見出し画像

シーズン感想文。ヴァンフォーレ甲府の2020

 のちにクラブを経営していくのもこんなに大変になるとは予想もできなかった今シーズン。シーズンが終わってどのクラブも30歳オーバーのベテラン選手やベテランに差し掛かる年齢の選手らの契約満了が多いですね。甲府はそれよりも一足先に年俸が高いであろうベテラン選手の整理をして若返りを図りました。例年より若いチームを率いて挑んだ伊藤監督2年目の今季を振り返りたいと思います。

成績

シーズン終えて16勝17分9敗の勝ち点65で結果4位。シーズン前、佐久間GMは昇格に必要な最終勝ち点の目標は設定しませんでしたが、「ファーストターゲットとしては、まずは勝ち点70を何が何でも早く達成したい」という目標は挙げていました。最終的には勝ち点65で70にも到達できなかったことになります。しかし多くの主力や計算できる実力者を減らし、人件費を大きく下げたなかでこの成績は上出来ではないでしょうか。シーズン最後の方まで数字上昇格の可能性を残したことも評価できます。とはいえ、最終的に上3チームから大きく離されてしまったのですが。。。上位との差は明らかに引き分けの多さ。リーグ1位の引き分け数は良く言えば負けない、悪く言えば勝ちきれないを表しています。昨年であれば金園選手や佐藤洸一選手など途中から出てきても結果を残せる選手がいて、負けを引き分けに、引き分けを勝ちにできました。しかし今季はFW陣で怪我人が続出したこともあり(そもそも編成に疑問ありだったが)、後半からパワーを出せる采配ができませんでした。

実際途中出場選手の得点数は6でリーグで19位でした。これが2桁得点に乗っていたらもう少し上との勝ち点も詰められたでしょうし、もしかしたら順位が入れ替わっていたかもしれないです。来年への反省点です。

一長一短のターンオーバー

中断明けから超過密日程へ変更になったことで伊藤監督はターンオーバーで行くことを決めたといいます。ほぼ毎試合6~8人替えることで疲労の蓄積を減らし怪我人を最小限に留めること、若い選手たちを公式戦に起用することで成長を促すことを進めてきました。結果、これまで経験豊富なベテラン選手やスーパーな外国籍選手の壁を越えられなかった選手が、起用すればするほど力をつけて彼らを押しのけるほどにまでなったのは収穫でしょう。しかし毎試合選手が大幅に替わることでチームの成熟度が上がってこず、終盤に向けてピークを持って来れなかったのも事実。クラブとしては昇格という目標があり、そのためのチームを作ることと、ここ何年も疎かにしてきた若手の育成の両方を手にすることは難しいと感じました。最後の10試合くらいを残して佐久間GMはメンバーの固定を伊藤監督に提案していたようですが、最後までその2つとも捨てずに戦ってきました。とはいえ来年以降に繋がる成果が出たので評価できます。

整理された内容

サッカーの内容も徐々にですが改善されたと思います。相手の立ち位置に対してこちらが良い立ち位置を取っていく、相手の選手と選手の間に生まれる穴(ホール)に立ち、1人で相手2人以上を困らせるようなポジションを取る、組織としてのバランスは保ちつつ、ローテーションしていき、ポジションレスに選手が入れ替わり立ち替わり穴に潜り込んでいくというところは浸透してきました。あとはボールを握ってもっとイニシアチブを取っていきたいといったところでしょうか。詳しいことはシーズン途中で書いたこちらを見てもらえれば。

なぜこんなに整理されたのかと考えると渋谷ヘッドコーチの招聘しか考えられません。元々伊藤監督は見えているものが同じ、似ているということで吉田達磨さんが監督時代に甲府へ呼んだ方です。しかし昨年までの内容を見ても、求められているのが結果重視ということもあってか理想としているようなものがそれほど感じられませんでした。理想はありつつも現実を見ているようでした。しかし今年、熊本を昨年限りで退任された渋谷さんを(伊藤監督主導なのか、クラブ主導なのかはわからないけど)呼んだことで大きく変化したように感じます。これまた渋谷ヘッドコーチも志向しているものが伊藤監督に近い考えの方です。渋谷ヘッドコーチが率いていた熊本はまさにいま甲府が取り組んでいる良い立ち位置を取り続けることで優位性を生み出していくことを基盤にしたサッカーをしていました。チーム全体の指揮は伊藤監督が、個人戦術など細かいところは渋谷ヘッドコーチがやっているのでしょう。明らかに選手の理解度が高まったように感じます。影のMVPといってもいいでしょう。今季最大の補強だったと思います。

一方で気になったのが非保持型のチームにめっぽう弱いことです。

支配率50%以上の試合では4勝8分7敗で勝率21%です。2割しか勝てませんでした。しかも支配率60%以上の試合は1分3敗です。ボールを持たせておけば何もできない、崩せないということでしょう。ボールを動かし、相手を動かし、良い立ち位置を取って、最後グループで崩す・仕留めるというところまでできませんでした。もちろん点を取るべきストライカーが軒並み怪我で不在ということもありましたが、これ決まらないのかという場面も非常に多かったのでこの部分は来年改善しないといけない課題です。

まとめ

厳しい苦しいシーズンでしたが、伊藤監督&渋谷ヘッドコーチの理想のチーム作り、選手の成長と非常に実りのあるシーズンだったと思います。来年は昇格を目指す正真正銘の勝負の年となります。すでに今オフも何人も抜けている状況ではありますが、今シーズンに作ったベースを成熟させて上に行けると期待しています。それではまた。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?