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【連載小説】堕肉の果て ~令和に奏でる創造の序曲(プレリュード)~

あらすじ・目次 


第三部 六章

リベルタドーレス ~解放者たち~

981.紫の星


 改めて表情に緊張を浮かべたペトラはゴクリと喉を鳴らしたきりで、じぃーっと冷たく輝く刀身を見つめるのであった。

 その時。

 ガリガリガリィッ! ガッガッガッガッ! ガリガリィッ!

『っ!』

 大きな音が聞こえた方向、倉庫からこの隠れ家に繋がる通路の方を振り向いたペトラの目に映った物は……
 狭いトンネルの向こうから差し込まれたのであろう、鋭い剣の切っ先が、例の硬過ぎる岩を削り崩そうと激しく撃ち付けられている景色であった。

『っ? っ!』

 赤く豪奢で美しいその刀身を見たペトラは、予想外の事に再び息を飲み込んだのである。
 声を発さなかったのは賢明、それ以外表現出来ないグッジョブ、ナイスプレーであった。

 ガリガリガリガリガリガリガリガリィ、ガッガッガッ! ガンガンッ! ………………

『………………………… 諦めてくれた、かな? で、でも、あの剣ってぇ、確か……………… はっ、こ、こうしちゃいられんっ! い、急がないとおぉっ!』

 レイブの虎の子だった石工いしく道具を容易に破壊した通路の硬い石は、青いオーラを背負った黒衣の襲撃者をも拒んでくれたらしい。
 当のレイブの左腕、肩から先を砕いた憎い硬い石では有るが、この時のペトラにとっては『ありがとう』、そんな感謝の念しか思い浮かばなかったのであった。

『さて…… 逝くか…… なるようになれっ! 南無三っ!』

 グサッ! ズブズブッ~!

『カッ! ハッ! い、痛いぃぃ……』

 襲撃者が諦めて去ったと判断したペトラは、その前肢に掴んでいたナイフを、勢い良く自身の下顎に向けて突き刺したのである。
 ボトボトと流れ落ちる鮮血を自分の下に寝そべる兄達、石像みたいなレイブとカサカサのミイラっぽくなっている蜥蜴とかげの口に向けて流し続けるペトラであった。

『飲んで、飲んで少しでも回復してちょうだいよぉー! レイブお兄ちゃん、ギレスラお兄ちゃーん、飲んで…… う、うーん…… キュゥー…………』 パタリ

 失血に因る物だろう、小さなペトラは膨らんでいた体をガリガリに細らせて、一口も飲み込んでくれなかった人型の石と蜥蜴のミイラその間に寄り添うように痩せてしまった自身の体を倒れこませ、重なり合って意識を失うのであった。

 突然の魔力災害。
 謎の青いオーラを纏った黒衣の襲撃者。
 レイブの左腕が石化して砕け散り、ギレスラも鱗を失い瀕死になった。
 襲撃者は去った様だが、この現状を唯一何とかしてくれそうだったペトラまで、失血死を迎えようとしている。

 一見絶望しかない状況に、希望の星が文字通り一筋の希望となって降注いだのであった。
 星、その名の通り中空の一点から鮮やかな光が、流星のように長い尾を引きながら、この岩窟に向けて一直線に降り下ったのである。

 流星ならば隕石や隕鉄の類である核が存在し、降り下った場所には壊滅的な破壊をもたらす筈だった。
 だが、この紫に輝いた光は、岩窟に衝突する直前に、速度を落としてフワリと空間に留まった、所謂いわゆるホヴァリングを始めたのである。

 岩窟の入り口辺りで、ほんのわずかな間、フラフラと浮かんでいた紫の光は、再び速度を高めて岩窟の奥へと飛び、最奥の倉庫へ、倉庫から繋がった通路を経て、幼いスリーマンセルが死に瀕している隠れ場所へと飛び込んだのであった。

 途中で狭苦しくここまでレイブも襲撃者も破壊困難だった通路のロンズデーライト、バアル由来の超硬い岩石をサクッと削って辿り着いた紫の光は、迷う事無く三等分にその身を分けて、レイブ、ギレスラ、ペトラの体の中に沈み込んで、次の瞬間、三者の体を紫色のオーラで包んだのであった。

 未熟故のミスによって、呼吸すらしていなかったスリーマンセルは、不思議な光に包まれながら、やがて、スヤスヤといった静かな寝息を立て始めたのである。



お読みいただきありがとうございます。
感謝! 感激! 感動! です('v')
まだまだ文章、構成力共に拙い作品ですが、
皆様のご意見、お力をお借りすることでいつか上手に書けるようになりたいと願っています。
これからもよろしくお願い致します。
拙作に目を通して頂き誠にありがとうございました。

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