散文詩 セラフィー(2011年)

 セラフィー、産み落とされたその土地の空は、銀灰色のつづれ織りみたいに、海峡の光にひどくためらっていたから、なめらかな石の手触りみたいに透明なリボンをつけて、口紅よりも赤い体をした少女は、白い蕾を実らせている寒椿の瑞枝みたいにそこに立っている。寝ても醒めても同じ聖女の歌声ばかりが、天の高みに昇って行く、彼女は翡翠色にそめられた芙蓉の花のように、思いの片腕に黒くまとわりついて、夕映えの光に溶け込むように紺色の蕾を咲かせている。刻まれていく時間は花占いに使われたせいで、散り敷かれていく芍薬の花びらのようになまめかしかった。あたかも暗闇に点滅する血のように赤い橙色みたいに。きみは天上からきた使者たちの羽織っている白亜のトーガを織り成している、星の光の絹糸を盗んで、意識という名のひとくちの呼吸から、棘のように透き通っている、黎明の記憶だけ抜き取って、新しい季節に贈ろうと思った。次から次に、昼顔の蕾が花咲いていくように、瑞々しい色をした琥珀たちが、目の醒めるようなきらめきを見せびらかしていく。それは自由になった天使たちの透き通った氷菓子みたいに、笑顔の端から零れ落ちる。

(2011年)

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?