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【再掲】ハーバードとMITの交差点

10年前、とてもチャーミングな女性に出会った。彼女の名前は北川智子さん。若き日本人女性の斬新な講義にハーバードが熱狂した!彼女の著書「ハーバード白熱日本史教室」(新潮新書)を読んで、完璧に一目ぼれしてしまった。本の中身はあとで読む方の邪魔になると思い、僕の一目ぼれした訳を皆さんに伝えたい。

さて、これもこの本との出会いの1週間以内の出来事だったが、MITメディアラボの所長・伊藤穣一さんのブログで、「イノベーションの民主化」とその破壊的変化にしなやかに対応するための9つの原則、という記事を発見した。「9つの原則」という風なフレーズに弱い僕は思わずシェア。内容がイマイチ(失礼!)だったので再利用することを思いつく。

「そうだ!ハーバードの北川さんとMITの伊藤さんを対話させてみよう」

すみません。根が乱暴モノなので、お二人に何の断りもなく、交わりを探ってみた。

すると「なんてことでしょう!」

恐らく面識のないお二人が見事にシンクロしたではないですか。前置きが長くなったのでそろそろ本題に突入。

先ずはじめに「東方」のMIT、伊藤穣一さんの「イノベーションの民主化」とその破壊的変化にしなやかに対応するための9つの原則を紹介する。

1.強さではなくしなやかさを持つこと。
2.「押す」のではなく「引く」こと。
3.安全に焦点を当てるのではなく、リスクを取ること。
4.モノではなく、システムに焦点を合わせること。
5.地図ではなく、よいコンパスを持つこと。
6.理論ではなく、実践に基づくこと。
7.服従ではなく、反抗すること。
8.専門家ではなく、クラウド(人々)に向かうこと。
9.教育ではなく、学習に焦点を当てること。

詳細はコチラ→http://wired.jp/2012/06/14/resiliency-risk-and-a-good-compass-how-to-survive-the-coming-chaos/

そして次に「西方」のハーバード、北川智子さんの書籍から読み取れた僕の所感を9つの原則に準えてみる。

1.強さではなくしなやかさを持つこと。

彼女は、それまでの男性を中心とした「サムライ論」に抵抗するのではなく、違和感を認め、受け入れた上で、そこから跳ね上がっていった。正反合という弁証法的なアプローチ。

2.「押す」のではなく「引く」こと。 

「どのような課題をどのタイミングで授業に組み込むか、その準備で99%は決まる」受け持ちの授業の人気の秘訣を聞かれこう答えている。問題を押し付けるのではなく、その問題に引き込む。

 
3.安全に焦点を当てるのではなく、リスクを取ること。

5つのハンデ。女性である、年齢が若い、アジア人、英語が母国語でない、テニュア(終身在職権:権威の象徴)を認識した上で、その内の前3つを逆手に取った。ちなみに、5つのハンデのない存在としてマイケル・サンデルを挙げている。

 
4.モノではなく、システムに焦点を合わせること。

研究者には2つのタイプ(鳥とカエル)がある。彼女は前者で、高い視点から物事を描き出す。例えに、モネの絵を用いてこう言う。「私は、彼の絵のように、全体のインプレッションにこだわった印象派歴史叙述を目指している」と。

 
5.地図ではなく、よいコンパスを持つこと。 

まさに彼女自身がコンパス的存在。生徒ひとりひとりの個性を見つめ、未来を展望している。ご自身のよいコンパスは、3つの趣味だろう。ピアノ、お絵かき、スケートが仕事に生かされているとは誰も気づかない。

6.理論ではなく、実践に基づくこと。

物事が機能するための原理は数学的に導き出しているのではないか(彼女はなんと数学と生命科学の学士)。それを現場で実践し、仮説検証を繰り返す。まさに、科学における実験的アプローチ。

7.服従ではなく、反抗すること。

前述した通り、反抗心がなければ男性と女性の交わりである「レディ・サムライ論」は生まれなかった。ただ、そのこと以外はとても柔軟で、流れに身を任す人生を送っているように思えるから不思議。

 
8.専門家ではなく、クラウド(人々)に向かうこと。

恐らく、学会よりもクラス、さらに言えば社会に向かうようになりつつある。この書籍をこのタイミングで出版されたことがそう物語っている。また、「日本史の外交官的役割」と自分のミッションを語る。

 
9.教育ではなく、学習に焦点を当てること。

とても共感できる点。楽しく学ぶ、学ぶことが楽しい。そんな世界観をお互い持っているから。

さぁ、いかがですか?もちろん、僕が北川智子さんに惚れた訳について。

学ぶこと、遊ぶこと、働くこと。

この3つの動詞が交差している彼女はとても輝いてます!歴史は、良くも悪くも、時代を区切る学問だと思う。彼女の自分史も2004年以降、つまりここ8年の叙述に過ぎない。僕の今一番の願望は、さらに時代をさかのぼり、その前の8年間の彼女を知りたい。

それぐらい惚れている訳なんだな、これが!

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