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【連載小説】堕肉の果て ~令和に奏でる創造の序曲(プレリュード)~

第二部 五章 続メダカの王様 
855.警戒

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 翌夕、宣言通り『美しケ池』を三度みたび訪れたナガチカは両手に大きなバケツを持って現れたのである。

 いつも以上に人懐っこそうな笑顔を浮かべ挨拶を口にする彼の視線が、一瞬だけ鋭い物に変わり、素早く池全体を見回したのをナッキが見逃す事は無かった。
 内心で数段高めた警戒心をおもてには微塵も出さずに笑顔のナッキは言う。

「うわぁ、本当にご馳走、ミミズを持って来てくれたんだねぇ、ナガチカぁ! 皆楽しみに待って居たんだよぉ! 本当にナガチカは親切だなぁ!」

 ナガチカも又、強張った笑顔を崩す事無く答える。

「あはは、私がナッキ殿との約束を破る訳が無いじゃないですか? ほら、沢山持ってきたんですよ、ミミズ! 皆さんに喜んで頂きたい、その一心で一杯捕まえて来たんですからね! お腹一杯食べて下さいねぇ、所でヘロンたち鳥やカエルさん達はまだお帰りではないのですかぁ?」

――――やっぱり…… ナガチカの言葉を額面通りに取ったらとんでもない事になってしまいそうだ…… 池の皆を守る為に、頑張って煙に巻いてやるぞっ!

「うん、どこか遠くに用事でも出来たんじゃないかなぁ? それか非才な僕を見限って他所よそに行ってしまったのかもねぇ~、実はね、昨日の夜中位からさ、『存在の絆』も繋がらないままなんだよぉ」

 無論、大嘘である。
 いいや、ナッキの偽らざる気持ち、『誰もド変態に汚させない』、そんな一途な思いから出た方便だったのだろう。

 昨夜から今日の早朝にかけて、『美しケ池』の幹部達は、超ド級の変態ナガチカの来訪に対する為、一睡もしないで万全を期していたのである。
 具体的には、想像に易いだろうが鳥とカエル、進化の枝分かれが比較的哺乳類に近い者達を、池から避難させたのである。

 避難場所に選んだのは、森の中に隠された沼とその周辺、つまり長老であるオサガメ、キトラが治めている地域であった。
 他に頼れる者を知らないから…… そんな消極的な考えから求めた声に答えた長老、キトラの返した言葉は、ナッキと仲間達を望外の多幸感と安心感で包み込んだのだ。

 曰く、

『では私もナッキの配下に加えて貰おうかのぉ、さすれば私の『防御力強化』と『気配隠蔽』が皆にも伝播するかも知れないじゃろう?』

だった。

 この言を受けたナッキは、すぐさまキトラとその眷属たちを池に迎え入れたのである。
 役所は『宰相』であるメダカ達を上回る、なんと、『副王』の席を準備した上で、である。
 くすり、そう小さく笑いを漏らした後、長老キトラは副王の地位に着く事を快諾したのだ。

 その後、例の、皆一緒だぁ! メダカ達ぃ隙間を埋めてぇ! の、大騒ぎを経て、ほぼ全ての仲間達が防御力を強化して自らの存在を隠しおおせる『気配隠蔽』を手に入れた事により、森の中の沼周辺で息を潜め、存在を掻き消しているのが現状なのであった。



お読みいただきありがとうございます。
感謝! 感激! 感動! です('v')
まだまだ文章、構成力共に拙い作品ですが、
皆様のご意見、お力をお借りすることでいつか上手に書けるようになりたいと願っています。
これからもよろしくお願い致します。
拙作に目を通して頂き誠にありがとうございました。

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