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赤灯えれじい〜ボクの過ぎ去りし関西daysに想いを寄せて。

ヤンマガを買ったことがない。もう一回言います。
ボクはヤングマガジンを買ったことがない。ほんとにほんとに一度たりとも買ったことがないのだ。

とはいえヤンジャン買うたことないかっつうと創刊号を買い(当時小学4年生)掲載されてた「長男の時代」(小池一夫/川崎のぼる)と「花平バズーガー」が親的に問題視され即刻捨てられた。そのトラウマで裕木奈江や広末涼子に篠原麻里子がグラビアを飾る号ぐらいまでまともに買ったことないんですけどね。まあマンガの趣味嗜好として小学館/ビッグコミックスピリッツ系が好きだったってのはあります。自分との親和性もふくめて。

ボクにとって講談社といえばモーニング。かわぐちかいじなら「アクター」推しだしボクのライフワーク「クッキングパパ」は連載始まった頃からのヘビロなわけだし今でも読むもんね。だけど少年マガジンは大学時代の友人、村上が購読していたのでキバヤシ率いるマガジン編集部が世界のミステリーに挑むMMRシリーズやむつ利之の「Dr.ノグチ」を読んでたぐらい。「はじめの一歩」はマンガ喫茶で(特に三茶のガリレオ)読んだぐらいか。それぐらい縁遠い。古谷実は単行本で買ってたしね。あ。小林まことの「マガジン青春譜」は買いました。「BOYS BE・・」は村上の家でぱらぱらめくった程度。「ミスター味っ子」も「スーパー食いしん坊」も立ち読みで済ませてたな。ほんとそれぐらい。

ヤンマガといえばボクの世代としては「BE-BOP HIGH SCHOOL」ですよね。中3のとき同じクラスだった大槻くんはこのマンガの大ファンだった。大槻くんは卒業後、地元の野球の名門校へ進学するも退学。同窓会のとき会ったっきりだが金のネックレスをチラ見せしながら「この前ね、テレビで「美味しんぼ」見てたらね、かつおにマヨネーズつけて食べてたんだよね。ほんとにうまいんだから試してみなっせ」(福島弁)でまくしたてていた。大槻くんは高校退学後、あっという間に裏社会への道を一直線。今は音信不通なのでどうなったかは知らない。今でもかつおの刺身にマヨネーズなのかな。中学の卒業式の前日、盗んだ車で国道を逆走して捕まった小林くん、その車に同乗してた安斎くんは今どうしてるんだろう。彼らはいつも休み時間、校舎裏でヤンキー座りしながら喫煙、片手に「BE-BOP HIGH SCHOOL」。典型的な地方ヤンキーの生態っぽくて、その光景が真っ先に思い浮かぶからボクはヤンマガから距離を置いてたのかもしれない。大槻くんも小林くんも安斎くんも、いい奴らだったんですけどね。修学旅行で東京に行った時、彼らはホテルの部屋で喫煙を見つかり翌日のNHK見学に連れていってもらえなかった。NHK放送センターに行ったらおそらくなんかの番組のゲスト出演があったのだろう。シブがき隊の本木雅弘がいたっけ。NHKから原宿竹下通りへ移動した瞬間、豪雨に見舞われ竹下通り見学は中止。女子は悔しくて泣いていた。バスの中で自粛していたヤンキーチームのリーダー、大槻くんはカラオケで「涙のリクエスト」を歌ってたっけ。ああ、ヤンキー雨模様なり。そんな光景が当たり前のようにそばにあったからわざわざヤンマガを買ってまでヤンクな気持ちにならずともってのはあったかもしれないですね。はあ。

その後中学卒業後もボクの交友関係でのヤンマガ購読率は異常に低かった。なので未読作品が多いんだが単行本で揃えている数少ないヤンマガ作品「赤灯えれじい」は好きだったんですよね。2004年から約4年間ヤングマガジンで連載されてたこの作品、なんてことのない関西人カップルの話。なんてことなさすぎて実に描写がリアルなんですよね。高校卒業後さしたる目標もないフリーターの男(さえない)サトシと金髪ヤンキーガール、チーコの同棲物語。ガードマンのバイトをしながらなので金はない。ヤンキーガール、チーコの実家は小さな工場経営しているけど儲かってないので金はない。おとんは他の女を作って借金残して逃亡。そんな環境でもチーコは強く生きてきた。喧嘩っぱやくサトシはしょっちゅうボコられる。そんな2人の生活はコンビニのおでんを床に直置きして白飯で夕食とかスーパーの安売り惣菜をおかずにしてとか「たまには美味しいもん食べにいこうや」と王将行く様とかイイんですよ。そんなもんじゃないですか?20代赤貧カップルなんて。チーコの元彼が刑務所から出所してのどたばたとか、ちょっとした作中の間の作り方とか新喜劇っぽい匂いもあり少しでも関西に住んだことがある人間にとってはたまらない。

ボクは学生時代から京都に住んでたし卒業後配属が大阪心斎橋だったけれども京都離脱が嫌で京阪電鉄の淀駅に住んでいた。その後寝屋川。そこから先、つまり大阪寄りへとぐっと距離を縮めるのが嫌だったのだ。ちなみに京阪沿線にこだわった理由は当時京阪CMを担当してたのが渡辺満里奈だったからだ。ここでも満里奈。でも大事。電車の雰囲気としては圧倒的に阪急のほうが好きだったんだが仕方ないじゃないですか。淀屋橋で乗り換えて御堂筋線。会社の近くには東京進出前のかむくらや金龍ラーメンがあり、甲賀流たこやきは徒歩圏内。勤務したての頃はまだステップビルにWAVE心斎橋店があったし、少し歩けばタワーレコード。駅直結ビルにはHMV。渋谷宇田川町とまでは行かずともそれなりにレコ屋があったエリアだったし終電逃して朝まで営業してるクラブで時間をつぶし金龍ラーメンで腹ごしらえ。心斎橋近くの銭湯でひとっ風呂浴びて自宅に帰るなんてのもよくやってた。今じゃ絶対ムリ。

ボクはチーコのようなヤンキーガールと残念ながら知り合ったことはないが、サトシの同僚、久保ちゃんとか関西の女の子の描写が実に見事なんですよね。ランチにお好み焼き定食は当たり前やん、今日は金曜やし串揚げでも食べいこかと安くて美味しいものに目がない関西ガールズ。関西弁ってだけでポイント高しなんですけど「赤灯えれじぃ」はとっくに過ぎ去ってしまった遠い自分の20代の日々を思い起こさせてくれる作品なんですよね。時々サニーデイ・サービスやフィッシュマンズを聞いてぐっとくる気持ちに近いかもしれない。そんなボクは懐古主義者と呼ばれるのかもしれないけどそれもあり。ちなみにWAVE心斎橋の閉店セールでボクはフィッシュマンズとラブタンバリンズのCDを買ったんだっけ。その帰り道、飯でも食おうとぷらぷらしてたらヒックスヴィルの木暮晋也さんが信号待ちしていたのを見かけたんだった。嗚呼、懐かしき90`s。

作者きらたかしの作品は「ハイポジ」や「ケッチン」も好きだけど最新作「没イチ」、これが久々に胸熱なんですよね。突然妻を亡くした中年男の話ってのもヤンマガ世代にとってみればけっしてあり得ない話じゃないし、同じくボツイチな年下の美人の存在も含めてさてどう転がっていくのか楽しみだったりする。単行本はまだ1巻だけ。イブニング連載だし発刊ペースも間が空くんだろうなあ。

そういえば先日ヤンマガのアニバーサリー企画かなんかでその後の「赤灯〜」読み切りで掲載されてたとか。ボクはウェブで読んだけどサトシが在宅主夫、チーコはバリバリ稼ぐ長距離トラックのドライバーでそれなりに年輪重ねたルックスに安心しつつも少しだけ寂しくなったなあ。子供は女の子がひとり。住んでる家もローン組んで購入したんだろうか。とにかく赤貧カップルではなかったし、年1回でもいいから現在進行形のサトシとチーコは読んでたいなって思った。寅さんじゃないけど不定期で続いてるマンガがあったっていいじゃないの。サニーデイだって解散して復活して今も続いている。フィッシュマンズだって佐藤伸治はいないけどバンドは不定期で続いている。解散した後「DANCE TO YOU」なんて名作ALBUM作っちゃうバンドもいるんだし。「赤灯2021」はありだと思うんですよね、年4回、季節ごとの発表とかでも。単行本は1冊を年1発表ペースで。きら先生、どうでしょ?きっと同じこと思ってる読者はけっこういると思いますよ!

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