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【連載小説】堕肉の果て ~令和に奏でる創造の序曲(プレリュード)~

あらすじ・目次 


第三部 六章

リベルタドーレス ~解放者たち~

1326.考察


 ヴノは山、常識として知ってはいたものの、改めてその意味を思い知らされた気がした。
 恐らく単純なサイズではアリス様より大きかっただろう、正に山、山壁だ。
 この山が唯一逆らえない存在がズィナミの師匠、くだんのグフトマ兄ちゃんだと言うからびっくりだった。

 グフトマのチャンニーは、自らのスリーマンセルを弟子のヴノと同じく弟子のドラゴン、ジグエラと組んでいるそうだ。
 この男前は極端に人見知りで引き篭もりがちな性格で、必要最小限の接触以外を嫌うらしい。
 ズィナミ達を引き取りに来た際も、拳骨を一発づつ食らわせると、一人だけさっさと先に帰ってしまった位だ。
 ドラゴンのジグエラがクネ壁のエンペラを折檻し終えるまで、ズィナミとパリーグは山壁の背に負われてメソメソしっ放しだった事は今でも昨日の事のように思い出されて少し爽快な気分にもなる。

 エンペラが孤児だったかどうかは聞かなかった。
 まあ竜だから卵から孵化するんだろうし孤児も糞も無いか? 無いな。

 それよりもこいつの師匠、ジグエラの色鮮やかさにはびびったものだ、ビビットだけに。
 自然界の摂理や謙遜を嘲笑う気しかない真紅の全身をしていやがった。
 保護色や擬態の必要性を根底から全否定するかの様な豪奢な容姿は、詳しく聞くまでも無くコイツが生物のヒエラルキートップ近くに君臨している事をビシバシ教えてくれていた。
 だからあまり聞かない事にしたのだ。

 鎧のレは同じ様な格好をした奴等に護送されて行った。
 鍛治の里? の王様だとか何とか聞かされたがあまり尊敬されてはいないようだったな……
 因みに孤児かどうかは聞かなかった。
 本名がウィリアム・スミスとか言う、普通過ぎる名前で職業的にもピッタリじゃん! そんな風に思った事ははっきり憶えている。

 ピョン壁のペジオ、ペジオ・アリシアはそれからも随分長くハタンガに留まっていた。
 草原で草を食べたり、そこらでモンスターを追い掛け回しては蹴り殺していたり、高台に上がって空を見続けたりして自由奔放に過ごしていた。

 そう言えば、夜中には、訓練の激しさで寝付けない私の頭を弄りに来たりもしていたがあれは何だったのだろうか? はて……
 孤児、かどうかは兎も角、孤独な奴だったのだ、そう思う。
 一応、聖王? とかなんとか呼ばれていたようだが、どう見ても王様って感じではなかったな。
 多分可哀想なペジオに格好いいニックネームを付けてあげた、そんな所なのだろう。
 優しい世界だ。



お読みいただきありがとうございます。
感謝! 感激! 感動! です('v')
まだまだ文章、構成力共に拙い作品ですが、
皆様のご意見、お力をお借りすることでいつか上手に書けるようになりたいと願っています。
これからもよろしくお願い致します。
拙作に目を通して頂き誠にありがとうございました。

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