【連載小説】堕肉の果て ~令和に奏でる創造の序曲(プレリュード)~
あらすじ・目次
第三部 六章
リベルタドーレス ~解放者たち~
1379.奈落
正常な視界を取り戻したレイブは素早く周囲の状況を確認した。
至近には、自分の落下に巻き込まれたであろう、数頭のバイコーンがバラバラになって飛び散っている、当然既に命は無いようだ。
その先には四方を取り囲むバイコーンの姿があり、こちらは唸り声を上げながら油断なく攻撃の隙を覗っているらしい。
「ん? んん?」
が、なにやら様子がおかしい……
上では登場直後にギレスラのブレスでこんがり黒こげにされていた為気が付かなかったのだが、この場に集まっているバイコーンの群れは、レイブが慣れ親しみ、常食の対象としてきたモンスターとは一線も二線も画した別種の様に見える。
具体的には、全体的にカサついた質感の肌に虚ろな目、四肢や首の動きはぎこち無くどこか機械的でもある。
更に目を凝らせば、群れの殆どが体のどこかを欠損している事が見て取れ、中には八割方の白骨が露出していたり、破れた腹部から如何にも鮮度が悪そうなハラワタを溢して引きずっている個体まで存在している。
鼻をつく饐えた匂いも非常に不愉快なものだ。
「なんだよコイツ等…… 美味くは無さそうだな、っと」
げんなりとした表情で呟いた瞬間、正面から大口を開いて飛び掛ってきた一頭を、咄嗟に平手で叩き払ったレイブはキョトンとした表情を浮かべて呟きを続ける。
「軽い? いやいや、手応え無さ過ぎだろ」
言葉の通り、軽くいなす程度のつもりだった一撃は、襲って来たバイコーンの頭部を粉砕したのみならず、割と大き目の体躯まで遥か側方の壁際まで吹き飛ばしたのである。
まだ疑問の表情を浮かべる中、左右と前後から襲い掛かった欠損バイコーンを脚による一閃で振り払ったレイブは僅かな間に目指すべき対象を見つけてほくそ笑みつつ言う。
「お? アレかな? うん、アイツはまあ、美味そうかな? 良しっ、待ってろよガト、えへへ」
昨日、小人の隠し穴で知った、モンスターの肉、それも生を食べ続けていると緑のゴブリンになってしまう、その恐しい仕組みを知ってしまったレイブにとって、バイコーンの群れは既に自分用の食料では無くなっているようで、只々、未経験で初心な幼馴染、ガトへの贈り物としか見えていないらしかった。
見つめる先には、大量の黒い馬に酷似した化け物ごしに、一際巨大な異形の姿が見え隠れしていたのである。
ネコ科か? うん、まあネコっちゃあネコなのだろう。
獲物を捉える為の目は前方に集中出来る様に前向きに大きく丸く開かれ、瞬発力を生み出す為の体躯は脊椎から長く伸びた尾の先まで別個の生物であるかの如く艶かしく蠢き、強靱な下肢に対して脆弱に見える前肢がネコ科の狩人、生まれながらの狩り手である所以を表していた。
体躯も異常な程の大きさであり、周囲のバイコーンに比べて四、五倍、ペトラと同じ程度の体高を持っている事が見て取れ、事前に鹿獣人から聞かされたヤバいモンスターに違い無い、そう判断出来る。
なるほど、全体のイメージとしては巨大なライオン、魔獣に似ている。
オス独特のタテガミが体に対して少し長めでは有るが、立派である事は間違い無い。
一方、尾の先を除いて、黄褐色の濃淡だけがある筈の胴体はなんとも賑やかな装いである。
鹿顔が言っていた通り、四肢には黒々とした縞模様がくっきりと目立ち、腹部にも背まで至る灰色の牙模様が隙間なく入っていた。
顔面も聞かされたまま、バイコーンの幼体、ルヴレットと同様の斑が不規則に並べられ、口から上下に露出されている鋭い牙は、野獣や魔獣の獅子に比べて異常なまでの大きさである。
体躯も同様に巨大で、大体ぺトラの倍、ダソス・ダロスの三分の一はあるだろうか?
モンスターとしては勿論、ネコ型の魔獣だとしてもかなり大きな個体だと言える。
お読みいただきありがとうございます。
感謝! 感激! 感動! です('v')
まだまだ文章、構成力共に拙い作品ですが、
皆様のご意見、お力をお借りすることでいつか上手に書けるようになりたいと願っています。
これからもよろしくお願い致します。
拙作に目を通して頂き誠にありがとうございました。
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