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【連載小説】堕肉の果て ~令和に奏でる創造の序曲(プレリュード)~

あらすじ・目次 


第三部 六章

リベルタドーレス ~解放者たち~

1429.スフィア


 キラキラレイブは息を飲んで見つめるシュカーラに言う。

「ちょっと行って来るからさ、お前が仕切って獣人達に動かないように言っておいてくれよ」

「わ、判りました」

 快諾にニッコリと微笑んだレイブはその場で腰を深く落として、前身をやや後方に引き付ける様に体重移動した後、一言呟く。

「形態模写、コレムボラ、とうっ!」

 本日二度目のとうっ! を発した瞬間、レイブの姿はシュカーラの視界から掻き消えていた。
 代わりに獣人達の目が捉えた物は、先程の戦いでバイコーンを全滅させた戦場の上を、高速度で回転しながらホヴァリングしている不思議な紫のスフィア、球体であった。

「う、嘘でしょう! そ、空を? 人が空を飛んだ、だと……」

 シュカーラの声に合わせたかの様に、ブォーンと唸る回転音を響かせたスフィアは戦場中の宙空を高速移動し始めた。
 通り過ぎた場所には何やら黒々とした噴煙が捲きあがっている。

 その後も戦場跡を、何度も何度もいったりきたりを繰り返しているスフィアの不可解な行動に首を傾げたアオダイショウ似の女性隊員が呟きを洩らす。

「あの玉ってレイブさんなんですよね? 何も無い所をウロウロしちゃってませんか? どうしちゃったんでしょ?」

 この声に答えたシュカーラは厳しさプラスでどこかで聞いた事がある感じの解説者風味である。

「良く見なさい、と言うかピット器官で視てご覧なさい、地面のバイコーンの死体から一瞬だけ生体反応が視えませんか? あの玉、仮にレイブ玉とでも呼びましょうか? レイブ玉は復活し続けているバイコーン共をその直後にほふり続けているんです…… 恐るべき手れ、いや玉練れと言った所でしょうか?」

 ネーミングセンス……

 まあ、驚くべき破壊力と起動能力は玉練れと呼んで差し支えないレイブ玉だと言えよう、……やっぱりしまらないなコリャ。

 触れた瞬間に相手を粉々に砕く戦闘力にも驚愕だが、それ以上に摩訶不思議なのは最初にシュカーラが叫んだ飛行能力の方だろう。
 類推するとスキルの類ではなくレイブ得意のモンスターの模倣、形態模写の一つだとは判る。

 コレムボラ…… 確か体長一ミリ程度の小さな虫だった筈だ。
 日本ではトビムシと呼ばれる独特な進化をして来た昆虫の近縁種である。

 いろいろ特殊な部分が多いこの虫には様々な特徴が見られる。
 体節が三つしかなかったり、体内の浸透圧を調整する弁、腹管を持っていたりするが、特に珍しい器官として有名なのは腹部にある跳躍器である。

 二叉状(V型)になったこの器官はフルカ(二叉)と呼ばれ、まあ判りやすく言えばカタパルト的な役割を果たしている。
 普段は腹部に寄せてあり、なんと専用の保持器、つまりフックによって収納されているのだが、一たびピンチになるとコイツが驚きの働きをしてくれるのだ。

 筋肉の収縮によって勢い良く着地面を押し出して高速射出、本体自身を遥か先へと吹っ飛ばしてしまうのである。
 跳躍距離は高さだけで体長の五十倍に及び、周辺の状況や射出角度によってはこれを遥かに凌駕してしまうビックリ脱出機能なのだ。



お読みいただきありがとうございます。
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まだまだ文章、構成力共に拙い作品ですが、
皆様のご意見、お力をお借りすることでいつか上手に書けるようになりたいと願っています。
これからもよろしくお願い致します。
拙作に目を通して頂き誠にありがとうございました。
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