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猫の価値・人の都合・引っ越し-猫と暮らして(2)

「どうして猫を飼おうと思ったの?」と聞かれることがある。

猫と暮らすのが子供の頃からの夢、だったわけではない。猫の扱われ方に対する憤りと同情と責任感。それが綯交ぜになり、いつしか飼うことを決心した。簡単に言うとそういうことだ。

ある日ふと興味本位で動物の値段を調べてみた。亀や金魚のように安い動物もいれば、希少動物だと車の値段に匹敵するものもいる。
代表的なペットである猫も値段の上下が大きいなと感じた。

猫の「価値」は様々だ。店頭で数十万で売られている猫がいる。そうかと思えば、路上で値札のついていない猫がいる。猫の価値は人間が勝手につける。その値打ちで彼らの運命は大きく変わってしまうこともあるだろう。

もとより、私はお金で猫を買うことに抵抗を感じていた。どうせ飼うならば困っている方から猫を頂戴する里親制度のようなものを利用したほうがよいのでは、とも考えていた。

検索した結果、「ペットのおうち」というサイトにたどり着いた。サイトには様々な立場の猫がいた。捨て猫を救済する団体に保護された猫。路上で拾って一時的に家に住まわせているが誰かに引き取ってもらいたい人。多頭飼い崩壊現場からのSOS。

すべての事情に同情していたらきりがない。しかし、大変な事情を抱える猫が沢山いることを知ると、「何とかならんもんか」「何かできることはないのか」と思うのが人情だろう。

だいたい猫の問題の多くは人間の都合から生まれる。ライフスタイルが変わって猫のせいで生活が乱れてしまう、経済的理由で飼えなくなった、猫を飼い過ぎてしまって自分の飯代もままならない……。

私は同じ人間として感じなくてもいいかもしれない責任を感じてしまった。
そして、少しずつ、猫を飼うという選択肢が頭の中で大きくなった。

某年の春。数年ぶりに引越しをした。引越し先は猫が飼えるアパート。猫が歩きやすい床、猫の爪とぎに耐える壁紙など、猫が生きやすい作りになった建物を選んだ。わたしは猫を飼う決心をつけたのだ。


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