見出し画像

【連載小説】堕肉の果て ~令和に奏でる創造の序曲(プレリュード)~

あらすじ・目次 


第三部 六章

リベルタドーレス ~解放者たち~

1125.Re.死なないで


 テューポーンは背中を見せたまま言葉を続ける。

『不敬を承知で乱暴な方法を取らせて頂きます、御免っ!』

 ブアッ!

 テューポーンから放出される魔力が一瞬にして爆発する様に増大し、レイブとアスタロトは洞窟の外まで押し出されてしまった。

 顔を上げた二人に対して、ゆっくりと振り返ったテューポーンの周囲には、最早魔力の類は消え去ってしまっている事が明らかであった。

『さらばです、我が君、レイブ殿』

 その言葉を最後に霧散していくテューポーン。
 レイブは再び強く願った。

――――し、死なないで(アゲイン)

 思った瞬間、霧散しかけたテューポーンの魔力が集まって、指先ほどの小さな光となってユラユラと洞窟から出て来る。
 ホタルの様な弱々しい光はそのまま岩山の斜面、草が繁茂した辺りに飛んで消えて行くのであった。

 逃げたのだろうか? まあ、無事を祈ろう……

 ポカンと口を開けて呆けた感じで見送っていたレイブとアスタロト。
 のんびりとした時間は長くは続かず、数秒後に叫んだのはアスタロトであった。

『くっ、また魔力を吸い始めたかっ! 『反射リフレクション』っ! な、何なのだこの力はっ? れ、レイブ早く逃げよっ、長くは持たんぞ! くうぅっ!』

「えっ!」

 テューポーンの比ではない。
 アスタロトは周囲に展開した反射の結界毎、凄まじい速度で洞窟奥の何かに吸収されて行くのであった。

『逃げろ、と、言っているのだ、愚か、者、我、が、レ、イ、ブ、よ……』

 途切れ途切れの拙い言葉に反してアスタロトの表情は優しげな笑みを湛えている。
 レイブは何かを言おうとしたが声に出すことが出来ず、三度心中で強く強く願うのであった。

――――死なないで(トライス)

と。

 テューポーンの時と同じ様に、半透明で霧散しかけたアスタロトはたちまち収束を果たし、その様子を目にしたレイブはアスタロトを右手に掴むと、洞窟から少し離れた場所、先程ギレスラとペトラを避難させた岩陰に向かって猛ダッシュしたのである。

 岩に身を寄せて洞窟の入り口を探ってみたが、今の所追跡者の類は無い様だ。
 レイブは続けてペトラとギレスラの様子を探る。
 二頭ともまだ眠っているようだが、見た所容態は安定している様に見えた。

 ほっと安堵の息を吐いたレイブは右手に握っていたアスタロトに話しかけながら視線を移す。

「ほらこうやって逃げれば良いんじゃないですか、無理に留まって戦うこと無いんだからぁ~、あれ? アスタさん? って、うわあぁっ!」

 しっかりと右腕に掴んでいた筈のアスタロトの腕はそこには無かった、勿論、腕から続くアスタロトの肉体も同様である。

 腕と全身は無かったものの、レイブの右手が何も掴んでいなかった訳では無い。
 開いた右手の中にはてのひらにすっぽり納まる位の小さな存在がいた、というか不思議そうに自身の体を見回していた。



お読みいただきありがとうございます。
感謝! 感激! 感動! です('v')
まだまだ文章、構成力共に拙い作品ですが、
皆様のご意見、お力をお借りすることでいつか上手に書けるようになりたいと願っています。
これからもよろしくお願い致します。
拙作に目を通して頂き誠にありがとうございました。

Copyright(C)2019-KEY-STU

この記事が参加している募集

スキしてみて

励みになります (*๓´╰╯`๓)♡