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【連載小説】堕肉の果て ~令和に奏でる創造の序曲(プレリュード)~

第三章 苦痛の葬送曲(レクイエム)
660.ゴッド・フル・バースト(挿絵あり)

はじめての方はコチラ→ ◆あらすじ◆目次◆

 レグバ達は答える事無く三度みたび、スキル発動の声を合わせた。

「デスティニー! 少し発射が遅かったぞ! しっかり合わせよう! せーの!」

「「「「ゴッド・フル・バーストォー!」」」」

 今度こそ、ぴったり合った声はコユキと善悪をサタナキアに融合させるのに十分なハーモニーであった筈である。
 先ほどの二回より眩く輝く光の奔流がコユキと善悪、そしてサタナキアを包み込んだのだ。

 ありがとう、コユキ、そして善悪…… 僕たち私たちは君たちの事を忘れることは無いだろう、只々有難う、そして、さようなら……
 さしもの私、観察者ですらそう思った次の瞬間、あの阿呆みたいな声が響いたのである。

「あれれぇ? 善悪! アタシ達ってまだ生きてるみたいだわよぉ? どうなってんの? これってぇ!」

「あれえ? 何でござろ? んまあ、レグバも初めての試みだからとかそんな理由なんじゃないのかなぁ? 旅立つ覚悟は十分なのでござるっ! 四度トライするのでござるよっ! レグバァッ?」

 少し押されたせいか肩車が崩れたらしく、直立した二人はそれぞれ声を上げたようだ。
 ロットが顔に冷や汗を浮かべながら答える。

「お、応っ! い、行くぞぉっ! 『ゴッド・フル・バーストーォ!』」

 ……………………
 ………………
 …………
 ……

 二十六回目のゴッドフルバーストは無事コユキと善悪、そしてサタナキアに直撃したのである。
 リエが面倒臭そうに言う。

「ユキ姉、ああん」

 オルクスとモラクスも続いた。

「三センチっと、王国の剣っと!」

「あー、コユキ様、善悪様ぁ、あー、でしたっけ? ふあぁわぁー眠っ!」

 随分飽きている感じのリエとオルクス、モラクスを無視する感じでコユキはロットに詰め寄った。
 既に来賓の半分ぐらいは勝手に帰ってしまっているし……

「ちょ、ちょっとぉ、ロット神様? どうなっているのよぉ! んねぇ? アンタ等本当に出来るんでしょうねぇ? 次こそ、二十七回目こそは成功させなさいよ? マジでっ! これアタシ達が恥ずかしいパターンなんじゃないのん? 善悪ぅ?」

「そうでござるよっ! 何か拙者達の覚悟が足りないから駄目だった! 的な顔で帰っていく客が多いのでござるよっ! これって、とんだ風評被害でござろ? ちゃんと僕チンとコユキ殿を殺すのでござるよっ! 判ったぁ?」

「う、うん…… 判っているんだけど、ね…… んじゃもう一回っ! 皆本気でやってみようっ! 二十七回目の正直って言うからなっ! 行っくっぞっぉー! ゴッド?」

 残りの三人が声を合わせた。

「「「フル・バーストー!」」」

「あ、ユキ姉」

「えっと三センチと王国の剣」

「はいはい、コユキ、善悪、おっと様だったか」

 ヒュゥーウゥー、パチャッ!

 軽い水音的な音を残して、運命神レグバのファイナルウェポン、ゴッドフルバーストは今回も無事、なんら影響を与える事無く消え去ってしまったのである。
 
 すぐさま、ここまでの二十七回、特にここ最近の十回位と同じ様にコユキが叫んだ。

「また失敗じゃないのぅ! 次こそ成功させるのよっ! なに寝てんのよっ! ほらほら立って、もう一発よっ! ファイトよファイト! ファイト一発なのよぉ!」

「…………ゴットフルバーストっ」

「……」

 一方の善悪は無言のままで、どこか懐疑的な視線をレグバ達に向けていた。(今更)
 そんな善悪の視線を気にする風も無く、レグバ達は二十八回目のフルバーストを送り出したのである。

 ヒュゥゥー! ピチョンッ……

「危ないっ! 伏せてっ! くぅぅっ! 良し、何とか逸らす事が出来たわね! 良かったぁ」

 弱々しい衝撃音が響くと同時に、力に溢れかえった声がこの場に響いたのであった。


拙作をお読みいただきありがとうございました!

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