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【連載小説】堕肉の果て ~令和に奏でる創造の序曲(プレリュード)~

第二部 五章 続メダカの王様 
853.タイムリミット

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 気が狂っている外来生物が言葉を綴る、耳も腐る思いで聴いてみた。

「はーはははっー、大いなる勘違いですよぉーナッキ殿ぉ! いつ私が言いましたか? サニー殿が私の子を生むと? むふふ、むふふふぅ~、貴方も生むのですよぉ? 私の『繁殖者』は雌雄の違いなどなんのそのっ! 雄だって孕ませてしまうのですからねぇっ! むふふふ、なぁーははははぁっ! なはははぁっ!」

 これ、もう悪役だろ? 軽く、いいや、結構重度の疾患持ってるみたいだしさ……

「なっ、なっ、なぁぁっっ!」

 判るよナッキ、コイツ本当の悪党だよね、どこのどいつか知らないけどさっ! 母が語らなかった理由を今初めて正しく理解した、私観察者であった…… お前なんか父親じゃないっ! この変態めぇ!

 そんな私の魂の慟哭は例によって届けられる事は無く、過去は止まる事無く過ぎて行くのである。
 もどかしい…… しかし、一方通行の時間と言う枠組みを未だ紐解いていない我々人類としては、苦しかろうが辛かろうが受け入れざる得ない状況なのだろう…… すまん、ナッキ、サニー…… もう暫く耐えてくれぇ!

 気狂いが言う。

「むふふふ、そろそろだなぁ! さあ、お腹がパンパンでちゅよねぇ? ほらほらぁっ! 押してあげた方が良いですかね? 子供の頃に見た事有りますから~、鮭の人工授精の光景をね、テレビで! イヒヒヒヒ、押しまちゅよぉ~、お二方揃って産卵でちゅぅ、さあっ! ブリュリュリュリュゥ~って、ブリュブリュってひり出しまちょうねぇ~」

「「ひ、ヒイィッ!」」

 最早、隠そうともせずにナガチカから距離を取り、恐る恐る震えながら身を寄せて見返す二匹。
 深い狂気に毒された狂人、いやド変態が声を掛ける。

「おろろ? 何で離れたのですか? ほらほらぁ、産卵を促してあげますよぉ? ブリュリュって、ほらぁ、こっちにおいでなさいよっ! ブリュブリュやりましょうよぉ!」

 ナッキとサニーは声を合わせた、タイムラグはゼロだ、つまり、打ち合わせ無く心からの言葉だと思われた、曰く。

「「し、自然分娩で、よ、よろしく、な、何分、う、う、初産なのでぇ……」」

 だそうだ、良く声を一糸乱れず揃えた物だ…… 彼らも又凄いよね? 新参とは言え、神、って事なのだろうな。

 二匹のシンクロナイズに感銘したからかどうかは不明だが、ド変態が肩をすくめて答える。

「初産は自分で、ですか? 私には理解出来かねる感覚ですがまあ良いでしょう、でもね、通常の妊娠では無くて私のスキルが起因ですからね、妊娠期間とか、産卵後の成長過程とか無視してしまうんですよ! アナタ方が産卵した瞬間に孵化して大体二年位後の姿まで成長してしまいますよ? さあ、そろそろ産卵のタイムリミットですっ! お楽しみぃっ!」

――――くうぅっ!

 ナッキとサニーは奥歯を屈辱に依って噛み締めながら、無言のまま時の流れを無為に過ごすしかなかった。



お読みいただきありがとうございます。
感謝! 感激! 感動! です('v')
まだまだ文章、構成力共に拙い作品ですが、
皆様のご意見、お力をお借りすることでいつか上手に書けるようになりたいと願っています。
これからもよろしくお願い致します。
拙作に目を通して頂き誠にありがとうございました。


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