【連載小説】堕肉の果て ~令和に奏でる創造の序曲(プレリュード)~
あらすじ・目次
第三部 六章
リベルタドーレス ~解放者たち~
1097.強さを下さい
メルルメノクが結構長考し、そこまで思った時にアスタロトが声に出して言う。
重ねて言って置くが、メルルメノクが思っていた事に対して当たり前のように声に出して発声しているのである。
『おいお前、強さが欲しいのか?』
『えっ?』
『馬鹿か? お前、今、気を失ってる設定だったんじゃないのか? ほれ、赤い小娘が怪しんでこちらを見ているだろうがぁ! 本気で望むのならば心で思えば良い! 折角出会ったのだ、強さを欲するなら与えてくれようではないか! くふふふ』
最後の怪しい笑いを気にする事もなくメルルメノクは心中で願い捲る。
――――た、頼む! 強さを、強さを下さい! あの女に勝てる戦闘力じゃなくても打ち殺されない位の耐久力でも良いです! なんなら争いを未然に抑えられる程度の交渉力の強さでも良いですし、見逃して貰う為に拠出しうる経済力、止め役の周囲に対する影響力の強さでも構いません! ああ、どうか私に力を与えてくださいぃ!
『えっと…… 強さ、で、良いんだよな?』
――――はい、強さを下さい! 死にたくないんですっ!
『はぁ、まあ良かろう…… さてと、ズメイって事は元々ヘビだったよな、良しっ、『泥から生まれ出し信託の守護者よ、ピューティアーの声に幻惑と穢れでのみ救いを与え続けし占星の姫よ、我が呼び声に応え今こそ臍の聖石よりその身を顕し、汝を求める弱き生命に力を与えよ、我が名はディアボロス、さあ目覚めよ、『怨讐猛蛇』』
テューポーンを呼び出した時と同じ様に、アスタロトが呪文的な言葉を言い終えた瞬間、メルルメノクを囲んだ地面から黒々とした瓦斯が噴出し、瞬く間に巨大な体を包み込んでしまった。
ガスは染み込むように竜の肉体内へと入り込んで行き、すっかり消え去った時、メルルメノクはそれまで必死に閉じていた両の眼を見開きながら思ったのである。
――――ぬおっ! 体中から力が溢れ出して来る! こ、これならばっ!
『グァハハハッー! 最早私に恐れる物など存在しないわっ! ふふんっ! 狭量で偏屈な鬼の王めが! 貴様など敵ではないが掛かって来ると言うなら揉んでやろう! さあどうするのだっ!』
『む? お前も? そうか…… ふむ、まあ良かろう、レイブ達も世話になったからな、お前にも力を与えてやろう』
『へ?』
勢い良く立ち上がってズィナミを挑発したメルルメノクであったが、突然一人語りを始めたアスタロトの言葉に不穏な物を感じ、マヌケな声と共に視線を向けた先には先程よりも数段悪意に満ちたズィナミ・ヴァーズのニヤリとした表情、文字通り不敵な笑みが浮かんでいるのであった。
『『不死の精霊に君臨せし麗しき蝮の乙女よ、黄金の翼、腐毒の体毛、家畜の災いにして怪物の母、汝の祖父の召還に応じ、彼の者に宿り力を振るうが良い、顕現せよ『針鼠乙女』』、どうだ? 特別に我の孫娘を呼んでやったのだ、漲るであろうが?』
アスタロトに問われたズィナミは満足気に頷いてみせたが、メルルメノクと違ってその見た目には特段の変化は見られなかった。
しかし、自信に溢れた表情だけでなく全身から立ち昇る闘気の密度がこれまでとは一線を画している事が容易に察せられるほどである。
お読みいただきありがとうございます。
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まだまだ文章、構成力共に拙い作品ですが、
皆様のご意見、お力をお借りすることでいつか上手に書けるようになりたいと願っています。
これからもよろしくお願い致します。
拙作に目を通して頂き誠にありがとうございました。
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