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【連載小説】堕肉の果て ~令和に奏でる創造の序曲(プレリュード)~

あらすじ・目次 


第三部 六章

リベルタドーレス ~解放者たち~

1614.歯軋り


 レイブの眼球は今にも飛び出しそうになり下顎も外れる寸前だ。
 ギレスラも事態の切迫を理解したのか慌ててアドヴァイスを贈る。

『レイブ! 取り敢えず自分とハンペラ、それにペトラの『反射』を解除した方が良いのでは無いのか?』

 うん、そこは今すぐ解除しろ! この考えなしの間抜けめがっ! の方が状況的に適切だったかな?

「お、おう、『解除』、良しっ!」

 なんら良くは無いが解除を急ぐにこした事はない。
 レイブは自分自身に続けてペトラの元に猛ダッシュ、無事『反射』を解除したのである。
 最後にハンペラに歩み寄り、手を触れようとした瞬間、思わず固まったレイブの口から漏れた声は……

「うあぁ、どうなってるんだコレ」

 既にブルーカのスキル『感染クランクハイト』も影響は微塵も残っていないハンペラの顔は、何故か全体に血管を浮き出させて細かな痙攣を続けながら、異常な程に強く噛み締められた口元からはブクブクと泡を吹いていたのである。
 周囲には本人の物と思われる歯軋りの音が絶え間なく鳴り響いてもいた。

 一見すると悪夢にでもうなされている様にも見えるが、それにしては症状が顕著過ぎる。
 それにハンペラの壮健そのものな並びの良い歯が左右にスライドする勢いに対して、やけに漏れ出る音が控えめ過ぎる気もする。

「んんー?」

 不可思議な事態に首を傾げるレイブは『解除』も忘れて苦しむハンペラを覗き込むのであった。
 追い掛けてきたメンバーの中からシュカーラが大慌てで声を掛ける。

「ちょっ、師匠、何をやっているんですかっ! 早く『解除』してあげて下さらないとっ!」

「お、おう、だけどさ、コレ、何でだろ?」

 シュカーラは自分の幼馴染の命より己の知的好奇心を満足させようとする師に対して本気で怒鳴る。

「だから『反射』の効果でしょっ! 歯軋りの音が攻撃だと見做されて自分に返って来てるんですよ! 恐らくそれが何らかの音波攻撃的になってシナプスとかに異常をきたしてるんじゃないですかっ! 早くしないと廃人とかじゃないですかっ!」

「おおぉっ、なるほどな、やっぱ賢いなお前って♪」

「そんな事後で良いですからっ、早く早くっ!」

「はいはい、『解除』っと、これで良いか?」

 シュカーラの予想は的を射ていたらしく、『解除』を施されたハンペラは顕著な回復を見せた。
 具体的には口元から泡が消え、顔面中に浮いていた血管も収まり、全身を震わせていた痙攣も治まったのである。

 反して歯軋りの音は大音量に変わり、時折寝言だろうか? 畜生っ畜生っ、と吐き捨てる様な無邪気な発声だけが聞こえるのみだ、良い夢をハンペラ。



お読みいただきありがとうございます。
感謝! 感激! 感動! です('v')
まだまだ文章、構成力共に拙い作品ですが、
皆様のご意見、お力をお借りすることでいつか上手に書けるようになりたいと願っています。
これからもよろしくお願い致します。
拙作に目を通して頂き誠にありがとうございました。
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