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【連載小説】堕肉の果て ~令和に奏でる創造の序曲(プレリュード)~

第二部 五章 続メダカの王様
777.不思議な石

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 ナッキは自分よりは随分小さい鳥を見下ろしながら言う。

「サニーを治す? それ本当だろうね、もしこれ以上酷い事をする気なら――――」

「出せ、治す、早くしろ、手遅れなる、急げ、出せ、治す」

 つたない言葉であったが、反してその表情は真剣そのものである。
 ナッキは静かに口の中からサニーを出して自分の前に横たえた、が、どうした事か、先程意識を失った時と違い、サニーの小さな体は水中ではなく水面にプカリと浮かび上がってしまい、良く見れば、口の開け閉めも極端に少なく酸素不足に陥っている事はナッキの目にも明らかであった。

「さ、サニー! しっかりぃっ!」

 シュバッ! ズボッ! コトッ!

「っ! な、何を!?」

 症状が悪化したらしく、今にも身罷みまかってしまいそうなサニーに顔を近づけて名を呼ぶナッキに対して、ダイサギは鋭く尖ったくちばしを素早く動かして、額を、正確には額に喰い込んでいた緑の石、元枕だった物を咥えて引き抜き、水面に浮かんだサニーの体の上にそうっと置いたのである。

「え、嘘……」

 ナッキが驚きつつも見つめていると、緑の石を置かれたサニーの体は、石の周囲の肉が盛り上がり始め、あっと言う間に石を取り込んでしまったではないか。
 と同時に、全身に負っていた裂傷が見る見る間に塞がり、しばらくすると弱かった呼吸も力強い物に戻って行ったのである。

「僕の枕にこんな力が……」

 驚愕の呟きを漏らしたナッキにダイサギは言う。

「これで、使者、治る、待っていろ、鳥の王、連れてくる、ゴアゥーッ!」

 最後に独特な声で周囲の水鳥に向けて一鳴きすると、東の方へ向けて飛び立ったのである。
 何かの命令だったのだろうか、それ以降鳥達は距離を置いて無言になり、ナッキは回復して行くサニーをゆっくりと見守る事が出来たのだ。

 因みにこのタイミングで踏み付けていた白鷺三羽を解放したナッキである、結構重症っぽかったが仲間達が介抱しているので、多分大丈夫だろう。

 しばらくすると剥離した鱗も薄っすらと再生し始め、気のせいだろうか、心なしか大きくなった様に見えるサニーは目を開けて呟きを漏らす。

「ああ、良く寝たぁ、しかし怖い夢を見ちゃったな、死に掛けるなんて悪夢だよ、リアル過ぎて痛みまで感じちゃったし……」

 ナッキは喜びを顕しつつも心配そうな声で言う。

「良かった、目を覚ましたんだねサニー! 大丈夫かい? 痛い所は無いかい?」

「あ、ナッキ! うん? 別に痛い所は無いみたいだけど…… てかナッキ、額の石! 枕無くなってるよ、落としちゃったとか?」

「ああ、それならサニーの体に――――」

………………

「へー、ナッキの枕にそんな力が有ったなんてねー」

「でしょ? 僕も驚いて居たんだよ!」

 サニーが気を失っていた間の一部始終を説明した後、二匹はそんな会話を交わした。

「でもぼ、アタシの体は治ったけど、今度はナッキの傷が治らないのは困ったよね…… 額の血、止まらないね」

 ナッキはサニーに向けて満面の笑顔で答える。

「心配しないで、こんなのかすり傷さ! それよりサニーが無事で本当に良かったよ! 君に何か有ったら僕、何をしていたか判らなかったよ!」

「えっ! そうなの?」

「うん、サニーが浮かんじゃって息も弱くなって行くのを見た時、こう、体の中から怒り? 不安? うーん、喪失感かなぁ? 何とも言えない感情が湧き上がって来て普通じゃいられなくなっちゃったんだよぉー、もう会えない、とか思っちゃったからさ…… 治ってくれて嬉しいよ…… これからもずっと一緒に居ようね、サニー」

「っ! う、うん…… そうだね、ずっと一緒だよナッキ♪」

「ねっ! あははは♪」

「えへへ♪」


お読みいただきありがとうございます。
感謝! 感激! 感動! です('v')
まだまだ文章、構成力共に拙い作品ですが、
皆様のご意見、お力をお借りすることでいつか上手に書けるようになりたいと願っています。
これからもよろしくお願い致します。
拙作に目を通して頂き誠にありがとうございました。

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