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【連載小説】堕肉の果て ~令和に奏でる創造の序曲(プレリュード)~

あらすじ・目次 


第三部 六章

リベルタドーレス ~解放者たち~

1189.剥がれたメッキ


 どうした事か、頭に血が上りっ放しなのか? 顔色をどす黒く変じさせつつレイブの早口は増すばかりである。

「いやいやいや当然でしょ? だって男と女な訳ですよ? 違うんですから、体がっ! こちらの思っているのと彼女の体の動きも当然違ってくる訳です、当たり前ですっ! それを確認して動きに微細な修正を加えなければならないじゃないですかっ! 体捌たいさばきとか足捌きとかっ! おっと、股間だけじゃないんですよ? その、ほら、ち、乳とかも有るわけですし? 判るでしょ? ですよね? 乳だけじゃないですよ? 他にも、えっとぉ、乳とか、乳…… 乳が有るんですよっ! 確認せん訳には行かないでしょうがっ! 体捌き的にっ! 乳をっ!」

 勝手に追い詰められて最後は何とも潔い感じになったレイブ。
 ペトラとギレスラは満足気な頷きを返し、グフトマは静かな言葉を口にする。

「そうか…… 乳を、な」

「はいっ! 乳の動きと色目、成長具合を確認していましたっ! 楽しかった、と言うより旅立つ前の生甲斐でもありましたっ!」

「ふーん…… 良いなぁ……」

 良いなぁってグフトマ、お前……

 未だ紅潮した顔のままでビッシと姿勢を正すレイブと、その姿をどこか憧れを込めた視線で羨ましそうに見つめるグフトマ。
 不穏な気配でも感じたのか、周囲で飲んでいたホブゴブリンの女性達が質素な衣服を正して変態師弟の目から逃れようとする中、ペトラがこの膠着こうちゃく状態から脱却できる言葉を発する。

『そんな事よりさ、太師匠と熱視線の彼女の進展具合はどうなの? ね、ね、今後の展望的な?』

『そうそう、スケベなレイブの話よりそっちが気になるな』

「なぬっ?」

「えー? 熱視線? そんな目で見てたの彼女ぉ? えー、マジでぇー?」

『うんガン視だったわ』

『ああ、擬音的にはギンッ視、しくはギュンッ視だったな、あれ』

「ギン? ギュン? ま、参ったな、ははは」

 照れ臭そうに微笑を浮かべたグフトマは次の瞬間、ここまでで一番の心痛を表情に顕して呟きを洩らす。

「そんな風に言って貰えれば…… 今の仕事にもやり甲斐を感じられるってものだよ…… 仮に私をからかう為の方便だとしても、ね……」

 そう言って黙り込んだ後は、視線を虚空に向けたまま一層憂いを深めた視線で射抜くように何かを見つめている。
 眉目秀麗、姿形が整っているだけに周囲に感じさせる圧も大きい。

 簡単に声を掛けられないムードに、一同が彼に倣った様に黙り込む中、レイブは静かに声を掛ける。
 表情には全てを悟り達観に至った者だけが見せる、そんな超越に似た優しさが含まれている。

「判りますよ太師匠…… 続けましょう、乳の話、ですよね?」

「ん? いや、それ系の話はもう良いよ、ってか止めてくれると助かる」

「なるほど…… 尻、も良いんですか? 楽しいと思うんですけど?」

「ああ結構だ…… あっ、また別の機会に聞かせてくれるか?」

「了解です」

 どうやら見当違いだったらしい。
 自らの非を素直に認めて口を噤んだレイブに代わってグフトマは真剣な表情のままで語り出す。

「ここで暮らす者は皆、運命と言う名の役目を背負っている、そう言って良いだろう…… ホブゴブリンの皆は生れ落ちた時からゴブリンの世話を、ラタトスク達は外界との折衝せっしょう役と食料調達を兼ねているんだ…… そして、ゴブリン達は、ここで生まれ、そして…… ここで死んでいく…… その宿命が遥か昔から決められているんだよ……」

「え、死ぬ、宿命って、まさか……」



お読みいただきありがとうございます。
感謝! 感激! 感動! です('v')
まだまだ文章、構成力共に拙い作品ですが、
皆様のご意見、お力をお借りすることでいつか上手に書けるようになりたいと願っています。
これからもよろしくお願い致します。
拙作に目を通して頂き誠にありがとうございました。

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