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【連載小説】堕肉の果て ~令和に奏でる創造の序曲(プレリュード)~

第二部 五章 続メダカの王様
829.弱者達

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 以前の観察で魔神アスタロトが話していた通り、巨大化した爬虫類は恐竜として世界の覇者となり、環境の激変の中、生き残りを掛けて再び海へ、又有る者達は大空へと活路を求めた、水棲すいせい恐竜と翼竜である。

 同様に、捕食者の目を避ける為に、決して生存に適していない場所に暮らす事を選んだ弱者も誕生していた。
 弱者故に強制された栄養の乏しい食事によって、小さく脆弱ぜいじゃく体躯たいくは物陰に潜む為に役立ち、悪環境に住み暮らすことで体温は一定となった。

 寒冷地では全身の体毛を逆立て空気の層を作って体温の維持を図り、繁殖の仕方も変え子供を卵として産み落とすのではなく、体内で養育するようになっていった。
 こうして生き残ろうとした弱者とは哺乳類、我々の先祖の誕生に繋がるのである。

 同様に大空の生き物の中にも弱者が現れていた。
 哺乳類と同様の恒温動物、鳥類である。
 繁殖に卵自体を産み落とすのは変温動物と変わらないが、巣を作り雛が成長するまで養育する種と言う意味では、我々哺乳類と酷似している、彼等もまた弱者なのだ。

 そんな事を判りやすく説明した父ナガチカは言葉を続ける。

「それでね、私自身の持論にも通じる事なんだけどね、進化の分岐が新しい種族、具体的に言うと『恒温こうおん動物』以降の種、哺乳類と鳥類はね、それ以前に分岐した種族に比べて魔獣化や悪魔に昇華するのが困難なんだよね」

「困難? そうなの?」

 ナッキの質問にナガチカは首肯しゅこうして更に説明を続ける。

「ああ、そうなんだよ、魔獣や悪魔になる前にモンスター化してしまうか、しくは石化してしまうか…… もっと言えば両生類は爬虫類よりも、それに魚類は両生類に比べてモンスターになったり石化してしまう確率が極端に低いんだよ…… もっと言えば昆虫や甲殻類はほぼ石化の被害を受けていない様なんだ、どうだい?」

 問い掛けられたドラゴとランプは首肯している。
 その様子を確認したナッキは改めて自分の仲間達を見回して言う。

「確かに僕たち魚も殿様たちカエルにも石化した仲間とかいなかったもんね、今の所、かも知れないけどさ」

 この言葉に首を左右に振ったナガチカの表情は、内容が生物の生き死にに関わるデリケートな物だと言うのに、決して相応ふさわしいとは言い難い、ニヤリとした不謹慎極まりないゆるみをたたえていた。

 マッドサイエンティスト、とまでは言わないが、研究一筋に打ち込んできた学者や求道者が時に陥ってしまう、自分の畑、専門知識に踏み込んだ質問を受けた際に見せる喜悦きえつ、そう言う物だったのだろう。

 嬉々ききとして、では無く、努めて冷静を装いながらナガチカ、私の父親は答える。

「いいえそうではありませんよ、決して運が良いだとか偶然に石化やモンスター化の脅威にさらされていない、そんな不確かな理由で貴方達が救われている訳ではないのです! 貴方達、進化の初期に生まれ出でた『変温動物』は容易に変化しますよね? 温暖な気候で食料が豊富な環境に置かれた時、『巨大化』するじゃないですか? そこが我々『恒温動物』と違う所なんですよぉ!」


お読みいただきありがとうございます。
感謝! 感激! 感動! です('v')
まだまだ文章、構成力共に拙い作品ですが、
皆様のご意見、お力をお借りすることでいつか上手に書けるようになりたいと願っています。
これからもよろしくお願い致します。
拙作に目を通して頂き誠にありがとうございました。

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