【連載小説】堕肉の果て ~令和に奏でる創造の序曲(プレリュード)~
第二部 五章 続メダカの王様
857.燈火(挿絵あり)
「な、ナガチカ? どうしたのさ、どっか痛いの?」
ナッキの言葉で自分の涙に気が付いたナガチカは、慌てた素振りで涙を拭い、照れ臭そうにはにかむとその場にしゃがみ込んで言う。
「いいえ大丈夫ですよ、さあ、ミミズですよ! 今日が最後になってしまいましたが、皆さん楽しんでくださいね」
そう言うと、バケツの中から一匹づつ摘み上げたミミズを目の前の水面に落とし始めたのである。
池の水中から仲間のギンブナやウグイ達の視線を受けたナッキは、少しだけ考えて小さく頷きを返した。
魚群の先頭に居た二匹、ヒットとティガが大きな口を使って最初に投じ入れられウネウネしていたミミズを器用に半分づつ口にする。
瞬間、眼を見開いて小さくない痙攣を始めた二匹は、仲間達を振り返ってコクコクと激しく頷いて見せた。
それを合図に、次々と投じられたミミズに思い思い齧り付く魚たち。
一見無秩序に見える光景だったが、注意深く見れば数匹で一つのミミズを分け合っていたり、小さな個体に譲っている年長の魚の姿も見える。
昨日、二匹だけで沢山食べてしまったナッキとサニーは、当然この騒ぎには加わる事はせずに、水面から顔を出してナガチカの姿を見つめ続けていた。
ミミズを落とし続けながらナガチカが話し始める。
「ホタル達の出迎え、美しかったですよ、それに…… ナッキ殿、お蔭で大切な事を思い出しましたよ、はは、どうして忘れていたんだろうか…… いいや、日々の出来事に感けて、それを言いわけにして忘れた様に振舞っていただけなのかも知れません…… あれ程多くの事を皆から教えて貰っていたというのに、情け無いですよ……」
ナッキは無言でナガチカの横顔を見つめている。
代わりに声を掛けたのはサニーだ。
「大切な事? 何だっけ、ジレンマとか言ってたよね? それに皆? って前に言ってた義父さんや義母さん、それと凄い特別な悪魔たち、魔神だったっけ? その事なの?」
小さく頷いたナガチカは、ミミズが落ちる水面から視線を動かさないまま答える。
「ええ、偉大な存在でしたが近くに居過ぎてきっと理解出来ていなかったんですよ…… いいや義父母や魔神、魔王達だけじゃあないな…… 私の元を去って行った『六道の守護者』や『オニギリ友の会』、それに、妻美雪と聖邪、カーリーやオンドレとバックルも…… 行動を持って私に教えてくれたんだ、な…… それなのに、私は彼らの行為を責めるばかりで、大切な事から目を背け続けていたんでよ…… 自分が誓いを立てた役目、そしてその役割にガッツと闘魂で向き合う事からね…… 重ね重ね自分の愚かさ、脆弱さが情けないっ、そんな気持ちを思い出したんです」
「な、ナガチカ」
ナッキがいつに無く切羽詰った感じで言いながらナガチカとの距離を詰める、もう指呼の間まで詰めちゃっている。
ナガチカが初めて触れたナッキの額に埋め込まれた石、例のヤツ、ウランに触れながら言う。
「そんなに心配そうな顔をしないで下さいよ、ナッキ殿、サニー殿! こう見えて私は聖戦士の端くれなんですよ? だから笑顔で見送って下さい! 色んな事を言いましたがね、結局私の心の中に有る一番大きな物、それは只々、一途に我妻である美雪、そして我が子、聖邪の事ばかりなんですからね、ははは、はははは、小さい男なのですよ、私はね…… 明日の朝、こんな私に付いて来てくれる仲間たちと共にこの地を後にします! 決めたのですっ! 明日、この池に接続している水路の先、大きな川から海に出て遥か彼方の遠くまで、勇気とガッツと闘魂だけを輩として旅立ちますっ! お見送り頂ければアナタ方との邂逅がこの上ない思い出となるでしょうっ! 如何ですか? 『メダカの王様』ナッキ殿っ! 『メダカの王妃様』サニー殿っ!」
お読みいただきありがとうございます。
感謝! 感激! 感動! です('v')
まだまだ文章、構成力共に拙い作品ですが、
皆様のご意見、お力をお借りすることでいつか上手に書けるようになりたいと願っています。
これからもよろしくお願い致します。
拙作に目を通して頂き誠にありがとうございました。
この記事が参加している募集
励みになります (*๓´╰╯`๓)♡