【連載小説】堕肉の果て ~令和に奏でる創造の序曲(プレリュード)~
あらすじ・目次
第三部 六章
リベルタドーレス ~解放者たち~
1328.旅立ち Third time
他の地と違い、平穏を約束されたハタンガの道行は、これまでの旅の中で最も暢気でゆったりとした物となった。
女王アリス様の加護は地を覆い、空を包み込み、まだ尚あり余る恩恵は吹く風にすら清浄と安らぎを与えてくれていたのである。
二日? いや四日間だったかな? 若しかしたら二十日位だったかもしれない。
私とペジオはクルン=ウラフ、ハタンガの東に位置した森を目指して気楽な旅を満喫した。
昼間は平原に繁茂した豊かな草々を踏みしめて歩き続け、夕暮れを前にしてその甘さを食んでこれでもかと言う程に空腹を満たし、夜の闇を満天の星の見下ろす中、草に包まれて温かな眠りを享受し、朝には彼等が身に纏った清浄な朝露で渇きを癒したのだ。
安寧と平穏、世界の全ては知り様も無いが、それまでの私が求める理想が確かに感じられた、そんな夢の如き旅だったのでは無いだろうか。
この世にこれほどすばらしい場所が存在していたなんて信じられない、そんな気持ちであった。
あの道中、私達は何か話をしたのか?
ペジオはそもそも話をしない、と言うか声を出さない。
私は、そう、私は何か話し掛けていたのかもしれないな、いや、きっと五月蝿い位に捲くし立てていた事だろうな。
とるに足り無い内容、夜の寒さだったり昼間の暑さ、食んだ草の甘さ加減やその日の目覚め具合まで。
ははは、ちゃんと思い出せば四六時中、それこそ目覚めた瞬間から眠りに就くまでの間中、私は語り止んではいなかったな。
そうだった…… 日々の出来事だけじゃなく、かつて過ごした仲間たちとの二年の旅の想い出や、それ以前の事、私しか知らないシセンの事や家族との話まで何でも口にしていた筈だ……
ペジオは私の言葉を気にするでもなく、いつも通りの風情で過ごしていた。
只、話の内容が先祖からの言い伝え、極東ニンゲンの事になった時だけはいつも以上に鼻をヒクヒクと動かしていたな、興味が湧いたのかもしれない。
安全で順調な旅は程無く終わりを迎えた。
それは同時にペジオとの別れも意味していた。
行く手の先に姿を表した大河の向こう、草原の奥に広大で鬱蒼とした森林が広がっていた。
クルン=ウラフの森だ、一目でそれと判った。
右手に続いていた岩の山脈が突然途切れ、その辺りから大河は北に向けて流れている、聞かされていたハタンガの終点だ。
お読みいただきありがとうございます。
感謝! 感激! 感動! です('v')
まだまだ文章、構成力共に拙い作品ですが、
皆様のご意見、お力をお借りすることでいつか上手に書けるようになりたいと願っています。
これからもよろしくお願い致します。
拙作に目を通して頂き誠にありがとうございました。
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