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動詞に憑かれたひと⑨:ポール・ヴァレリー

多岐にわたる旺盛な著作活動によってフランス第三共和政を代表する知性。詩人、小説家、評論家という肩書だけでは彼を語りきれない。なぜならば、つづく動詞が彼自身を決定するのだから。つまり、動詞さえ変えれば何にだってなれる。哲学者だって、科学者だって、芸術家だって。彼の生み出した言葉。昔も今もよく引用されていることからもその偉大さがわかる。厳密さは彼の代名詞。物事を理解するときも創作するときも大切にしていた。彼はこうも言っている。「動詞は諸言語の不思議である。それは魂(アニマ)を与える。動詞は、自然のただなかに、事物-語および感覚-語のただなかに、個人を置く」。動詞のもつこうした身体を要求する性質、言語の起源のようなものに気づいていたからこそ、言葉を、代名詞を、動詞を吟味したうえで、その有機的な集合としての詩や文章に結実させていけたのだろう。「文は動詞がつくるものである」と主語性を否定するほどの動詞フェチなのだ。

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