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【連載小説】堕肉の果て ~令和に奏でる創造の序曲(プレリュード)~

第三部 六章 リベルタドーレス ~解放者たち~
900.守護獣の訪問診療

はじめての方はコチラ→ ◆あらすじ◆目次◆

「んじゃぁ、又ちょっと行って来るな、留守番頼んだぜレイブ、ヴノ?」

 巨大な紅竜、ジグエラの背にまたがったバストロは、両腕に幼猪ようちょペトラと子竜ギレスラを抱えて、地上から見上げているレイブと、その横で寝そべったままで薄目を開けた巨大な猪、ヴノに笑顔で告げた。

 冬がすぐそこまで迫る中、魔術師が出掛ける、遠征を実行する事ははなはだ珍しい、だと言うのに、ここ十数日間のバストロは、レイブとヴノを拠点に置いたままで、忙しく動き捲っていたのであった。

 目的は自分の受け持つ領域内の守護獣に会って現状を確認する事、これである。

 アキマツリの帰路、巨大なロシアデスマンに出会い、われて血抜きをほどこした結果、滴り落ちるヨダレを隠し切れ無い程の歓喜に震えたバストロは、冬篭り用のねぐら、秋口に居た岩山と森に接した高山ではなく、谷の中程に位置する鍾乳窟しょうにゅうくつへ帰り着くと皆に告げたのである。

 それはそれは、それっぽい弁舌べんぜつであった。
 曰く、

「クロトと言えばタイミル地域ではハタンガの守護獣、偉大な故アリスに並ぶとまで言われた魔獣だろ? そんな大物が、爆ぜる、そんな風になってたんだぜ? もしあそこで偶然の邂逅かいこうがなかったら…… ブルルゥッ! 考えただけでも恐ろしい事なんじゃぁ無いかなぁ? どうだ? ………………だろう? んだからさっ! 明日から行けるメンバーだけでもさっ、この周辺の立派な守護獣達の元を訪ねてさっ、出来る限りの協力をすべきだと思うんだよなあ…… 確かにこれは俺たち魔術師の仕事とは違うんだけどな! 見殺しには出来ないんじゃないかなぁ? どう? どう? 皆ぁ?」

だそうだ。

 そんな風に言われてしまっては、まだ幼いレイブやギレスラは頷くしかすべは無いし、スリーマンセルのヴノとジグエラも友の情熱には諸手もろてを挙げて賛成したのである。
 トドメとなったのは小さな黒猪、ペトラの言葉なのであった。

『良いよっ! バストロ師匠、最高だよっ! アタシこの辺りの魔獣、守護獣のことなら良く知っているからさっ! 助けに行こうよっ! あたしもついていくからねぇ!』

「お、おう! 頼むぜぇ、んじゃ明日から頼むな、ペトラ?」

 ペトラは不満そうに両の頬を膨らませた、大変可愛らしい仕草である。

『えー、まだ日も高いのにぃ、今日行かないのぉ? バストロ師匠ぅ、今から行こうよぉ!』

『まあまあ、やる気満々じゃないの? どうするの? バストロ?』

『フォフォフォ! 留守居は俺とレイブに任せておけば良いわい! 行って来い、バストロ、ジグエラ、ギレスラ、そしてペトラよ! ブフォッ!』

「お? おお? そうか…… んじゃあ、今日中に一箇所行っておくか? 良いかレイブ、ヴノの言う事を聞いてしっかりお留守番をするんだぞっ! どうだ? 出来るか?」

「うん、大丈夫だよっ!」

「良しっ! じゃあ行くか! まずは東のきわ、ヒョウモンアザラシのレプトンの入り江に行ってみよう! 全ては儲けの、いいや我々と同じく世界を守る存在、守護獣の為にぃ!」

「『『『『守護獣の為にぃ!』』』』」

「良し、出発だぁ!」

『『『応っ!』』』

「『いってらっしゃーい!』」

 こうして始まった極北を守り続けてきた守護獣に対する訪問診療、往診の旅は最後に残されたプトラナ台地に本拠を構える、巨大なシベリアビッグホーン、ユキヒツジの魔獣、ニヴィコを訪ねるのみとなっていたのである。


お読みいただきありがとうございます。
感謝! 感激! 感動! です('v')
まだまだ文章、構成力共に拙い作品ですが、
皆様のご意見、お力をお借りすることでいつか上手に書けるようになりたいと願っています。
これからもよろしくお願い致します。
拙作に目を通して頂き誠にありがとうございました。

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