【連載小説】堕肉の果て ~令和に奏でる創造の序曲(プレリュード)~
第二部 五章 続メダカの王様
832.キラー
この立派な『メダカの王国』の王、ナッキの嘆きを聞いて残念な父、ナガチカが今更ながら言う。
「ゴホンッ! あ? ああ、石化だったら予防出来ますよ? その為の薬って有りますからね、ペジオ
君の父結城昭さんが発見して、僕の実父、幸福光影が完成させた薬品、ユウキアキラと、魔力を減らし過ぎた場合の魔力補填薬、秋沢明さん謹製のアキザワアキラが有りますからね♪ 因みに原料の鱗を作り出す爬虫類の不調と、魔獣達の体調を整える薬品、タンバアキラもたっぷり有りますよ♪ 明日にでも持ってきましょうかね? あはは、ぐっゴホゴホッ、あはは」
親父よ…… それさ、ヒルミミズ飲む前に言えよ、ってかそんな便利な薬あるなら持って来いよ、念の為にさぁ…… とか言いながらも、そうか…… 私の時代に必需品となっている、タンバーキラーとアキザーキラー、それにユーカーキラーはこの段階ではもう実用化されていたんだな……
タンバーキラーは命無き魔石に回復に特化した人間の魔力を充填させ砕いた粉薬、アキザーキラーは魔獣の血液から作った血清、液状のアンプルである。
ユーカーキラーこそが石化し始めた人間や魔獣を癒す事が出来る、爬虫類の魔獣や悪魔の鱗を砕いた粉薬である。
私の時代で人々や心通わせあえる獣達が石化の恐怖から逃れる為にはこの、ユーカーキラー、いいやユウキアキラに依る所が非常に大きいのである。
然しながら竜種、爬虫類の魔獣や悪魔は極めて希少なのである。
難しく言えば、個体数が極端に少ない、絶滅を危惧してしまう程しか現存していないのだ。
とは言え、観察時点の親父、ナガチカにとってはそんな悩みは慮外の様であった。
ヘラヘラとした笑みを浮かべながらナッキと自分の横に並んだヘロンの顔を交互に見ながら偉そうに言う。
「特に魔獣と依り代経験者、聖女と聖戦士由来のメンバーで構成されているハタンガ村では石化被害とかほぼ皆無なんですよね~! あはは、んだからユーカーキラーは馬鹿みたいに余ってるんですよね~! 有るだけ持ってきますよ♪ どうせ使わないんでぇ~♪ あはははぁ」
はぁ、少なくとも、私の生きている時代において、我が父ナガチカは賢い方とは言えない様であった。
と言うか、相手の置かれた状況に則した話し方も出来ないポンコツだったようだ……
だが、そのポンコツ相手でもやっぱりナッキは立派で理想的な王様であった様だ。
ナッキは言う。
「ええっ! そうなのぉ? んじゃあナガチカぁっ! そのお薬を持って来てくれる? 僕、ヘロンの仲間達、鳥達を救いたいんだよぉ! 頼むよぉ、この通りだよぉ!」
ナッキが頭を水中に沈めているのに馬鹿親父は偉そうに顔を月、金色に輝くデイモスに向けて照り返させながら言う。
「あ? 欲しいの? 判ったぁ! んじゃあ持って来てあげるよぉ! 僕等にはいらない物だからね、しょうがない分けて上げるよぉ! あははははぁ!」
何だコイツ? 最低じゃんっ!
「ありがとうナガチカ! 感謝するよ! ありがとうありがとう! うぅうぅっうっ! 良かったねヘロン、コレで君の仲間たちも助かるよ…… 良かった良かったよ…… 皆っ! ナガチカに礼っ!」
一斉に頭を垂れた魚とカエル、鳥とトンボとザリガニにあのクズが言う。
「あはは、そこまでされたら持ってこない訳にはいかないなぁ、明日を楽しみに待っていてよ! 可哀想な君たちをこの私、ナガチカが慈悲の精神で救ってあげるからさっ! あはは、あははははぁ!」
「ありがとうございますっ!」
…………ナッキィ、ナッキナッキ、ナッキィ! 私、観察者はアンタが大好きになったよ……
に、比べて、いいや比べるべくも無い我が父のこの体たらくは一体なんなんだよ……
そうか、これが親ガチャ外れって事なのか……
外れだった皆、さっきは当然とかって言っちゃってゴメ、マジ勘弁しておくれよ…… こんなの、泣くしかないよぉ、情っけないっ!
し、しかし、善悪とコユキを追った三回目の観察の最後辺りでは、結城昭は竜っぽくなったトカゲの治療法を、秋沢明はモンスター化した獣の駆除法、それに魔獣の血液由来の回復薬開発、丹波晃はトカゲの鱗から作る石化抑止の薬を作っていた筈だが……
どうやらあの結婚披露宴からの数十年で、完成した薬につけられた名前がシャッフルされてしまったようだな、あの魔石を鏤めたナイフも無いみたいだし…… どうやらこの空白の期間にも色々あったようだ。
お読みいただきありがとうございます。
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まだまだ文章、構成力共に拙い作品ですが、
皆様のご意見、お力をお借りすることでいつか上手に書けるようになりたいと願っています。
これからもよろしくお願い致します。
拙作に目を通して頂き誠にありがとうございました。
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