、有田が先発。2人とも古巣対決。

▶うまくいかなかった前半

試合開始10秒でファーストシュートを打ったのは甲府。しかしこれ以降は押し込まれ、まともに前進できませんでした。じゃあなんでできなかったの?というところを振り返りたい。

 まず愛媛の基本的な守備は甲府の後ろ3枚(基本3バックの3人でしたが)に対してセンターフォワードの吉田と両サイドハーフが、野津田との組み合わせにより比較的低い位置でプレーしていた中村に対してはトップ下気味に位置取りする近藤がマンツー気味に、両ウイングバックには茂木、前野が前に出てきて対応というような形でした。

 その中で愛媛は特に関口を奪いどころとして狙っていたと感じました。小柳や新井から関口へ誘導し、関口へパスが出たら前野が前に出てきて縦を塞ぎ、忽那は小柳へ一旦プレスに行ったのちに関口へ後ろを塞ぎながらプレスバックし、必ず2対1の状況を作っていました。関口は横にしかないパスコースは読まれていましたし、左足でワンタッチで前に出すシーンもありましたが味方に合わなくて攻撃に移れず、愛媛のターンが続いてしまいました。距離の近いパス交換も良くなかった原因です。愛媛はこの試合だけを観る限り栃木や秋田と同志向のチームだと思います。栃木戦のようにシンプルに相手のサイドバックの背後を狙う形も多少ありましたが、あの試合のように関口が裏に抜けるシーンも少なかったり、シャドーが間で受けるために高い位置を取って相手のサイドバックをピン留めすることもなく、繋いでいくのか、シンプルに背後を狙うのかプレーに迷いがあるように感じました。

 愛媛のボール保持は前体制下の名残が残っているかのような形でした。
3-1-1-5のような立ち位置でボールを前進させていました。ボランチの前田が左センターバックの左脇に落ちるときは両サイドバックが高い位置を取り、両サイドハーフが内側に入り、近藤は吉田の背後でライン間でフラフラと浮く形。また前野が最終ラインにステイするときはボランチの田中が左ワイドに出てくるというライプツィヒのような可変でした。

 甲府の最終ラインの5枚に対して、愛媛の前線5枚+1の配置。前野や前田から差し込まれる縦パスや、小柳を引き連れて忽那が下りてきて背後にできるスペース、5バックの泣き所に+1の近藤が抜ける形など5バックの攻略はかなり用意してきていた気がしました。

▶修正がうまくいった?崩れたから?

 甲府は前半の途中から泉澤がワイドの張り出していつものようなチェンジサイドを織り交ぜるオーガナイズに変更しました。前半の途中まではパスが各駅停車で隣から隣と近い間隔でのパスが多く、愛媛もプレスに行きやすかっと思います。ですが前半途中から広く遠くへのパスが多くなり、相手のコンパクトな布陣も少しづつ間延びし始めます。

 後半は開始から完全に攻守分断し間延びしてしまった愛媛。後半開始からハードワークが持ち味ではなくどちらかというとフリーの状態で受けて精度の高い左足を活かしたいタイプの内田が交代で入りました。間延びし、1人1人がプレスに行く距離が長くなり、サイドハーフのハードワークが生命線のはずですが選手交代と疲労でプレスがかからなくなってきたところで、傷口をえぐるようなプレーをするのが荒木。

 3-1-4-2のような立ち位置から、泉澤がワイドで張ることで荒木と数的優位に立つ左サイド。この荒木がまた厄介な立ち位置で相手を惑わしました。とにかくランニングでスペースを作る、作る。

▶再現性ある攻撃

 68:09~のシーン。荒木が茂木と西岡の間が広がるように幅を取っています。茂木と西岡の間を泉澤が抜けて行きます。この時、前田を引き連れていくことが重要です。前田が泉澤についていってしまうことでハーフスペースがぽっかり空きます。このスペースに中村が侵入していきます。

 荒木はハーフスペースに入ってきた中村にライン間を横切るパスを出しますが、田中が中のコースを切ってついてきていたのでゴール方向を向けず、いったん泉澤にボールを預けて、さらに背後に田中を引き連れて抜けて行きます。

 中村が空けたハーフスペースに今度は野津田が侵入してきてフリーでシュート。枠外へ飛ばしてしまいましたが、何人も抜けてはスペースに入ってくる形は大宮戦も見られましたが再現性のある攻撃と言えます。今季伊藤監督はボール保持者がハーフスペースで前向きの状態を作ることをキャンプから取り組んできていますが、まさに形になってきている証拠です。

▶まとめ

 苦しい試合展開の中で耐えて、セットプレーで仕留める。1年間ずっと良い試合ばかりではないですし、苦しい試合もモノにできるのが強いチーム。まだまだ成長中で伸びしろばかりなチームがこういう試合を経験していくことは必要です。またうまくいかない試合の中で彰さんや渋谷さんがやろうとしていることが形になっているのは成長の証です。
 昇格には連勝が必須です。昇格するチームは5連勝、6連勝します。昨年は2度の3連勝しかなく、それ以上はありませんでした。成長しつつも結果も重要な今年は更なる連勝、スタートダッシュを続けていきたいですね。

★各データまとめ・ハイライト

■試合結果
愛媛FC 0ー1 ヴァンフォーレ甲府
■得点
39分 中村亮太朗(甲府)


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