【連載小説】堕肉の果て ~令和に奏でる創造の序曲(プレリュード)~
あらすじ・目次
第三部 六章
リベルタドーレス ~解放者たち~
1315.緋色の悪夢
覚悟が決まった私が一歩を踏み出そうとした時だった。
緊張感の欠片も持っていない少女の背後から襲い掛かった赤い魔獣の姿が見えた。
同時に周囲を震わせて怒号にも似た咆哮が響き渡った。
あれは私の配下中でも一、二を争う実力者、『緋色の悪夢』ことグリズリーのエリザベス、愛称リズの声だ。
『グボォーッ! ガアァッ! アッ? カハッ……』
バターンッ!
私は我が目を疑わざる得なかった。
リズの強烈な爪は無防備なままの少女の脳天目掛けて振り下ろされた。
と、同時に巨大なグリズリーの体は仰向けに倒れ込んでしまったのである。
まるで、糸を切られたマリオネットの様に脱力した様子から、意識を刈り取られている事が窺われる。
俄かには信じられ無い出来事であった。
タフさと凶暴性に加えその執念深い性格から周囲の雄熊達から恐れられ、得意技のベアハッグは『死の抱擁』等と陰口を叩かれて、子作りの相手すら見つけられなかった、あの、リズがいとも容易く無力化されてしまったのだ。
しかも、目にも留まらぬ早業で、リズの顎先をキックで掠め打ったのは、件の極々普通の野うさぎだったのである。
「サンキュー♪」
気楽な感じで礼を口にする少女の赤い肌はいつの間にか金属質な物へと変わっていた。
対して野うさぎは言葉を返すでもなく、鼻をピクピクとひく付かせながら、既に足元の草に関心が移っているようだ。
金属鎧は一連の出来事に一切興味が無いらしく、振り続けられっ放しの大剣からはゴウゴウと異様な音が発せられ始めてちょっとした嵐みたいに聞こえてくる。
――――う、嘘だろ? あのリズが…… あんなに呆気なく、か……
私の脳裏に在りし日のリズの笑顔が思い出されていた。※リズは死んではいません。
いつも私に向けてくれていた、卑屈でどこかご機嫌を窺った様な、遠慮気味な媚びた笑顔である。
遠目に見える今のリズは、天を見上げた姿勢のまま、だらしなく涎を流してピクリとも動きはしない。
再び、私はこれまで感じた事が無かった感情の発露を憶えた。※この日二度目です。
そして力強く一歩を踏み出しながら、大きな声ではっきりと魔術師の一行に告げたのである。
『こんにちは♪ 私の森へようこそ! 皆さん、この森にはどんなご用件で? えへへ♪』
と……
お読みいただきありがとうございます。
感謝! 感激! 感動! です('v')
まだまだ文章、構成力共に拙い作品ですが、
皆様のご意見、お力をお借りすることでいつか上手に書けるようになりたいと願っています。
これからもよろしくお願い致します。
拙作に目を通して頂き誠にありがとうございました。
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