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【連載小説】堕肉の果て ~令和に奏でる創造の序曲(プレリュード)~

第三部 六章 リベルタドーレス ~解放者たち~
879.遠駆け

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 ムニャムニャしながら言ったレイブ少年いまだ八歳に、この時代では充分大人なバストロ二十七歳は、唯一の左目を開き切れない程の分厚いメヤニに覆わせながら偉そうに答える、因みに特大の欠伸あくびつきだ。

「ん? ふああぁー、いいや水汲みは昨日の内に俺が余計にやって置いたから良いぞ、ふあぁ、ムグムグ、えっと何だったか? ああ、そうそう、今日の遠駆けは軽めで良いぞ、その代わり、戻ってくる道すがら若木を集めて来て欲しいんだ、なに、然程大きい梢じゃなくても良いんだ、焚き付けになりそうな細枝が欲しいんだよ…… そうだな? 俺位の梢かな? 二、三百本集めて来てくれ、その後で朝飯にしよう、どうだ?」

 私、常識者である観察者の偽らざる感想を言えば、馬鹿言ってるんじゃねーよ、んなチッサイ子供がお前みたいな大人の男の身長、皆さんに判り易く言えば二メートル位と表現すれば判って頂き易いかも知れないな、んな物を二百本、三百本? 出来る訳無いじゃないかっ! 無茶振りにも程があるだろう!

 しかし、私の想像を全ブッチする感じでお子様レイブが事も無げに答えたのである。

「えっ、今日ってそれだけで良いの? 本当にぃ! そんな小さな木を四、五百本取って来るだけで良いっていうのぉ? 喜んでやるに決まってるよぉっ! 何だろう…… 今日は誕生日でも無いしぃ…… まあ、いいやっ! すぐ行って来るよぉ! その後はご飯だねっ、やったぁ、行こうギレスラっ! 今日はラッキーだねぇ!」

「グガァッ♪」

…………どうやら魔術師へと至る道の険しさの度合いを、私とも有ろうものが正しく理解出来ていなかったようだ。
 到底不可能だろうと思えたバストロの要求は、レイブ少年にとってはボーナス回並みのサービスだったらしい…… 成獣のマウンテンゴリラでも途中で挫ける位の事だと言うのに…… 人類、取り分け魔術師達の進化、進化? まあ、変化と言うヤツは恐ろしい事である……

 山間に掛かっていた赤い太陽がすっかり昇り切り、金色の灯りを大地に届け始めた頃、少年レイブは七百本目位の梢を洞穴の前に放り投げながら言う。

「師匠、そろそろご飯にしてよぉ! お腹がペコペコだよぉ!」

 すぐ脇で、生木の梢を手折たおりながら格子状に積み重ねて乾燥の準備を進めていたバストロが申し訳無さそうに答える。

「ああー、もう少し待てないかレイブ? 直にヴノが戻ってくるだろうし、ジグエラもギレスラのご飯を持って帰ってくるんじゃないかな? もう少しだけ辛抱してくれよ、な?」

「ぶーっ! 本当に少しだけだからねっ! じゃなきゃ飢え死にするんだからさっ…… ああ、もう目の前が暗くなってきたよ…… 悲しいよ、まさか飢えて死ぬとはね…… さようなら、おじさん、おっと師匠…… ありがとう、そして、さ、さようなら……」

 レイブの悪ふざけにバストロが苦笑いを浮かべていると、大きな羽音と共にジグエラが着陸した。



お読みいただきありがとうございます。
感謝! 感激! 感動! です('v')
まだまだ文章、構成力共に拙い作品ですが、
皆様のご意見、お力をお借りすることでいつか上手に書けるようになりたいと願っています。
これからもよろしくお願い致します。
拙作に目を通して頂き誠にありがとうございました。

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