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【連載小説】堕肉の果て ~令和に奏でる創造の序曲(プレリュード)~

あらすじ・目次 


第三部 六章

リベルタドーレス ~解放者たち~

1070.刎頚の友


 揃って魔力回避の為に汲々とし押し潰される事を待つだけとなったスリーマンセルが一箇所に集まった所で有効な手など打てる訳など無い、その事が判った上でレイブは思う。

――――ぐるぐる、で、でも…… ぐるぐるぐる

 蹲って後頭部を守るように丸まりながら、レイブの意識は様々な場面を思い出していた。
 初めてモンスターを狩りに出かけた時、アル・マハラージと勘違いして遭遇したジャッカロープに殺されかけた事、バストロやヴノ、ジグエラと別れた後、隠れ潜んだ岩山の岩窟を襲撃してきた漆黒の襲撃者によって死を覚悟した事、キャス・パリーグによって助け出された後、雑務小屋で不安に押し潰されそうになった夜、無垢の魔力を失って魔術師、闘竜、獣奴としての未来が消え去ってしまった日…… 全ての時を寄り添い合って共に過ごしてきたのはペトラとギレスラ、スリーマンセルだった事を、今更ながら思い出したのである。

――――ペトラ! ギレスラ! 今行くぞ! ぐる!

 合流して何が出来る訳でもない、かと言ってセンチメンタルな気持ちと言うのでもない、思いが過去の出来事に至った瞬間、あらゆる打算や目論見を度外視した所で、只、共に在ることを選択したレイブはスリーマンセルの相方に向けて自由を奪われた体を動かし始めるのであった。

 惜しむらくは、レイブを真ん中にして丁度同じ位の距離に正対しているギレスラとペトラのどちらか一方に寄る訳にも行かず、その場でクルクル回転すると言う、非常に不毛でくたびれ損の行動しか出来なかった事であろう、色々な意味で残念であった。
 無意味で無駄に体力を浪費していたレイブの元に、先に辿り着いたのはペトラである。

 レイブから見て左側のモンスターの亡骸を押しのけて、見慣れた豚猪の黒い鼻先が現れたのだ。
荒い呼吸と共にヌルリとした生暖かい液体が飛沫を飛ばしている。
 内臓に傷でも負ったのか血は止まる事無くレイブの顔を濡らして行った。

 直後、レイブの右側から二本の螺旋状の尖角が姿を見せ、その下の地面を抉るようにして赤い竜の頭が姿を見せる、ギレスラだ。
 両目をきつく閉ざし頭部の厚鱗の殆どが剥げ落ちてしまっている。

 双方とも一目で判る瀕死であった。

「ペトラ、ギレスラ、死ぬのは一緒だ! 共に逝こうっ!」

 レイブは後頭部を守っていた腕を回し、血塗れの黒い鼻と、ぐったりしている赤い頭を強く抱きしめる。

『ヒューヒュー、死ぬ? 違うわよ、レイブお兄ちゃん、生きる為に、来たのよ、ヒューヒュー』

「え」

『グゥゥ、そ、その通り、だ…… レイブ、神様のやつを、使え…… グゥ、『反射(リフレクション)』、だ…… ググゥ』

『そう、子供の頃使ったあの技よ、ヒューヒュー、覚えてるでしょ? ヒュ、グハッ! ヒューヒュー』

「っ!」



お読みいただきありがとうございます。
感謝! 感激! 感動! です('v')
まだまだ文章、構成力共に拙い作品ですが、
皆様のご意見、お力をお借りすることでいつか上手に書けるようになりたいと願っています。
これからもよろしくお願い致します。
拙作に目を通して頂き誠にありがとうございました。

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