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条件・お断り・めぐり合わせ-猫と暮らして(3)

某年の春。数年ぶりに引越しをした。引越し先は猫が飼えるアパート。猫が歩きやすい床、猫の爪とぎに耐える壁紙など、猫が生きやすい作りになった建物を選んだ。わたしは猫を飼う決心をつけたのだ。

改めて「ペットのおうち」を検索した。
私がこだわった条件は、「兄弟/姉妹・二匹・雑種」だった。

私は日中は家にいない。一匹だと寂しい思いをさせてしまうだろう。
ある友人は2匹の兄妹猫と暮らしている。
「性格にもよるが、2匹だと寂しくないみたい。血がつながっていて生まれたときから一緒に暮らした猫だと喧嘩も起きにくい」
そんな友人の言葉から、私も兄弟(姉妹)猫を二匹引き取ろうと考えたのだった。※ちなみに猫の種類などのこだわりはなかった。

しかし、思った以上に事がうまく進まなかった。
調べると、上のような条件の猫はいくつかヒットする。しかし、こちら側(引き取り側)の条件が合わない、というケースがほとんどだった。
猫を譲り受ける者の年収、生活スタイル(独身か夫婦か子持ちか)、年齢、猫を飼った経験などを厳しい目で見られるのだ。例えば、昼に家を空ける者は仔猫を引き取ることができない。仔猫は病気になりがちで、もしもの時に素早い対応ができないといけないのだ。


審査が厳しいのは猫のことを真剣に考える運営者や紹介者の思いの賜物なのだろうと今は思う。

私は「これは!」と思う猫(の紹介者)にメッセージを沢山送った。しかしことごとく断られた。特に条件が良い猫は競争相手が多い。別の方に譲ったということが数回繰り返された。
「すぐに猫と暮らすのは無理なんだろうな」と半分諦めかけており、長期戦を視野に入れていた。「せっかく猫が暮らしやすいアパートに越したのに……」とすねもした。

だが、そういうときによいめぐり合わせが訪れるものだ。

「猫を早急に引き取って欲しい。黒猫と茶が混じった白猫。1匹ずつでもよいが、できれば兄弟仲がよいので2匹一緒が好ましい」
というコメントが書く依頼者を私は見つけた。
こんな好条件はない。
多分他の希望者も多いだろう。
善は急げ。私はすぐに「引き取りたい。できれば二匹引き取らせてほしい」というメッセージを送った。
するとすぐに依頼者から「それは有り難い。早ければ早い方がいい」という返事があった。
断られ続けていた私は、早急な展開に嬉しい以上に戸惑いを感じた。
しかし、これ以上のいい話が舞い込むことはない。そうも思った。

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