【連載小説】堕肉の果て ~令和に奏でる創造の序曲(プレリュード)~
第三部 六章 リベルタドーレス ~解放者たち~
880.ジグエラ
ジグエラの翼はその巨体を飛翔させるのに充分なほどに大きいが、無論、鳥の様に飛んでいる訳ではなく魔力に因る物である。
つまり羽ばたく必要は無いのだが、彼女は離陸と着陸の際には殊更大きく翼を動かすのだ。
多分格好良いとかそんな理由、彼女なりの拘りでも有るのだろう。
大きな翼に比例する様に長く伸びた首と逞しい四肢を持つ成竜ドレイク型のジグエラに対して、嬉しそうに飛び寄るギレスラは、幼竜独特のドラゴネットである。
その特徴は飾りの様に背に付いた小さな翼と、同様に小さく未熟な前肢だ。
下肢とのバランスの悪さから、幼い竜は自然立位が主になるがこれが未熟な体には存外の負担となる。
故に多くの幼竜は、下肢に負担を掛けない為に立っている時も座り込んだ際も、常にその小さな翼をこっそり羽ばたかせて、姿勢制御を補助している、一種のジャイロスコープの役を担っているのである。
それが翼を肥大化させる。
魔力が充分に為り飛翔が可能になっても、大きな翼を羽ばたかせる理由はそこら辺の原体験から来ているのかも知れない。
その事を裏付ける様に、着陸した後で全く意味無く、異様に大きく二、三度翼を動かして見せたジグエラは、丁寧に皮と内臓を取り除いた肉槐を地面に降ろしながら口を開く。
『お待たせギレスラ、朝ご飯を持ってきたわよ♪ バストロとレイブも自分達の朝食を食べなさいな、ヴノが戻るのはもう少し時間が掛かりそうですのよ? 何しろ、小さなお客様を案内しながら戻って来ているのですからね♪』
「へ?」
「ググゥ?」
「小さなお客? 誰だ、ジグエラ」
揃って首を傾げる三者に、ジグエラも首を傾げながら答える。
『さあて誰かしら? 多分ヴノと同族のボアね、随分小さな猪だったけれど? まあ、連れて帰っていた様だし到着すれば判るでしょう! はっきりとは見えなかったのよ、何しろ遥か上空からチラリと見掛けただけなんですものぉ! それこそデイモスの辺りから、いいえ、若しかしたらルナの近くまで飛んだ場所だったかも知れないわ…… 高過ぎて良く見られなかったのよ、オホホホ』
「グガァッ♪」
素直なギレスラはジグエラの言葉に嬉しそうな瞳を輝かせているが、無論嘘、オーヴァーな表現である。
鳥も羽虫も届かぬ上空を飛べる竜種は、折につけてその事を大仰にアピールする向きがあるのだ。
ブレスの威力や戦闘力の強靭さより余程大事な事らしい…… 因みに体色、鱗の色合いなどはどうでも良い、所謂些事扱いであった。
その事を経験上良く知っていたレイブは言う。
「ふーん、じゃあご飯にする? おじさん?」
「師匠だろ? でもまあ、食べるか……」
「やた♪」
拳を握り込んだレイブの横では、誰にも許可を得ていないギレスラが肉槐を頬張り、その姿を優しく見つめるジグエラの金色の虹彩が太陽の光を受けて輝き続けていた。
お読みいただきありがとうございます。
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まだまだ文章、構成力共に拙い作品ですが、
皆様のご意見、お力をお借りすることでいつか上手に書けるようになりたいと願っています。
これからもよろしくお願い致します。
拙作に目を通して頂き誠にありがとうございました。
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