【連載小説】堕肉の果て ~令和に奏でる創造の序曲(プレリュード)~
あらすじ・目次
第三部 六章
リベルタドーレス ~解放者たち~
1294.百聞は一見に如かず
恒温動物に特段の興味を持たないギレスラが代わって声を上げる。
『ふむ、確かこの里に来る時にもそんな事を聞いていたな、動力源に過ぎないとか何とか? とすればガトちゃんが正解なのではないか?』
ペトラも自分なりの見解を続ける。
『確かにね、ユイとジローって神様? 亜神だか何だかの代わりにスキルで結界と浄化をさせてるとか言っていたわよね? ならその仕事をさせる為に代々魔獣を閉じ込めていたって事も頷けるわよ! でも魔獣界隈じゃあ『森王』は名誉な事とされているのよ、ずっと昔からね! それってちょっと妙な話しじゃない? 只の虜囚が名誉な事なんて伝わるかしら?』
『ふむ?』
ここでミロンの後ろで話を聞いていたヘビ面のシュカーラが割って入ってくる。
「いいえそんな事はしていませんよ! 確かに結界と浄化、再生雨の起動をお願いしていましたが閉じ込めるなんて乱暴な事は! ユイ様ジロー様の跡継ぎとも言える御方にそんな非道な事など出来るものですかー!」
シュカーラの背後に集まってきた様々な獣人達も揃って頷いて肯定の意思を表していた。
元になった各種動物達ゆかりの純粋そうな視線が彼らの実直さを嵩上げしている。
『うーむ、嘘では無さそうだな』
『た、確かにね…… つぶらで屈託の欠片も存在しない美しい瞳だわ…… となると』
ペトラの視線が自分に向けられると、ガトは掴んでいたレイブの肩を激しく揺らせながら必死の抗議だ。
「ちょっ、嘘じゃないわよ! こいつらこそ嘘を吐いているんだわ! ねっレイブ、アンタならアタシを信じてくれるわよねっ?」
「お、おう、おほっ♪」
勢い余って飛び出したガトの豊満な胸に目を奪われているレイブにはマトモな判断など出来ないだろう、多分間違いない。
「あら、失礼」
ガトはその変態的な視線に気が付くと慌てて胸を隠したが、念の為にレイブとの距離をしっかり取るのであった。
『どちらが本当の事なのかしら?』
『むうぅっ、判らん』
首を傾げて考え込んだ弟妹に、瞬時に冷静さを取り戻したレイブが答える。
「そんなもんどっちも本当だろう」
『そうなのか?』
「ああ、ガトが嘘を吐くとは思えないしな! それに獣人達だって嘘は吐いていないだろう」
『どうしてそう思うの?』
鈍い質問に答えるレイブは溜息混じりである。
「さっきガトがダソス・ダロスの物真似で出てきた時に見たじゃないか? 獣人たちは跪いて高い場所を見上げていたろ? 閉じ込めたり動けないようにしていたんならまず驚く筈じゃないか? ガトにしたってこんな直ぐばれる嘘なんか吐かないだろうしな! この里をどうにかする気ならタロースや他の悪魔、神様達に頼めば一瞬で壊滅させられるだろ? 嘘とか面倒な事はする必要無いじゃん」
『うーむ、なるほど』
『でも両者の意見は矛盾しているわよ? なんで?』
レイブの溜息は既に深い物に変化している。
「はぁ~、争いや諍いの原因なんて誤解が殆どだろ? 皆でダソス・ダロスの所に向かってみようぜ! そうすりゃ全部すっきり判るだろ?」
「「「「仰る通りです」」」」
「そうねっ、見てくれれば判るわよ、本当に可哀想なんだからっ!」
なるほど、獣人達もガトも物怖じする事無く堂々としている。
つまり、自分に嘘が無い、その事を確信しているらしい。
自分の考えが的を射た物だった事を再認識したレイブは、満足気な笑顔で両者に道案内を促している。
ギレスラとペトラは頼れる兄の背中を追いながら、その歩き姿を満足気に眺めていた。
お読みいただきありがとうございます。
感謝! 感激! 感動! です('v')
まだまだ文章、構成力共に拙い作品ですが、
皆様のご意見、お力をお借りすることでいつか上手に書けるようになりたいと願っています。
これからもよろしくお願い致します。
拙作に目を通して頂き誠にありがとうございました。
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