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『狙い』2021年 J2 第2節 大宮アルディージャ×ヴァンフォーレ甲府

 今節は甲府にも関係者の多い大宮戦。今季から岩瀬監督が就任してロジカルな良いチームを作ってくるに違いないということで感想文を残していこうと思います。

前節の感想文

▶スタメン

【HOME】大宮:4ー4-2
 前節から2人入れ替え。松田に代えて黒川、佐相に代えてハスキッチで奥抜を左サイドハーフで起用。システムは4-4-2です。

【AWAY】甲府:3-4-2-1
 1日に全治4週間(2月20日受傷)の怪我をして離脱と公式発表を出したばかりの泉澤を大宮サポのみならず、甲府サポをも驚かすサプライズ起用。そして最終ラインは千葉戦で上々の出来だったメンデスに代わり新井を起用しました。

▶大宮の狙い=甲府の狙い

 大宮は立ち上がりからボール保持時はサイドバックが高い位置は取らず、サイドハーフが大きくサイドに張り、4ー2ー4で立ち位置を取ります。

 大宮は甲府が前節5-2-3でプレッシングしていたのを見て今節も継続してくるだろうと予測したのだと思います。甲府が5-2-3でプレッシングにくればシャドーの背中、セントラルハーフの脇が空きます。なので大宮はボールを保持しても、そのスペースを作るためにサイドバックがわざと上がらずにステイします。このスペースにボールを送り、起点を作ることがこの試合の狙いだったのでしょう。一方、甲府は前節ほど高い位置からプレッシングへ行かず、まずはミドルゾーンでセットすることから始めます。ミドルゾーンに入ってきたらプレッシング開始という変更がありました。こちらも前節の大宮を見て、前から行けばゴールキーパーの上田のロングキックで一気にひっくり返されることを警戒してのことだと思います。
 大宮は甲府の前線3人をつり出しスペースを広げ、そこにボールを運びたい狙いがあったはずですが、あまり甲府が前から来ないがために前進できず、ハスキッチの高さを狙う攻撃が多くなってしまいました。

 甲府が前から来たときは、ハスキッチがスペースに下り、新井がついてきた時に背後にできたスペースを中野が狙う形や、サイドハーフの黒川にボールが入ったときに荒木が食いついた背後のスペースを中野やハスキッチが狙う形はできていましたが、数多くは作れませんでした。

 逆に甲府がこのスペースをうまく使っていたように感じました。大宮がボールを失うと、このスペースはがら空きですし、守備の時はこのエリアを守るはずの黒川は攻撃時は高く、広く立ち位置を取っているので守備に戻るまで時間がかかります。このスペースにいるのが今季も甲府の攻撃を牽引する泉澤なのです。15分のシーンでは大宮からボールを奪ったところから2本繋いでこのスペースにボールを届けています。そしてシュートまで行っています。大宮が使いたいスペースは逆を言うと甲府にも使えるのです。

▶黒川の迷いは荒木

 この試合でさらに評価を上げたのが荒木でしょう。対峙していたのは効果的なボールの引き出し方ができず、チャンスのなる位置で受けれても軽率なミスでラインを割るなど終始低調だった大宮の10番黒川です。

 この試合、荒木は様々なエリアに出没します。19分のシーンです。新井がボール持つと、内側のレーンに移動して1m下ります。そこに黒川を引き付けることで大外に幅を取っている泉澤へのパスコースとスペースを作り出します。そうすると泉澤は馬渡との1対1の状況となります。馬渡は攻撃で強みを出せる選手で、泉澤を1対1で止められる選手はJ2ではそうはいません。この状況を見た黒川は馬渡の守備のヘルプに行きます。

黒川が自分のもとを離れたのを見た荒木は4バックの泣き所、チャンネル(センターバックとサイドバックの間)に向けてランニングします。これを見た大山は荒木についていき、中央のエリアを空けざるを得ず、ここに出来たスペースに中村が侵入していきました。最終的には泉澤が中村にパスをしますがミスになってしまい攻撃が途切れてしまいましたが、荒木の位置取り、ランニングで全て出来上がった格好となります。前半飲水タイムに岩瀬監督、馬渡、黒川の3人で話しているシーンが映っていましたが、ここをどうするのかを話していたんじゃないかと思われます。

甲府の1点目直前もこの荒木の動きが関わっています。大宮最終ラインが4枚に対し、甲府は5枚配置。泉澤とレーン交換して、シャドーとして振舞います。甲府の数的優位になっているので、大宮側からすればまともにシャドーにボールが入ってしまうと危険な状況になってしまいます。新井からのパスを引き出しに下りることで、心理状況も含め、パスも奪えそうなコース、スピードだったこともあり馬渡をつり出すことができ、その背後に泉澤が抜ける流れから獲得したコーナーキックから得点になりました。このような荒木の動きはこの試合終始見られ、前半大宮の攻撃、特に馬渡、黒川が上手くいかなかったことも荒木の動きに手を焼いて攻撃局面になかなか移行できなかったことにあると思います。

▶後半の修正を図るも

 後半、大宮はゴールキーパーが高い位置を取り、サイドバックも高い位置を取り、サイドハーフを少し内側に配置し、3-2-4-2のような配置に変更しました。前半わざと空けておいてから使いたかったスペースに、後半は初めから人を配置してボールを入れていく意思を見せました。ですが、甲府も5-4-1のミドルブロックで中をしっかり締めていて、効果的にボールを入れることができず、結局最もゴールに近づいたのは80分過ぎからで時間が足らずに無得点に終わり、甲府は77分にまたもやコーナーキックから追加点をあげ、試合終了でした。


▶まとめ

 強かにセットプレー2発で仕留めた甲府ですが、ボール保持もロジカルに4バックの攻略ができていたので流れからも得点を取りたかったですが、まずは今季1勝できたことが嬉しいですね。この試合で最も評価を上げたであろう荒木選手は昨年はライン際を上下動する無尽蔵なスタミナとスピードを持った走力が光っていた選手ですが、同じくライン際を得意なエリアとしている泉澤選手とユニットを組んでも、相方に合わせてこれだけやれると正直手が付けれない選手になっちゃいましたね。アシストもはやくも2になり、今季はどれだけ得点に関われるか楽しみな選手です。
大宮は今季から岩瀬監督になり、正直積み上げの差が出てしまった試合になってしまいましたが、これから岩瀬監督のもとで色々仕込まれ、積み上げていけばいい選手が揃っているので良いチームになると思います(たぶん)。甲府もうかうかしていられないし、そんな上から目線みたいなことは言っていられないですが、昇格争いをするであろう相手に勝てたことを余韻にまた1週間過ごしましょう。

★各データまとめ・ハイライト

■試合結果
大宮アルディージャ 0ー2 ヴァンフォーレ甲府
NACK5スタジアム大宮
■得点
30分 新井涼平(甲府)
77分 野澤英之(甲府)


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