【連載小説】堕肉の果て ~令和に奏でる創造の序曲(プレリュード)~
あらすじ・目次
第三部 六章
リベルタドーレス ~解放者たち~
1116.手慰み
その後はもうてんやわんやの大騒ぎ、テイク2であった。
再び岩石の沸点を越えさせたテューポーンは罵声の只中で大きな体を小さく屈め、氷のブレスを噴き掛けようとしたギレスラはレイブのガチ殴りで昏倒させられ、ならば水を! そんな感じで素早く動こうとしたペトラは熱伝導と気化速度の説明を雑に聞かされ、全員熱気に汗を掻きながらこの夜が更けていくのを過ごしていくのであった。
皆が苦労をしながら何とか事なきを得た深夜……
気を失ったようにぐったりとした悪魔達と馴染み深い竜と豚猪、仲間達の姿を見回したレイブは何故か微笑ましい気持ちで眠りに着くのであった。
トラブルまみれのドタバタな野営となったこの日、レイブは今日まで過ごしたラマスや弟子たちとの笑顔に包まれた夜に比しても、なんとも賑やかで楽しい夜、そんな風に感じてしまっていたのである。
その日から、日中明るい内は山裾を東に移動し続け、夜はアスタロトの気紛れな好みで様々なテーマに沿った環境でビパークを繰り返したスリーマンセル。
毎晩毎晩、必要も無いのに焚き火を囲み、様々な話しを交し合い、時に悪魔二柱の昔話に瞳を輝かせ、魔力談義に花を咲かせ、手品の様に鮮やかな魔術の数々に驚嘆の声を上げ、変に器用なテューポーンお手製のシチューの出来栄えに舌鼓を打ちつつ、気が付けばどこか見覚えがある岩山を眼前にして四回目の夜を迎えたのであった。
因みに初日以降はギレスラが適度なブレスで快適な焚き火を提供していた、こいつらにも学習能力はちゃーんとあるのだ。
これまでの十年近く、食事と言えば生モンスター汁しか口にしてこなかったスリーマンセルであったが、強引とも言えるアスタロトの指示でこの四日間はしっかりと煮炊き、若しくは焼き上げられた食事を摂って来たことも特筆すべき変化と言えるだろう。
パチッパチッ!
この夜のメインイベント、善悪風腹踊りを全身全霊で披露し終えたテューポーンが早々と寝息を立てている中。
食後のまったりとした時間が流れる中、アスタロトがレイブ達、スリーマンセルに向けて話し掛ける。
『良し出来たぞ♪ レイブにペトラ、それにギレスラよ! 明日からはこの魔石を使って鍛錬するが良いぞ♪』
『おおっ! どれどれ?』
『ふーん?』
「何なんです?」
三者三様、興味津々で振り返った顔先にアスタロトが放って寄越した魔石は、この数日間で夕食にした数種類のモンスターから取り出した小ぶりな赤い石であった。
但し、通常のモンスターから抜き出した魔石に比べ、石の表面がテラテラとした光彩を放っており、何かやったな魔神様? そう思わせるには充分な加工が施されているように見えた。
『むむっ? 普通の魔石とは違うみたいだわね?』
『うむ、ギラギラしているな』
ペトラとギレスラの声にアスタロトは緩い笑いを浮かべているだけである。
こんな時、辛抱足らずのレイブはストレートに聞いてしまうのだ。
「これはどう言った物なんです、アスタさん?」
この何日かでアスタロトも慣れたのだろう、屈託の欠片も見せずに説明してくれる。
『くふふふ、これはお前達を更なる高み、魔力操作の深遠へと導く我お手製の激レアアイテムだぞっ! ほれペトラ、その魔石からいつもみたいに魔力を吸い上げてみよ! 出来るかな? くふふふ』
『? 吸えばいいのね? うん? こ、これはっ!』
『くふふふ♪』
お読みいただきありがとうございます。
感謝! 感激! 感動! です('v')
まだまだ文章、構成力共に拙い作品ですが、
皆様のご意見、お力をお借りすることでいつか上手に書けるようになりたいと願っています。
これからもよろしくお願い致します。
拙作に目を通して頂き誠にありがとうございました。
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