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『光り輝く41番』

 甲府は数々の大卒選手を発掘し、戦力化し、次々とトップカテゴリーのクラブへ輩出していますが、今年も5人の大卒選手が加入しました。その中で一際存在感を放っているのが長谷川元希選手です。そして現在最も甲府で輝いているのも長谷川元希選手といっても良いでしょう。昨年特別指定選手として甲府では既にデビューをしていましたが、プロとしては今年が1年目です。

 今季の甲府はセットプレーでの得点はありましたが、流れの中での得点が少なく、チャンスはたくさん作れているもののシュートを打てどもゴールを奪えないという状況に陥っていました。そんな中、4月17日の8節・松本山雅FC戦で先発2試合目にして2ゴール1アシストの活躍をし、これまでのチームの得点力不足を払拭する活躍を見せました。

初ゴールを決めることができたけれど、正直うれしくはない。ハットトリックでチームを勝たせるもう1点を取りたかった。もう1点取っていればチームを勝たせることができていたので自分としては納得いく内容ではなかったです。

松本戦試合後インタビューでのコメントです。プロ1年目の選手が『自分がハットトリックしていればチームを勝たせることができた』というコメントから滲み出る大物ぶり。しかしただの大口を叩いている訳ではないはありません。

松本戦から遡ること2週間前の6節・長崎戦。後半の始めからピッチに登場した長谷川は61分に最大のチャンスがやってきました。相手のディフェンスとディフェンスの間を抜け、三平からパスを受けるとゴールキーパーと1対1となりました。本人は股の下を狙ったようですが、僅かにずれてキーパーの足に当たってしまいました。横には関口が走り込んでいましたが、気付かなかったようです。試合後、このゲームに負けたのは自分の責任だと涙を流したことが、松本戦での『自分がハットトリックしていればチームを勝たせることができた』に繋がっているはずです。そして松本戦後の本人のインスタグラムには『次は必ず勝たせて見せます』と力強いコメントも残していおり、実際に4月21日の9節・SC相模原戦で1ゴール1アシストの活躍でチームを勝たせました。


 長谷川元希選手の特徴といえば、スペースを認知してポジションを取れること、ボールを運べること、そして守備も献身的でさぼらないことです。

①スペース認知してポジション取り

彼の起用されているのはシャドーでセンターフォワードの背後、いわゆる1.5列目の位置です。後ろから繋いできたボールを中間ポジション、相手DF-MFのライン間とハーフレーン(ハーフスペース)の交わるスペース『ホール』と呼び、このスペースでパスを引き出し、チャンスを作るのが彼の役割です。

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スペース(余白)なので試合中の相手の立ち位置によっては広くなったり、狭くなったりしますが、長谷川元希選手は味方や相手がどこに立っていて、どこにスペースが空いているのか、次になにができるのかという予測と認知、そこで得られた情報をもとに何を行うことが最適なのかという判断、そして1番重要なのが判断したプレーをボールコントロールやパス、ドリブルなどの手段を行う技術があって実行できるかという、認知・判断・実行のプロセスを正しくできるのが彼の1番の特徴です。またゴール前でも適切な立ち位置が取れているので危険なエリアへ侵入でき、得点が取れているのだと思います。

間で受けてスルーパス

長崎戦の良い抜け出し

相手にとって危険なところへ侵入してゴール

②ボールを運ぶ

 まずボールを運ぶというのは簡単いうとドリブルで前進することです。いわゆる運ぶドリブルです。相手のラインを越えていくことです。これまで甲府は泉澤仁選手がボールを受けて運んで、最後の局面では仕掛けてと過タスクをこなしていました。なので最後の仕掛けの場面で精彩を欠くというのは昨年からよく見た光景です。しかし長谷川元希選手が試合に出るようになってからボールを運ぶという役割を担っていることで泉澤選手が高い位置で仕掛けること力を注ぐことできるようになりました。
ボールを受けてから、パスから入るのではなく自分の前にスペースがあればドリブルで前進、自分に相手が寄ってきたら空いた味方を使うなどここでも認知判断実行が行われています。シャドーでの起用が多いですが、中盤(セントラルハーフ)で起用された町田戦なんかは相手の中盤のラインを突破するドリブルの見せていました。また、これまでチームにいなかったようなドリブルでスピードアップするだけでなく状況判断してわざとテンポダウンさせてチーム全体を落ち着かせることもできるので、オーガナイズを整える時間を作り、立ち位置を取る時間を作り安定したボール保持をさせることやボールを失っても陣形が整った状態でカウンターを受けれるようになりました。

相手が寄せてくるのを確認しながらドリブル

③献身的な守備

相模原戦後のインタビューでこんなことを言っていました。

--前線からの守備でもスプリントしていましたね。
前線の選手でも攻撃だけでは生き残っていけないということは意識しています。1年を通じて前からの守備はやっていきたい。

守備意識の高さ、ボールを失った後の切り替えの速さは試合に出続けるために必要なことです。長谷川元希選手の前線での献身的な守備は非常に貢献度が高いです。相手の中盤へのパスコースを消しながら、猛スプリントしてボールホルダーに詰め寄るプレッシングは出場中はずっと繰り返し続けています。あれだけ試合通して強度高く守備をしても攻撃の時にクオリティが下がらないのも彼の良さでしょう。ただまだ90分フルで通してプレーできていないのも事実で、両立しながら90分プレーできるようになると心強いです。まだ成長が必要です。

この先の

伊藤監督とは大宮ユースからの関係です。伊藤監督は長谷川元希選手に対して、

Q:今日プロ初先発の長谷川選手の評価はいかがですか?
A:彼にとってみたら、3試合目で初先発でしたが、「今まで通り、当たり前にやってください。」それだけです。(北九州戦後)
Q:長谷川選手が2試合連続ゴールで、更にここ2試合は全ゴールに絡んでいますけど、監督の目から見てこの要因は何だと思いますか?
A:もともと技術力や戦術眼などパフォーマンスが良い選手だと思っています。これぐらいやれる力はあると思います。毎試合さらにもっと良いパフォーマンスを出せるようにやってもらいたいですし、今のチームにおいて得点や勝ちに導いている選手ですので、次のゲームも期待しています。(相模原戦後)

『当たり前にやってください。』や『これぐらいやれる力はある。』など良いプレーや得点をしてもなかなか簡単には褒めてもらえず手厳しい評価にも感じますが、こんなもんじゃない、もっとできる選手という証拠でもあります。すでに内容も結果も数字で残しつつある中で、もうすでにサポーターの心を掴んでいますが、子供のころから長谷川元希選手を知っている伊藤監督がこんなもんじゃないという評価をしているのをみると、この先甲府でどんな未来が待っているのか、どんな姿を我々に魅せてくれるのか楽しみで仕方がありません。


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