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繊細な、猫の「食」-猫と暮らして(7)

ただ餌を与えるわけではなくて

「衣食住」は生きるための三大要素である。言い古された表現だが、生活の根幹を探ると、確かにこの3つにたどり着く。

猫には「衣」はない。代わりに「毛」がある。
家猫には「住」があるが、野良猫にはない。
いろいろ考えると、猫も人も等しく必要なものは「食」ということになる。

猫を飼う前後、猫の食事について本を読んだりウェブで検索をしたりした。調べると誤解が多いと分かる。

ご飯に味噌汁をぶっかけたものを「猫まんま」というが、あれを猫に与えるのはNGらしい。
昔の漫画で、魚を盗む猫を「泥棒猫!」と言って追いかけるシーンが出てくるが、生魚も体に良くない。他にもネギ、チョコなどもご法度。とにかく猫の食事は繊細だ。

水分補給にも気を遣う。元来腎臓が弱い生き物だから、腎臓の負担になるものや尿の結晶ができやすいものは駄目。ミネラルウォーターだと文字通りミネラルが結晶のもとになるため、避けたい。飲水は水道水が最適なのである。

キャットフードはよくできている

猫にはキャットフードがベストなのだという。異論はあるだろうが、猫の特性にあったものが作られている。
もちろん、キャットフードにも質の低いもの高いものがある。判断方法の一つが内容物だ。袋の裏に成分表があるが、この表は内容量が多いものから順に書かれるのが原則である。一番最初に書かれているもの、つまり一番多く含まれているもので、まず餌の質が分かる。
質の低い餌は、穀物の量が多い。猫は穀物を食べても栄養にならない。食べた気になるが、意味がない。
質の高い餌は、肉(牛・鶏・魚)がメインである。肉食の猫はタンパク質を欲する。

当然、質が高ければ値段も高い。猫に高い餌を与えて、人間が「メザシと白米」になってしまったら、お笑い草だ。
経済性と合理性。このバランスを考えなければいけないのが庶民の辛いところである。

我が家の猫の場合

クロは結晶ができやすい体質である。シロの方は、結晶は大丈夫なのだが、やや太りやすく、糖尿になりやすいかもと言われている。致命的な特徴ではないけれど、配慮が必要なのだ。

特にクロは、飼い始めて最初の年、新しい環境によるストレスから結晶の数値が上がったことがある。お医者に相談して、勧められて餌にしてみたら数値が落ち着いた。それはいいことなのだが、餌の味もよく、シロがガブガブ食べだして、そのせいで体重が増えてしまった。シロには別の餌を用意して、増量を阻止しようとしたが、一度美味しいものに慣れると、過去の餌に見向きしなくなるのが猫である。しかたなく、量を調整することで肥満ギリギリ手前で体重をキープしている。
※ちなみに猫は犬と違って運動量が少ない。一度太るとダイエットはかなり難しい。

二匹とはいえ、多頭飼い。それぞれの事情と好みを考慮して餌を考えなければいけないのだ。

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いつもきれいな器が好ましい

餌はガラスのボールに入れている。猫の舌はザラザラしている。舐めてくることがあるが、痛い。ずっと舐められたら肉が削り取られだろう。よく見ると舌の表面のザラザラは「返し」がついている。人間の舌と違い、何かを舐めるだけではなく、「取る」「削る」機能があると考えた方がいい。
そんな舌でプラスチック製のボールを舐めていたら、表面に傷がついてしまう。細菌の温床になるに違いない。

ガラスのボールはセリアで買った。口の広さも深さもちょうどいい。2匹とも不都合なくボールに入った餌を食べている。

量をめぐる攻防

猫はよく吐く。
うちのシロは特にその傾向が強く、下手すると1日に何度も吐く。初めのうちの大変心配して、医者に相談をしたのだが体の不調はないらしい。その後よくよく観察すると一度の餌の量が多い時に吐くことが分かった。どうやら大量の餌を考えなしに早食いすることが原因らしく、一度の量を減らして餌を与えたところ、吐くことが激減した。
シロは欲深いのだ。

ところが、新しい問題が生まれた。一度の量を減らせば与える回数は増える。夜中もお腹が空くようで4-6時頃何度もわたしを起こすのである。起こし方が猫らしく、アゴをザラザラした舌で強く何度も舐めてくる。かなり痛い。これがなかなかしんどくて、初めのうちはストレスで、どうにか起こされないようにアゴにメンソレータムを塗ったり、布団の中に潜り込んだり、顔をタオルで包んだりしてしたが無理だった。
シロはしつこい。
要求が通るまで諦めない不屈の猫なのだ。結局、すぐに起きてすぐに寝たほうが効率的と考えて、渋々起きるようになった。
だいぶ慣れたが今でも辛い。

一定のリズムで与える、あえてリズムを変える

一緒に住んで数年経ち、餌をどのように与えるか、量や種類やタイミングがつかめた。
量は少量ずつにする。
夕方にウェットなものを、夜にドライなものを与える。就寝前の11時から12時のタイミングでボールにドライを入れて寝る。朝方に叩き起こされたら、猫奴隷らしくさっさと起きて、用意させていただく……。

猫は変化を好まない。同じリズムで毎日が過ぎることが幸福のようだ。
しかし、それだけだとボケるとも聞く。
時々、餌の種類を変えたり餌の置き場を移動させたりする。水道水を流したままにしておくと、シロは流水を好んで飲む。

単調と変化の刺激。これを意識しながら、猫と暮らしている。

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