【連載小説】堕肉の果て ~令和に奏でる創造の序曲(プレリュード)~
あらすじ・目次
第三部 六章
リベルタドーレス ~解放者たち~
980.妙薬の原料
どうやら、レイブに対して連発した『プチヒール』は小さなペトラの魔力を奪いつくしていたらしい……
目の前でどんどん黒ずんで幾ら話し掛けても返事も無い、只の骸と化していく爬虫類、ギレスラを見つめながら賢いはずのペトラは思うのであった。
――――ヤバイっ! えっとこんな時にギレスラお兄ちゃんに必要なのはぁ…… あれよね? 血清だわね! ん、んん? 粉薬を飲み込む体力すら失っているレイブお兄ちゃんも、強壮剤である血清を飲めば良いんじゃないのかな? なるほどぉ…… んでも、血清だって粉薬同様におっかない倉庫の方に置いてあるし…… 今からあっちに行ったらアタシだって無事じゃすまないから…… どうしよう…… なにか、血清の代わりになってくれる物があれば良いんだけれど…… アタシ達獣奴の血液が原料の血清の代わり、か…… はああぁっ!
少し前、稚竜ギレスラは大きな過ちを犯した。
石化の薬となる粉薬が自分達竜種の鱗を原料に作られている、その一事にのみ拘ってしまった結果、加工時の技術や工夫を無視して、自らの命を危険に曝す暴挙に出たのである。
充分に成長した竜種の鱗を、熟練の魔術師が慎重に加工すれば、石化予防、及び石化治療の妙薬が出来る、これは事実なのだが……
熟練の魔術師が慎重に…… これは無視してしまっていたよね……
追い詰められた存在は、時に同様の間違いを繰り返してしまいがちである。
パニックとはそう言った状況なのだろう。
愛しい長兄と次兄、レイブとギレスラの死に瀕してしまった、この時のペトラもそう言ったパニック状態だったのでは無いだろうか?
小さな幼猪、彼女は思った。
――――血清はここには無い! だけど、だけどっ! 血清の原料、素材である獣奴の血、魔獣の血液だったらここに、アタシの中に流れているじゃないのっ! 考えたり悩んでいる時間は無いわっ! 良しっ! 女は度胸っ! イチかバチかやってやろうじゃないのおぉっ!
…………くっ、私、観察者の声が彼女に届きさえすればぁっ!
お読み頂いている読者の皆さんも全く同じ思いではなかろうか?
今ペトラが決めた覚悟は少し前のニーズヘッグ種最後の稚竜、ギレスラと全く同じ過ちのトレースなのだ。
しかし…… 観察も読書も一方通行、である。
ペトラ、彼女は行動に移してしまうのである、当然の様に……
普段よりふっくらとしてしまった体で、固まったままのレイブに近付くと、全身と同様にパンパンに膨れた両腕、いいや前肢を伸ばして彼の腰に装着されている糊袋に差し込まれていた、例のやばいナイフ、ゼムガレのナイフを引き抜いたのであった。
真紅の魔石粉が塗布されたナイフはギラリと光り、その姿はなんとも怪しげであった。
思えば遂先達て、巨大なヴノを死の一歩手前まで追い詰めてしまった恐ろしい謎の刃なのだ。
お読みいただきありがとうございます。
感謝! 感激! 感動! です('v')
まだまだ文章、構成力共に拙い作品ですが、
皆様のご意見、お力をお借りすることでいつか上手に書けるようになりたいと願っています。
これからもよろしくお願い致します。
拙作に目を通して頂き誠にありがとうございました。
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