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【連載小説】堕肉の果て ~令和に奏でる創造の序曲(プレリュード)~

あらすじ・目次 


第三部 六章

リベルタドーレス ~解放者たち~

1292.窮状


 なんと、森の中で自らの境遇を嘆いていたのは『森王』ことダソス・ダロスであった。
 かつて、ヴノやジグエラから聞かされた、ジャイアントボアの勇壮な印象とは相容れない話しに、黙り込んでガトの説明に耳を傾けるスリーマンセル。
 とりわけペトラの驚きは強烈だったらしく、話しへの食い付きがもの凄かった。
 そこからガトが語った内容はそれなりに衝撃的ではあった。

 森の中で出会ったダソス・ダロスは酷い有り様だったらしい。
 元々巨大だった体躯はブクブクに肥大し、自分の足で立ち上がれない所か、垂れ下がった皮下脂肪が地面に擦れて化膿し捲り、周囲に悪臭を放っていたそうである。
 その中で顔面まで肉に覆われたつぶらな瞳をガトに向けた森王は、懇願の言葉と滂沱ぼうだの涙を垂れ流し続けたそうだ。

 曰く、こんな筈じゃなかった、ここから逃がしてくれ、一緒に連れて行ってくれ、そんな言葉を繰り返していたという。
 仕舞いには、いっその事一思いに死なせてくれ! 等と泣き叫びだし、世間知らずのアタシで無くとも往生したに違いないっ、そう彼女、ガトは断言に至ったのである。

 殺せと言うなら殺すか? そんな風に思ったガトだったが、一応詳しく事情を聞いてみよう、そう思い返して話しを促したという。
 具体的には、その醜い体を細切れにされて魂すら永遠の責め苦を受け続けたくなければ、さっさと泣き止んで理由をお話しっ! と凄んだそうだ、清々しい位に悪魔的だ。

 彼女の瞳に宿ったガチな意思に恐れをなしたダソス・ダロスは即座に泣き止んで、森王就任以来のあらましについて話し始めたそうだ。

「話しを聞いてたら可哀想でね、それでバイト的に働く事にしたって訳よ」

 ふむ、判らん。

 肝心な場所をはしょり過ぎているせいで、何がどう可哀想でどんな仕事をやる事になったのか皆目見当がつかないじゃないか。

 レイブとギレスラはチラリと視線を合わせてからその部分を問い質そうとしたが、それより早くペトラの声が発せられる。

『それでっ? ガトちゃんが働いてくれてダダ坊は助かったのっ?』

 んんん? ダダ坊? しかしてダソス・ダロスの事だろうか?
 ガトは察したらしく即答。

「今はね、でも長くは持たないんじゃないかな? なにしろアタシが見つけた時すでに瀕死だったからね…… 今は小康状態、徐々に弱ってるみたいなのよ」

『そ、そんな……』

 ダダ坊の現状に言葉を失うぺトラに代わり、レイブが大事な部分の質問を重ねる。

「それでガトは何の仕事をしてるんだよ? 代わってやる事でダダ坊? ダソス・ダロスが生き長られる位の大変な仕事なんだろう? 俺達が聞いてるダソス・ダロスは魔獣の中の魔獣、所謂いわゆる英雄なんだよ、そんな森王が死を望んでしまうほどの激務をお前がやっているなんて…… 一体、そのスーパーブラックな仕事って何なんだよ?」

 ナイスっ! 聞きたい内容の趣旨を簡潔に纏めたレイブである。



お読みいただきありがとうございます。
感謝! 感激! 感動! です('v')
まだまだ文章、構成力共に拙い作品ですが、
皆様のご意見、お力をお借りすることでいつか上手に書けるようになりたいと願っています。
これからもよろしくお願い致します。
拙作に目を通して頂き誠にありがとうございました。

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