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【連載小説】堕肉の果て ~令和に奏でる創造の序曲(プレリュード)~

あらすじ・目次 


第三部 六章

リベルタドーレス ~解放者たち~

1238.ディスカッション


 本物のギレスラの死を聞かされたペトラは、嘆くでも錯乱するでもなく冷静な様子だ。
 自慢の鼻をひくつかせてレイブの持つ赤い鱗に近付けた後、元居た場所まで歩いて周囲に散乱している鱗にも同じ事をしている。

 しばらくすると戻ってきてレイブを見つめながら言った言葉がこれだ。

『残念だけどソレはギレスラお兄ちゃんじゃないわよ、獣臭いもの』

「獣? そうか? 俺には判らないけどな」

 ペトラは大きな鼻を突き出してひくつかせているだけだ。

「まあ、どっかで付着した匂いなんじゃないか? ギレスラを襲ってた連中って獣面だったし」

『ううん、その匂いは触られた位で付いたものじゃないわね、それにギレスラお兄ちゃんはもっとこう、うんっ、生臭いのよ! 判るでしょ?』

「生臭いかな? んでそっちはどんな奴等にやられていたんだよ?」

『水辺に出たアタシが川沿いに歩いてここまで来たらさ、モンスターが寄ってたかって獲物を解体していたのよ、しばらく隠れてみていて気が付いたのよ、獲物がギレスラお兄ちゃんだって事にね…… その後はモンスター共を蹴散らして気が付いたら独りきりここに残されててね…… 悲しくて泣いていたらレイブお兄ちゃんがやってきたのよ』

「あれか、モンスター共は人型に犬や猫とかの獣みたいな顔じゃなかったか?」

『ううん、確かに人型だったけど魚? トカゲ? ゲッコウとかイモリみたいな感じの顔かな? 生臭かったわよ』

「えーお前もかよー」

『も?』

 不可解な表情を浮かべるペトラに対して、レイブは自分が先程森の北で経験した話、とは言ってもぺトラの話とほぼ一緒、焼き直しっぽい酷似した内容を話して聞かせたのである。

 一しきり聞いたペトラは偶然の一致に首を傾げたが、暫らくすると自分の主張を繰り返したのである。

 曰く、

『匂いは嘘をつかないわ! トリュフはトリュフ、ボルチーニでは無いもの』

だそうだ。

 意味は不明であったが、言葉の響き的に納得しかけたレイブは何とか持ち堪え、こちらも持ち前の頑固さを発揮して自分の意見を押し通そうとし始める。

 曰く、

「色目の違いは看過出来ないぞ? なにしろ、小さな頃から見続けてきた鱗だからな、そんな風にくすんだ色じゃなかったぜ、絶対!」

なるほど。

 その後は各々、自分が見つけた鱗と肉がギレスラであると主張を繰り返し、互いに相手に譲る事無く時間が過ぎていくだけであった。

 色が変わったのは死斑的なヤツじゃないの? だとか、
んな事言うんだったら匂いだって変わるかもじゃん! だとか、
そもそもちゃんと見てたの? ラマスの事ばっかり見てるじゃない! だとか、
ば、馬鹿言っちゃいかんよ! とんだ濡れ衣だ! だとか……

 不毛極まりない論争に出口は依然見当たらない状態であった。



お読みいただきありがとうございます。
感謝! 感激! 感動! です('v')
まだまだ文章、構成力共に拙い作品ですが、
皆様のご意見、お力をお借りすることでいつか上手に書けるようになりたいと願っています。
これからもよろしくお願い致します。
拙作に目を通して頂き誠にありがとうございました。

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