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不思議な卵 第一話


#創作大賞2024 #ファンタジー小説部門

あらすじ

不思議な卵を巡る人間ドラマ。不思議なたまごによって、さまざまな出会いや別れをするうちに、だんだん成長していく古美術店の青年主人公、カイラ・・・。祖父から継いだ店を後にとうとう、冒険の旅にでる決意をする。

 どこか、神秘的な女性ディアナとの出会い。そして、異文化との出会いに多いに驚嘆する主人公。

 

 冒険の果てに不思議な卵の謎は、解けるのか?いなや。

 

 

 


 

嵐の夜こちらでいう月のかけらが落ちてきた不思議な土地として知られ、
500年がたったとされている。

様々な土地の人々がやってきたとされ、長年平和に暮らしてきた・・・。

 

 

 

私の名は、カイラ・F・フォーン。翡翠(ひすい)という私の祖父の代からやっている店で古美術商をやっている。

世間様からは、変人コレクターと呼ばれているが、わたしには、私のやり方があるのだから、とほぼ開き直りの日々である。

 こんなマイペースなわたしだが、今 夢中になっているものがある。

 割れない不思議な卵という代物だ。

なぜ割れないのか?

投げても割れない、叩いても割れない、不思議な卵である。

 

毎日眺めているうちに、とうとう私は、この不思議な卵の虜になってしまった。

 

そして、この卵の秘密を知るために旅に出ようと、決めた。

 

ちなみに、卵というのだから、どんな代物かというと、大きさは、鶏の卵のおよそ倍くらい、重さは、石を持っているように重い。色は、クリーム地にペールグリーン、ターコイズブルー、カーマインレッドのさざ波模様とさながらイースターエッグのような見た目である。

 

 

 

また、とある研究機関においては、様々な分野の研究者がこの卵の正体がわからず泣いたという伝説のある一品である。

 

わたしは、小さな革の鞄に必要最小限の荷物を入れ、古ぼけた店を簡単に片つけ、店のドアにかかる標識をopenからcloseにした。

 なんとなく私の胸は、これから始まる冒険に少年のようドキドキと心ときめいていた。

 

 

 

  

 

タリスの町にて

 

 

 

わたしは、自分の店から、半刻ほどで着く、タリスの町の中心街を目指して歩いていた。

 

私が住んでいる町タリスには、人族の他にも私の店の由来でもある、水の一族、セイレーン族がいる。

とはいえ、セイレーン族は、翡翠とも呼ばれ、大切にされ、人との混血が進み、本来の魔力は、なく唯一に人族との違いは、泳ぎが上手いのとカクカクとした三角系の耳である。

 

余談だが、密かに私の祖父ロイスもセイレーン族だった。だから、私も必然的にセイレーンに多い白銀の青い髪と碧い目をもっている。しかし、私は、泳ぎがびっくりする程下手で、耳もいたって普通だ。

ここは、先祖の血をひかなかったと半ばあきらめている。

 

 それにしても、今年の夏も暑い!外にちょっと出ただけで、汗が次から次にふきだしてくる。

普段 比較的涼しい店に一日中いるからだろう。

 

ココナッツとライムのさっぱりした ボガンダジュースが飲みたい。

 

ココナッツの甘さをライムがきゅっとしめるあの味。

 

私は、ボガンダジュースを飲みながら、旅に必要な干し肉、干し米、水と塩を得るつもりだった、暑さで思考回路が停止してしまう前に。

駅前に広がる商店街、ここは、とても賑やかだ。肉屋やとれたての野菜、魚が並んでいる。

私は、市場の奥にある、果物屋のアンナ姉さんに声をかける。

「アンナ姉さん、景気は、どうだい?ボガンダジュースを一杯!」

15銅貨ほど手渡ししながら、言う。

アンナ姉さんは、このへんでは、知らない人がいない程、美人できっぷのいい姉御肌の情報通である。

 

 「あんたは、ほんとにボガンダジュース好きだね。塩は、多めがいい?」

ヤシの実を割った入れ物に白くて甘い液体が、なみなみと入っている。

 

「塩は、少しでいいよ。これから旅に出るんだ。ないとはおもうけど、うちの店に用事がある人がいれば・・・。」

 

「はいよ!このアンナ姉さんが面倒みとくよ!必要なら、手紙をおくるよ。旅にでるのは、いいけど、無理をおしでないよ!」

「ありがとう、アンナ姉さん、ちなみにここにある、このごつごつした赤い実は、何?」

「ドラゴンフルーツっていうんだとさ、常連さんにサービスだよ。2つ持っていくといい」

「ありがとう。お言葉に甘えていただくね。ドラゴンなんて変わってるね?彼らは、200年くらい前に絶滅したはずじゃなかったっけ?」

アンナ姉さんは、

にやりと唇の形を変えて笑った。

「男ってものは、いつの時代もロマンを求める生き物なのさ、だから、こんな実でさえ、ドラゴンなんていっちまうんだろうよ。味は、保障するよ・・・!」

「ははっ。・・・ちがいない。ありがと、姉さん!」

 赤い実を2つもらい。

アンナ姉さんと簡単に別れを告げ、旅支度の買い物をするため、雑多な市場へ繰り出した。

 

 干し肉は、ブッチャーさんのところで買おう。安い割に質もよくて美味しい。

 魚よりも肉好きな私だが、しめられた鴨やら、鶏やらがつるされていると見ると何となく、人間の貪欲さが現れているようで、悲しくなる。

 人間の弱肉強食が思い知らされるようで。

 

 

さてそれは、おき、私は、適当に品物を物色しながら、店のまわりをぐるぐるまわっていると、店の主人のブッチャー爺さんの拳骨声が上からふってきた。

 

「よう!翡翠のところの坊主」

はい!ブッチャーさん、暑いですね、今年も!美味しい肉をいつもありがとう!お疲れ様!!」

「なにいってんだ!翡翠の坊やは、ぼけちまったのかい?おススメを買ってもいないじゃないかい?」

「あ!」


この白いぼろぼろのエプロンの頑固な爺さんには、まだ、旅に出ることを告げていなかった。

 彼は、逞しい二の腕と大きな手でドンドンとラム肉の固まりをさばいている。


 わたしは、ちょっと罰が悪そうに静かに、この機嫌の悪そうなおやじに

そっと告げることにした。


「ブッチャーさん、じつは、旅にでて、もう少し世の中をみて回ろうと思うんですよ。」


「・・・・・なにー・・!!おれは、聞いてないぞ!いつもの美味しい鴨肉を買いに来てくれたと思ったのに!」

 

 「いえいえ、それも頂きますが・・・干し肉で、より日持ちするようなよい肉が、旅にほしいんです」

  

「そうなのか?どれくらい留守にするんだ?うちにある干し肉でいいんだな?いろいろあるが・・・おすすめは、ラム肉か、鹿肉だな」

 

「・・・どれくらい留守にするかは、まだわかりませんが、多めにおねがいしたいと・・・・」

 

 「いい、遠慮するな坊や、旅は、ながくなりそうなんだろう?」

 

 にこりとそして、寂しそうに微笑ながら、大きな手で、二つの大きな袋に入った、店で一番高いであろうものをつかみ、わたしにくれた。


 お代を払おうと鞄をみていると。



肉屋の親父は、大きな体をゆらりとゆらして、しみじみと白髪頭をなでながら。


 


「坊やも、そんな年頃なんだな、どうりで、おれも年を取るはずだ・・・お代は、いらないよ・・。ただし、帰ってきたら元気な顔を見せてくれな!!」

 

 

にこりと私は、笑い。勿論ですよ・・と素直に頑固親父の気持ちをもらうことにした。


彼にそっと祝福の風がふきますようにと願い、がしりと肉屋の親父と握手をし、泣きそうな顔で見送る彼に軽く頭を下げ、どっしりと重い袋を受け取り。店を後にした。



 気が付けば、昼をまわっていた。


そろそろ、お昼ご飯だ。知り合いのタータラという変わり者が作る異国料理を食べにいくとしよう。ふう、重いなあ。汗がどっとふきだす。




タリスの丘にて。




市場からさらに町の隅の町の喧騒を抜けた丘の上にその店は、ある。


 タータラは、何でもよく知っていて、私の店にもよく来てくれるのだ。

 香辛料がたっぷり入った野菜と羊肉のスープが食べたい!

 

一度食べたらやみつきなること間違いなしだ。

 

 だから、旅に出る前にもう一度食べておきたいのだ。それと、彼に貸した借りを返してもらおう。


私は、あの味を思い浮かべながら、急ぎ足で私は、店に向うのであった。




あまり綺麗ではない煤けた壁と大きな石釜のある、ちょっと変わったとんがり屋根の店に入る。


 きっと、彼の国の言葉で、いらっしあゃいませと、書いてあるであろう、大きな瓢箪の看板は、なにかくそう、私の店に置いてあったものである。


 ちなみに、まだ代金を徴収していない。そのかわりに、秘密の情報をくれるのだ。


昼時とあって、この町のいろんな職人さん達が、この店の名物スープを美味しそうにはふはふと食べている。

がやがやした店の奥に入っていくと。


「タータラ!久しぶり!・・・ん?」


「・・・ん?翡翠さん!お久しぶり!」


大きな鍋をぐるぐるまわしながら、ちょっと焦った様子で、ちゃきちゃきと少年のような元気な青年が厨房からひょいとでてきて、


「・・・うちの自慢のスープをたべにきたの?」


「そうなんだけど・・・ところで、お隣の美人さんは、どなたかな?」


 「・・・・・・・・・月だ。」

ぼそりと、謎の美女が応える。

「・・ユ・・・エ・?・・・ええと?東の大陸の方の名前かな?」

 よく日焼けしたタータラ青年の隣に、モノクルに黒いベールといった何やらわけありげな美人・・・。


「・・・こちら風に言うならディアナだそうだ・・・」


 「・・・月の女神という意味ですね・・・。」

 

彼女は、見慣れない機械をいじくりながら、ふしぎそうにちろりと、こちらを見て、視線を戻し、再び作業をたんたんとこなしている。


このあたりでは、みかけない顔だ・・・。

「かみさんだよ!・・・と言いたいところだけど、わけがあって、うちでお手伝いしてもらっているんだ。」


 「そうなのか・・・大変だなお前も・・・。ところで、私にも自慢スープをくれないか?」


「はいよ!いつもの!」


「・・・ありがとう!」


スープいりのくりぬいた質素な木の器を受け取り、ぱくりとスープに入っている赤く熟した実を一口食べる。


 うん・・・うまい!!素晴らしい味だ!

ついでにいうと、羊肉もとろりとくずれてスプーンで簡単に食べれてしまう。


 美味しさに顔がほころんでしまいそうな所を、ご自慢のスープをゴクリと食べ、

無理やり小難しそうな顔を作り、タータラ青年に私は、そっときりだした。


 「・・・タータラ、私な・・・!」


 タータラは、にこりと

 「知っていますよ。例のものと一緒に旅に出るんでしょ?」


 「そ、そうなのか・・?流石、早耳だな!」

 




「ははっ!わかりますよ、そりゃあね。カイラさんとは、もう長い付き合いじゃないですか。まだ、旅に足りないものがあるんでしょ?」


 「ははは!それも、ばれていたか。しっかり者だな!タータラは!」


「・・何が足りないんです・・・?」

 

 「・・・塩と干し米と水が欲しい!・・・水が乾かない用に雨陽石なら持っているんだ・・・。」

  ちなみに、雨陽石とは、この地方の各ご家庭でも使われている、沙漠地帯に不可欠な水が乾かないための透明な石だ。常に、湿っている。入れておくと、水が美味しいまま保存できる。
店に余りがあった。
ちょっと高価だが、持っている。水を長持ちさせるために。


はいはい!と厨房の奥から小包二つと水が入っているおおぶりな瓢箪を二つ持ってきて来てくれる。


「ありがたい!わたしは、ほんとにいい友達をもったな!・・・・しかし、なぜ二つずつなんだ・・・?」


「・・・もちろん条件つきですよ!こちらの美人のディアナさんをカイラさんの旅に一緒に連れていってもらいたいんですよ・・・!」


「・・・・・・・・・別に構わないが、危険な旅になるかもしれないし、どうなるかまだ、わからないぞ・・・?」

タータラに小声で告げる。


「・・・かまわない・・」

と、アルトの声でいつのまにか、後ろからして。


振り返ると、旅支度をしているディアナが応える。


「・・・ディアナさんは、失礼ですが、旅の経験は、おありですか?」


「・・・・・・私は、ずっと旅をしてきた一族の末裔だ・・。多少なりとも、旅の知識は、あるつもりだ。それに、おそらくカイラ殿よりも年は、上だと思うが・・・」


「わ!・・・そうなのですか?失礼しました。まさか年上とは、思わなかったですよ!頼もしい方と旅に行けて、幸せです。」


「私もカイラ殿と旅に出れて光栄だ!どんな青年かと思ってみていたが、昔、あなたのおじい様に世話になったことがあってな・・・」

 

「祖父にですか・・?」


「ああ、この左目のモノクルをくださったんだ!とてもあたたかい優しい方だったぞ・・・!」


 「祖父もそんな風に言って下さる方がいて、幸せでしょう・・・!」

 

タータラがコホンと咳をし


「準備満タンですね・・・?・・・御二方・・・!」




私とディアナさんは、タータラ青年から空の神の情報と古い地図をもらい、夜になる頃でかけるのであった。

 


砂漠にて        


 

 町が見えなくなり、砂漠のオアシスをめざして進んでいる。


 夜の砂漠は、静かで美しい。私とディアナさんの足跡が白い砂丘に点々と続いている。


 どれくらい歩いただろうか、ディアナさんがふうと瓢箪に入った水を少し飲んでいる。


 「・・・疲れましたね。・・・休憩しましょうか?」


私は、空の上った月を見ながら、つぶやいた。


 少し疲れたのか、彼女は、そうだねとつぶやき返し、そっと地面から出ているごつごつした岩に座る。


 「・・・月がきれいな夜ですね・・・。この感じだとまだ雨は、降りませんね・・・」

  そっと近くに座る。


 ・・・ふっと、ディアナさんは、笑いながら、自分の生い立ちを話し始めた。


 「・・・・こんな月の日に私は、生まれたんだ・・だから月という意味の名前が私についたのだそうだ。」


 「・・・ええ?そうなんですか?・・・突然ですね。でも、・・・誰しも綺麗な月の日には、ロマンチックになってしまいますね。ディアナさんのお父上もお母上も、そんな感じたんでしょうか・・・?」                              くすりと笑い




 「・・・で、カイラ殿」

 「はい・・・。」

 「貴殿の祖父殿から昔、聞いたんだが、なんでも研究院泣かせの代物があるとか・・?

私は、見たことがないから、わからないんだが、とても貴重なものなんだとか・・・?」


「祖父もおしゃべりですね。どうして例の卵のことを話してしまうのだか・・・?」


 「・・・私の両親も研究院にいてな、そこで、なんでも、貴重なものを研究していたそうだ。それで、もしやと思ってな・・・でも、ある日、その貴重なものがなくなり・・・・・・・・ あとは、察しがつくだろう?」


 「・・・まさか?責任を?」


 「・・・・そのようなものだ。そして、カイラ殿の祖父のパルマ殿が、現れた・・・。

訪ねてきた時、私は、まだ幼くて髭の長いパルマ殿を怒って追い返そうとしたらしい・・。」



「・・・・そうでしたか・・・わかるような気がしますが・・・祖父も私と同じで変わりものですからね・・・」

祖父には、私が思っている以上にたくさんの知り合いがいたのだ。

 生前、穏やかながらも、厳しかったもう一人の祖父。


ディアナさんの前では、ああいったが、我々の業界にとっては、かなり特殊なもので、普段は、絵や彫刻品や宝石を正確に見極め、修理をし、ちりばめられた多くの謎を解かなければならない。


 しかし、時には、世に出ては、ならないものを封印することもしばしばで、古代文明や未来の産物と思われるものを祖父や私は、見てきた。


 わたしも祖父たちに育てられたようなものだ。



両親を早く亡くし、翡翠の店でいろいろ学びながら、いつかは、あの不思議な卵の謎を解きたいと強く願い、今こうして旅をしている。


 様々な人の手に渡りながらも未だに謎に包まれている。



 「・・・それで、祖父は、その時、どんな感じでしたか?」

  

「パルマ殿は、とても優しかったんだが。ああ・・・あれだけはな・・・」

「なんです?」


「・・・ある日ご自慢の長い髭をわたしのいたずらでちょんぎったことを怒って夕食の麺料理に赤い実をいれられて舌を大やけどした覚えがある・。」


 「えっ!?・・・・・ははあ。それは、たぶん誤解なんですよ。こちらの地方では、麺料理は、辛くする習慣があるんですよ。」


「・・・え・?」


「・・・タリス独特の味付けかもしれませんが・・・。そういう、家庭料理なんですよ。・・野菜がたくさん取れるわけでは、ないから、肉なんかを香辛料で、辛めにして、その代わり果物なんかがたくさんとれるから、果物とかでは、いろんな食べ方や飲み方をするんですよ。

・・・・・・たぶん祖父は、ディアナさんと仲直りしたくて、頑張ったつもりだったんですよ・・・。」


「・・・・っ!そんなことだろうと思ってた。あの方がそんなことするわけないからな。だから、疑問だったんだ・・・。」


「そのかわりにその麺料理に、上等な羊肉がはいっていませんでした?」

「・・・確かに入っていた気がする・・・」


「それはね、ディアナさん、祖父からのスペシャルメニューだったんですよ?肉の甘みで赤い実の辛味も今、もし、食べたらお口に、あうのじゃないかな?」


「・・・さては、ディアナさんは、タータラの店にずっといませんでしたか?」


「・・・さてな。」

 

「わかりました。もし今度私の家に来ることがあれば、ご馳走しますよ!」


「それで、例のモノとは?いったいなんなんだと思う?カイラ殿のご意見

も少し聞きたいんだが?わたしにとっては、両親とあなたのおじい様との大切な絆みたいなものなんだ。」


 「・・・そのとおりなんです、実に不思議な卵なんですよ。人と人とをつないでいく。そんな代物だとわたしは、考えてます。」


 「そのとおりだな!・・・」

にやりとディアナさんは、笑った。

                                        

 わたしは、そっと不思議な卵を袋から出して見せる。


「・・・・こ、これが・・? 」


「・・・はい、こうなったんですよ。半分は、子供の時の私の落書きです・・・・」


「どうして落書きなんてしたんだ!?」


「・・・・・カモフラージュだったかもしれません。まるで、どこかのお祭りの時の卵みたいでしょ?」


「・・・・!!」

 今にも怒鳴りだしそうな、ディアナさんをしずかになだめ、

「馬鹿な・・・と言わないでくださいよ。子供なりに大事なものと知っていて、隠すのに

必死だったんですよ。」


「・・・だからってこんな風にしてしまったのか・・・?」


「我ながら、いい作戦だと子供時分に思ったみたいですけどね・・・なんともはや・・」


「これは、いったい何の塗料を使ったんだ?うっすら、光るようだが・・・。」


「・・・・これは、うちにあった、宝石の欠片と糊のようなもので、そっと外側をコーティングしています。」


「ちなみにこれを落とすには・・・?」



「かなり特殊な徐光剤が必要になるかとおもいます・・・」



「ペンネ草とパパラティア草でも落ちないだろうか?」


「・・・・それは、なんですか?」


「私の国の特殊な絵画用の除光剤のようなものだ。」


「あまり強い薬剤だと、卵本体まで、傷つけてしまいませんか・・・?・・・もしやとは、おもいますが・・・」


「心配するな、私の国に行こう!必要な薬剤と必要な設備がととのうはずだ!」


「・・・・しかし、私は、ご覧の通り、セイレーン族の血を引いていますよ?祖父も相当苦労したと聞いています。確か、ディアナさんのお国は、よその旅人の現在取り締まりをしていると聞きましたが?」


「・・・いい手がある・・・・」


「・・・変装ですか?」


「・・女装だ・・・」


「・・・・・・・ぶっ!!!」


「・・・・というのは、冗談で、偽装結婚というのが、手っ取り早い」


「・・・ななんと!!」


「・・・・幸いにも我々は、年が近く、しかも、相手は、パルマ殿のお孫さんだ。

私には、とてもいい条件だ。周りにも説明しやすい。」


「・・・・・・・・・あの・・・ディアナさん?怒ってません?卵の件でものすごく・・」


「・・・・・・・少しな・・・・!!!」


「うはーー!聞いてはいましたが、女性を怒らすとこんなめに!!」


「・・・女装決定だな!」



「・・・・・わかりました・・・・!・・・と、ところで聞くのも 失礼かもしれませんが、ディアナさんお腹すきませんか・・・?」


 「・・・・・・すいたような・・・・」


 「・・・わたしが、何か、おいしいものを作りますよ・・・」


にこっとするディアナさん。






 












(機械の町 キャスロック)

      


暑い、沙漠を越え、ごつごつとした岩の多い地域までやってきた。


 何やらぶつぶつともめている最中の女性とみえる、二人が、機械文明の町の入口を歩いている。

一人は、黒いベールにモノクルのディアナともう一人は、女装のカイラである。

 

 ディアナは、ともかく、カイラの女装は、多少不気味なはずだが、ディアナのセンスのよさで、なんとなく似合っている・・・・。

 

 しかし、当の本人は、先ほど出会った盗賊のせいと、町行く取締官と見える人とすれ違うたびに冷や汗が、たらりたらり、と、たらして、冷静さが、多少欠けている。



小声で

「・・・・この町は、皆、こんな、衣装なんですか?女性の衣装は、本当にきれいですねー・・・しかし、わたしまで、こういう感じですか・・・。」

 

「・・・けっこう似合っているな、男なのに。」


 「・・・・ひっ・・・!」




町について、早々にディアナは、昔からの馴染みという衣装屋に行き、グレーのあまり飾り気のないシンプルなサラサラとした長く巻くタイプの衣装とブルーの小さな飾りのあるつやつやとした光沢のある長い巻くタイプの衣装を買ってきた。

 

 当然、わたしは、シンプルなグレーと思いきや、ディアナさんの今まで見たこともない笑顔と共に、ブルーの衣装を着付けられてしまった。

とほほである。


「・・・・ここ・・・これは、似合うといっても、私は、背がありますし。」

 我ながら、初の女装にどぎまぎして、冷汗がたらたらと出てくる。


「自信を持て、背が高いのは、私も同じだ。」

 

 「・・・・もし、これが、町の非常時なら、鎧をつけ、衣装を着るんだぞ。」


 「・・・!女性でもですか・・・」

 

 「当たり前だ!50年くらい前、先王が亡き後、この町も荒れ放題だった。

鎧を着けない日なんかないくらい、諍いが起こったと聞いている。現王は、王立研究院から、輩出された、エリートだと聞いている・・・。」


この町の象徴のグリフォンの銅像を横目に、ディアナは、静かに、右手のアンクレッツトの裏を見せる。


「・・・・これは、もしや・・グリフォン!?」



「私も王族の一員として、この印を持たされているわけだ。」


「・・・大変失礼な質問ですが、この印は、王族の方々だけですか?」


 

「基本的には、そうだが・・・。武功を立てたり、名誉な証として、授与されることもある。」


「・・・・・・・!」


 私には、この印に覚えがあった。祖父の残した遺品の指輪に同じ印があったのだ。


「・・・祖父のパルマ殿は、名誉の証として、現王から、授与されているはずだ。それが、幸か不幸かは、何となくしか、私には、わからないが・・・。」


「・・・・・・・!・・・そうですね・・・祖父にとっては・・・どうだったんでしょうね・・・?」





 

「・・・・・・!!!!ディアナさん!!!」

 

「・・・・やはりだ・・。」


「つけられていますよ・・・!町からいったん出ましょう・・・!」


 「すんなり通してくれるはずがないか・・・」

 ふっと笑うディアナさん。


「戦いは、ごめんです!!・・・!」


「・・・なに・・・?」


「・・・今は、目立つことは、避けるべきです。」


「せえの・・・・!!」


ひゅるるるー!

どかんー!!!と小気味のいい音をたてて、煙玉が破裂する!



「・・・おいおい・・・!」


「さっさとと逃げますよ!・・・煙も一種の幻覚なんです。音は、当地者とくらっている本人しか、わかりません。私が、キノコから作りました。」


「・・・お・・おう・・」


ぼやぼやしないでと、風下に一目散に逃げる・・・ディアナさんの手を引いて。


走るに走る!! 


 我ながら、逃げ足は、早い!



「・・・ふうふう・・・ちょっと最近、運動不足かだったかな?衣装が絡んで・・・・」


「・・・・とんでもないよ、人には、お見せできない淑女ぶりだったぞ・・・驚いた・・・足が見かけよりも早いのな・・・」


「ディアナさんもこんなに長い衣装着ているのに、よく走れますね・・・!・・・そちらの方が驚きです・・!ここまでくれば、安全かな・・・。・・・当面は、キャスロックを避けて、祖父の知り合いを訪ねましょう。少し遠いですが・・・面白い人です。きっと、力になってくれますよ」



「わかった。この衣装を着ていると足がつく・・・。」


「・・・仕方ないです・・古着商にも私は、知り合いがいますから、この袋に入れて、置いておけば、とりに来るでしょう。その前に少しで進んでおきましょう。せっかくディアナさんに選んでもらったのに・・・申し訳ないですが・・・」


「・・・で、我々は、これからどこに向かうんだ?」


「・・・沙漠をよこぎり、水を節約しながら、ワラルという町を目指します。・・・・祖父の知り合いは、その町にいます。








ワラルの町にて。





 カイラ青年とディアナは、“ワラル通称‘



ギャングの町に来た。





「・・・・すごいところだな・・・。



ここに本当に知り合いが、いるのか?」



「いますよ?」



「・・・・・あ!なんか飛んできた!」


「さっそくのお迎えです。」



「・・・・!!!」

ひゅるるるるる!ドカーン!


大きな花火が上がり昼間の空に歓迎DEAR!と



「・・・・・・DEARって?」



「相変わらず派手だな!・・・ははは!」



安心してください・・・歓迎されていますよ


我々は・・・」



・・・?



不思議そうな顔をするディアナさんを制し、



笑顔で、案内を待とうとするカイラ青年を少し、見直した。



「郷に入っては郷に従えですよ。」



・・・・・・!



遠くから、轟音をたてて、大きな機械の船の乗りものと、馬のようなのりものが、近づいてくる。


「なんだ!?」






反射的にディアナが身構える。




大丈夫ですよ。味方です。飛竜号です!」



「・・・え?」




「えーと?船の名前。」

  




 機械の船の中から護衛らしきもの達と共に





派手だが、上品な70代くらいの薄いピンクの


お召し物と白い宝石のネックレスが印象の



ご婦人が、にっこりと手を振りながら。



「おお!可愛い私の孫よ!!」



「久しぶりです!おばあちゃん!」



「おお・・!?おばあちゃん!?」


「言っていませんでしたっけ?」



「何を?」



「ワラルの町のボスは、わたしの祖母のミラですよ?って。」


 

「聞いていないぞ?」



「今、言いました」



ペロリと舌をだした。


・・・・・・!



「さすがだな!だがな・・・あまり、私のような短気には、最初に言っておけ・・・」





「うう・・・!すみません!」



「もしかして、もう、私の孫は、尻にしかれているのかしら?}




ディアナは、正式な砂漠地方の王族の挨拶をした。




 

 初めまして!おばあさま!カイラ殿と


旅をしております。ディアーナでございます。」


丁寧に手でも、挨拶の形にする。



 「ええ、お目にかかるのは、初めてですわね。


パルマ殿の教え子で、キャスロックの姫君ね。


 「二人のお式は、いつかしら?」


 「!!!おばあちゃん!!やめてよ。恥かしいでしょ?



貴方の孫は、正式な手続きで式をあげますよ」





「まあ!素敵!!」



「でも、物事は、順番があると思いますし、わたし自身未熟者ですので、、、。もうちょっと、学んでいたい。」

「Oh!dear!」

二人は、この先どうなるのか?

不思議な卵は、どうなるのか?

旅は、続く。




続く。

お読みいただきありがとうございます。

雪見の兎のずっと前からかいていた作品になります。

どうぞよろしくお願い致します。

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