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【連載小説】堕肉の果て ~令和に奏でる創造の序曲(プレリュード)~

あらすじ・目次 


第三部 六章

リベルタドーレス ~解放者たち~

1568.マナナンガル


 黒く長い布を胸から下で巻いただけの衣装は褐色の肌も合わせるとフィリピンの伝統的な服装に見える。
 無論、植民地以降の装束であるバロトサヤではなく、それより遥かに古い時代の簡素且つ合理的な布つなぎ、皆さんの時代では少数民族の衣装として知られているマロン、つまりインドネシアのサロン、ミャンマーで言う所のロンジーと同様の筒状なスカートやワンピースに酷似している。

 足首近くまで覆った着丈は複数の布をつないであり、そこから別の布が横向きにつながれて肩や腰を重ねる様に巻き付けられていた。

 女性はこちらも長い漆黒の髪を無造作に左右に垂らし、化粧の類は見当たらないにも拘らず、唇は煽情的に赤く艶めき、切れ長の目に半ば懸かった上瞼は、あたかもシャドーを施したかの如く、コバルトブルーに染められて見えた。
 顔自体の造形も美しい事は言葉にするまでも無い。

 ゴクリ×2

 ぺトラとギレスラが飲む息が低く響く中、レイブは闇から生まれ出た様な美人に声を掛ける、珍しく警戒を面に浮かべながらである。

「何者だ?」

 怪しくも美しい女は答えたが、その声は見た目にそぐわない甲高く耳障りな代物である。

「この様な穴ぐらにようこそ、偉大なる魔神アスタロト様…… 私の名はマナナンガル、憶え無き刑を受けし無念の亡者を率いる者…… 貴方様の兄上、魔神バアル様の眷属めにございます」

 レイブは眉間をしかめながら質問を続ける。

「バアル? シパイあんちゃんの事だよな? だとしてもこんな所で一体何を…… って、まさか住んでるのか! ここに?」

 マナナンガルと名乗った美女は丁寧にこうべを垂れながら答える。

「はい、仰せの通りでございます」(甲高い)

 レイブは耳に障るキンキンした声に眉間の皺を深くしながらも続ける。

「そ、そうか、でもバアルの眷属って事はアンタも悪魔、神様って事なんだよな? こんな場所で独りきり? って訳じゃ無いだろ? 仲間とかはいないのか?」

 マナナンガルは下げた頭を更に低くして答えたが、何が嬉しかったのかは不明だが勝手に上げたテンションのせいで甲高さは天井知らず、何かの超音波攻撃みたいな不快さを伴ってレイブ達の耳を刺激し捲る。

「はいっ! 流石はアスタロト様のご慧眼けいがん! この場所には千を数える一族が隠れ住んでございます! お目汚しがあっては無らぬと、レッサーやグレイターは闇に隠れさせておりますが、お許し頂けるのであれば名持ちの者共だけでもご挨拶をお受け頂けませんでしょうか? どうかお目通りの栄誉をお与え下さいませぇ!」(甲高い+脳を直撃する共鳴作用)



お読みいただきありがとうございます。
感謝! 感激! 感動! です('v')
まだまだ文章、構成力共に拙い作品ですが、
皆様のご意見、お力をお借りすることでいつか上手に書けるようになりたいと願っています。
これからもよろしくお願い致します。
拙作に目を通して頂き誠にありがとうございました。
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