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【連載小説】堕肉の果て ~令和に奏でる創造の序曲(プレリュード)~

第二部 五章 続メダカの王様 
858.発心

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 ナッキは思う、恐らくサニーも同時に思ったのではないだろうか?
 ナガチカ…… 彼もまた紛う事なき王の資質を持っていたのだと……

 この極北の地に居を移さざる得ない状況で、ギリギリ以上のプレッシャーを感じながら、最善、それだけを求め続け、迷い、間違い、自分を肯定しそして否定しながらも、仲間達の為に苦しみ続けて来た、その葛藤が如実に感じられる、そんな言葉、いいや魂の慟哭を聞かされた気がしていたのである。

 ナッキは短い言葉を送る。

「うんっ、ナガチカっ! 頑張ってぇ!」

 サニーも同様だ。

「ナガチカなら大丈夫っ! 頑張れるよぉ!」

 人は過ちを繰り返す、しかし過ちの先に改心し、再び己が真実求めた答えを追い続ける、そんな不確かな者なのでは無かろうか。

 我が父、ナガチカはかつて間違いを犯したのかもしれない、いいや、恐らく間違ったのだろう。
 それも一度ではなく何度も何度も、同様の過ちを繰り返して来たに違いない……
 今後もそれを繰り返すかもしれない…… だがしかし、やり直そう、ちゃんと生きよう! そう思い至った彼、いいや父の思いを誰が否定出来ると言うのだろうか? 王侯貴族? 知者? 賢者? 一度も間違いをした事が無い完璧者? 胸を張って言おう、どんなに立派で完璧、壁を全うし続けてきた者であっても、この弱弱しいほんの一握の心を否定する事など出来ない筈だっ!

 この惨めで悲壮感に溢れた覚悟こそ、人を人足らしめている唯一の思いなのだから…… (あくまでも観察者の私見です)

 父に限った事ではなく、祖母コユキの様に何かを切欠きっかけにして変わる例、父方の祖父光影ミツカゲの様に恩義を感じて先入観を乗り越えたケース、様々だろうが生き方を見直してやり直す事に遅すぎるとか早すぎる、そんな批判や否定は筋違いだろう。

 少なくとも、十年間の停滞をって父の人生を否定する気は私には無い。
 例え狂気の動物愛、性癖持ちであろうとも、デリカシーに欠ける空気読めないおっさんだろうと、だ。

 それに……
 父は言った、心の多くを占めているのは、母と私の事であると……
 それだけで…… いいや、この言葉をどれほど夢に見てきただろうか……

 捨てられた、見捨てられたのだ、そう思い続けた私にとってはこの父の言葉は、特別な意味を含んで心の奥底まで響いた。
 そうだったのか、この一言に尽きる。

 父は停滞を恥じて旅立つ時、臆面も無く私と母の事が心を覆っている、そう口にしていたのである。
 正直、嬉しい……
 この後、再び見える事はなかった私達親子ではあるが、この心が知れただけで、今回の観察に特殊な価値を感じてしまう私、観察者であった。

 そんな事をつらつら考えている内に、最愛の父、ナガチカはミミズを与え終え、ゆっくりとした歩調でハタンガ村に帰って行った。
 残ったナッキとサニー、他の幹部達も、父への認識を改めてくれたようで、明日の旅立ちを見送る為に、今日は避難していたメンバーも連れてのハタンガ遠征を決めてくれたようだ。

 まあ、凶悪な魔力が消え失せた、いいや池の北側に移ったんだったか? カルキノスの殺気が失せた水路であればノンストレスで行けるだろう、良かった良かった。


お読みいただきありがとうございます。
感謝! 感激! 感動! です('v')
まだまだ文章、構成力共に拙い作品ですが、
皆様のご意見、お力をお借りすることでいつか上手に書けるようになりたいと願っています。
これからもよろしくお願い致します。
拙作に目を通して頂き誠にありがとうございました。

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