【連載小説】堕肉の果て ~令和に奏でる創造の序曲(プレリュード)~
第二部 五章 続メダカの王様
863.副王キトラ
「来るとは思わなかったよ長老、ナガチカなら旅立って行ったよ、間に合わなかったね」
キトラはいつもと変わらぬ穏やかな表情に少しだけ微笑を加えて答える。
「何、未練は有れどせん無き仕儀ですじゃ、細かい事を言えばキリが無い、私が深い海の底から聖女コユキの手によって助け出される以前に、彼の美しい聖女に出会ったナガチカ、ジロー、ユイ…… 出来得るならばもっと語り合いたくなかったか、そう問われれば否とは言えぬがのぉ…… じゃがしかしっ、美の化身とも言うべき真なる聖女様の言葉を借りるならば、今目の前にある出来る事に一所懸命にならねばいかんじゃろうて」
美しい聖女? 美の化身? あのキトラの腰蓑が腹に巻けずに首飾りみたいになっていたコユキの事だよね? ふーむ、オサガメの美意識、美的感覚ではそうなるのかぁ…… 勉強になるな!
しかし、最後の言葉に対しては、私、観察者には一点の異論も無い、どんなに辛い現実を目にしようが、肉親の誰かが狂っていようが、自分の遺伝的特性に僅かな恐怖や不安を抱こうともだっ! 今出来る事に一所懸命に向き合うのみだっ! …………似てないよね? 後で皆に聞いてみよう。
「今目の前にある事? 何だろう?」
無邪気なままで首を傾げているナッキに、いまや『美しヶ池』の副王となった巨大なオサガメ、キトラが僅かに居住まいを正して、長い首を限界まで上方に伸ばしてから告げる。
「我が王、『メダカの王様』ナッキ陛下よ! 副王キトラにお答えくだされ! 王に置かれては更なる臣下、臣民を迎え入れる、その心が有るや無しやっ! ふふふ、どうです?」
話し始めの硬そうな話し口に、少し緊張して聞いていたナッキだったが、極端に緩くなった言葉尻に笑顔を浮かべてリラックスして考え込んでいる。
なるほどなぁ、ここら辺の強弱とか緩急、緊張感の後の弛緩とかの具合は、流石、年の功と言った所だろう、? あ、ああ、亀の甲でも良いのか…… 混乱する……
私ほどの知性は無いのだろう、ナッキは混乱せずに答える、気楽な物である。
「ん? 臣民? って確か仲間の事だよね? 更なる仲間か、友達が増えるのはみんなも喜ぶとは思うんだけどさっ、出来れば変態じゃない方が良いなぁ、そこら辺は大丈夫ぅ?」
キトラは満面の笑顔だ。
「はいっ! ナガチカの治世下でそれこそその変態を嫌って身を隠していた者共ですので、ご心配には及びません! このキトラが請け負いますっ! 真逆でございます! 清廉潔白、そんな理想を胸に抱き続けている者達ですっ! 王よ、どうでしょうか? 拝謁の栄を与る為にこの場に呼んでも? 宜しかったですか?」
「うん、良いよ♪」
お読みいただきありがとうございます。
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まだまだ文章、構成力共に拙い作品ですが、
皆様のご意見、お力をお借りすることでいつか上手に書けるようになりたいと願っています。
これからもよろしくお願い致します。
拙作に目を通して頂き誠にありがとうございました。
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