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【連載小説】堕肉の果て ~令和に奏でる創造の序曲(プレリュード)~

あらすじ・目次 


第三部 六章

リベルタドーレス ~解放者たち~

1227.はっちゃけ?


 望外の賞賛を受けてしまったペトラは鼻先を真っ赤に染めながら答える。

『ちょ、ちょっと褒め過ぎだってば! アタシは只、今有る物で精一杯美味しい物を作ろう、そう考えただけなんだから~、エヘヘ』

『ほ~う』

「いやいや、幾ら考えたって中々作れないだろうし、そもそも工夫の仕方を思い付かないだろ、こんなの? 天才だよ、天才っ!」

『うむ、確かにな』

『えー♪ 天才とか無いわよぉ♪ 何とかしなくちゃって、只々その思いだけではっちゃけ~はっちゃけ~ってやっていたら、ピンッ! と来ただけなのよ~♪』

『ぴ、ピン?』

「はっちゃけ? って何だ?」

 ギレスラとレイブの疑問の声も、慣れないべた褒めで羞恥の極みに居るペトラには届いていない様である。

『それではっちゃけを続けていてピンと来たからさっ、唱えてみたんだ『料理』ってね♪ うふふ♪』

 聞き慣れない言葉にレイブはハテナ満開で聞き返す。

「『料理』? それって一体?」

『『料理』は『料理』よ♪ クッキング(英語)、キュイソン(仏語)、コッヘン(独語)の事よ♪ こんなに皆が喜んでくれるんだったらアタシ、この『料理』(日本語)スキルを極めてみる事にするわ♪』

『きゅい、こへん?』

「ふむ、判らんな」

 なるほど、この時代の食に対する加工法はおよそ調理と呼べる代物とは程遠い事は間違いない。
 干し肉にしろ野菜や果実、アルコール発酵を含む果実水も同様に、調理や料理ではなく、冬季や雨季、不意の飢餓に対する保存や備蓄がその中心なのだ。

 飢えぬよう、ひもじからぬよう準備する食材は、自然、味や食感よりも充分な量と口にした際の安全に重きを置く事となっていった。
 調理は加工に、料理は作業、そう言葉さえ置き換わって来ていたのである。

 ギレスラがからかい半分で口にした言葉、『スキルが生えた』、ペトラに起きた変化はしくも的を射ていたのである。
 慮外の事とは言え、『料理』スキルによって雑草がご馳走に変わるのであれば、まあ、好ましい事なのではなかろうか。

 にしても、はっちゃけにピンッ、か…… 私の記憶に間違いが無ければ皆さんの時代の中年以上しか使わない言葉だと思っていたのだが、はて?
 この日の午後辺りからちょいちょい登場している彼等自身が使い慣れていない言葉…… 何やら意味が有り気では無いだろうか?

 そんな風に考えていた私の思索を吹き飛ばしたのはレイブの大きめの声であった。

「あっ! 大事な事を忘れる所だった! ラマスに、いや、ラマス達に注意して置かなくちゃいけないんだったぜっ! 『料理』やはっちゃけ、ピンッについては又今度ゆっくり考えようぜ! 注意が先だよ、注意注意!」

『む? 注意か? 何を注意すると言うのだレイブ?』

「ほら、あれだよあれ、ゴブリン、じゃなくてトロルだっけか? 危ない危ない~、ラマスや大事な弟子たちをみすみすトロルにする所だったよ! さてと……」



お読みいただきありがとうございます。
感謝! 感激! 感動! です('v')
まだまだ文章、構成力共に拙い作品ですが、
皆様のご意見、お力をお借りすることでいつか上手に書けるようになりたいと願っています。
これからもよろしくお願い致します。
拙作に目を通して頂き誠にありがとうございました。

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