【連載小説】堕肉の果て ~令和に奏でる創造の序曲(プレリュード)~
第二部 五章 続メダカの王様
856.七色のオーロラ
大嘘吐き、いいや、仲間、国民を守る、その一念で優れた政治的駆け引きを手にしたナッキは、自信に溢れかえった笑顔を浮かべて言う。
「ねえねえナガチカぁ! 恩知らずの裏切り者の話よりさぁ、今日は君に紹介したくてしょうがない、新しい友達達がいるんだよぉ! 僕の『美しケ池』の新たな国民なんだけどさっ! ねえ、興味無いぃ?」
ド変態は瞳を歪な性癖による濁った光で湛えさせながら答える。
「ほ、ほおぉぅ! 新しい仲間ですってぇ? それは良いですねぇ! 是非ご紹介下さいよぉ♪」
今にも涎を垂らしそうな下卑た笑顔にナッキは答える。
「でしょ? ご紹介するよ! ドラゴが連れて来てくれた新国民! 夜の闇を美しく照らしてくれる舞踊昆虫、ホタルでーす!」
「ちっ、虫かよ」
吐き捨てるようなナガチカの声は決して小さくなかったが、ナッキはその発言を気にするでもなく会話を続ける。
「勿論、ヘロンたちと同様に彼らもミミズは食べないけどね、仲間の魚に好物を持って来てくれる優しい人だって話したら会いたがっちゃってね~」
言っている内に、薄暗くなった周囲の空気に溶け出すように、森の中から仄かな光が明滅しながら現れ、ナガチカの周りを舞い始めたのである。
「ほおぉ、これは……」
繁殖行為の対象外だった事に毒づいたナガチカであったが、自分を囲んだ幻想的な灯が事の外美しかったらしく言葉を失って見つめている。
既に悪魔化されているのだろうホタル達は、通常の昆虫のそれとは違い、様々な色合いに光を変えて、『美しケ池』の上に周囲にとゆったりとした群舞を演じている。
やや高い場所に視線を上げたナガチカは、身を強張らせて動きを止め、暫くそのまま空を見上げていた。
ナッキがつられたかの様にそちらを見ると、ホタル達の群舞の向こう、夜空には金色に輝くデイモスと白金に発光するルナ、二つの月が姿を見せており、ホタル達よりも一層多彩なオーロラが、いつもの夜と同じく色鮮やかに揺らめいていたのである。
何と無く夜空の色彩に目を奪われていたナッキに向けて、ナガチカの真剣な声が聞こえる。
「すみませんナッキ殿…… ミミズのお約束ですが、やはり守れなくなってしまったようです…… 今日を最後に、もうお持ちする事が出来なくなってしまいました、申し訳ありません」
「えっ! そ、それは全然構わないけど急にどうしたの? 一体ぃ? はっ!」
ナッキは出掛かった言葉を飲み込まずに居れなかった。
見つめたナガチカの顔つきがいつになく真剣だったからだけでなく、彼の両目から流れ落ちる涙に気付いたからである。
お読みいただきありがとうございます。
感謝! 感激! 感動! です('v')
まだまだ文章、構成力共に拙い作品ですが、
皆様のご意見、お力をお借りすることでいつか上手に書けるようになりたいと願っています。
これからもよろしくお願い致します。
拙作に目を通して頂き誠にありがとうございました。
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